軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1218話 ガゴチの花嫁❸パフォーマンス

この作戦において、わたしは気が楽だ。

ユオブリアの貴賓として、神聖国の力をも手に入れたとするガゴチの祝いの席にきただけだから。

証拠集めなどもみんなに任せ、わたしは学園での生活を優先させてもらった。

そのとばっちりがキュアに行ったのは申し訳ない限りだ。

「リディア嬢。ガゴチは君に優しいけれど、他国ということは忘れるな。お遣いさま、それからフランツの隣に絶対いろよ?」

わざわざ忠告してきたアダムの顔は真剣だ。

「うん、そうする。けど、アダムが一番無茶じゃない? バチが当たるんじゃ……」

「ただの〝パフォーマンス〟だよ。言葉の使い方合ってる?」

「合ってる」

アダムは本気でやるわけでなく、一種の見せ物なんだから大丈夫だと言っている。

でも平気なのかな? 人族が〝聖霊王〟に扮するなんてことをして……。

ガゴチは明日近隣から貴賓などを招いて、神聖国跡地に相応しい方がお目見えし、ガゴチが、第三大陸がこれからますます発展すると知らしめる式典をする。新将軍の顔見せの意味もある。けど本当のところ、これは撒き餌だ。餌に釣られた、セインを呼び寄せるための。諜報部隊によれば、思惑通り招待していないセインがこちらに向かっているとのこと。

セインは周りの国からそっぽをむかれている。一番の要因は神獣フレデリカさまに天誅を下されたことが大きい。セインの王子が神獣をそのつもりがなくても馬鹿にした。その映像が世界中の教会に流れたし、天誅で教会が壊され、その地下から武器などが多くでてきたことで注目を集めた。

そりゃなんかやる気だったってわかったんだもん、周りがサッと背を向けるのもわかる心理だ。

取り引きなどが減ったことによりますます貧困になっている。

けれどセインってバイタリティーがあるよなー。

王位継承者が並外れていっぱいいることもすごいけど、何よりすごいと思うのは、結局みんな同じ方向を向いているということ。同じ方向ーーユオブリアを潰したいというテーマが同じみたいなんだよね。結託されたら、かなりヤバいと思うんだけど、セインは何故か個々に攻撃してくる。出し抜きたいのかな? 個人止まりの考えだからか、わたしたちは 大事(おおごと) になる前に事をおさめることができた。

綱渡りだったけどね。ドラゴンはさすがにやばかった。とにかく偶然が重なり、こちらに運があったという状況だ。

これだけセインに仕掛けられているし、セインを怪しんでいる。そこは通達しているからセインは焦った。教会地下の武器などは壊れた。今ユオブリアに攻められてきたら、潰れるのは自分たちと負けるのがわかっている。そこでその罪を嫌われ者のガゴチになすりつけようとしている。

セインはガゴチの諜報員たちは獣憑きという情報を手にした。それはドラゴンの卵をとってくるのにちょうどいい能力だと思い込んだ。

第三大陸にとって、昔あった神聖国は未だ強い憧れがあるようだ。

本当は神聖国だった一部が今のガゴチと重なっているだけなのだけど、セインにはそのことも羨ましかったみたい。ガゴチを潰し、ガゴチの地を新セインとし、第三大陸を統一する、そして打倒ユオブリア。それがセインの目指すところらしい。

なんかすっごくおめでたい発想だ。負けることは想定していなくて、押していけると思うものなのかな??

そんな意思が根本にある人たちだ、儀式の最中にセインはガゴチを攻撃してくるだろう。武力ではなく、嘘をつくなと言ってね。

ガゴチはそれを逆手にとって、いちいち証拠を掲げ、セインのしたことを白日の元に晒すつもりらしい。

で、セインもなんでそんなに盛り上がっているかというと、一部で人気の予言の女神、彼女が「女王の涙を持つものが、世界を統一する」そう予言したからだそうだ。それで女王に敏感になっている。

女王とは恐らく神聖国のトップとなる〝女王〟のこと。女王を見極められるのはシュシュ族だけ。そのシュシュ族もワーウィッツの愚かなる策により絶滅していたと言われている。(シュタイン領の北の聖域にいるけどね、狐ちゃんたちが)。

他種族のことなので、わたしは知らん顔してるんだけど。ガゴチに逃げ延びたシュシュ族がいたみたいなんだよね。きっとその逃げ延びた子も女王がもう現れない事を知っているだろうけれど。他の人はそんなことは知らないわけで。

同時にワーウィッツは女王を見分けられるのはシュシュ族と知っている。そして昔セインと組んでいたことがあるから、セインもそれを知っている。

シュシュ族のいるガゴチが女王を見つけたと言えば、ものすごくそれらしく聞こえるというわけだ。

でもさ、みんなすごいな。

パフォーマンスを見せる流れはわかってる。けどさ、アドリブじゃん?

セインがどう動いて何を仕掛けてくるかわからないのに、そこら辺は臨機応変にのスローガンでまかり通る人たちの意味がわからない。わたしはついつい大丈夫なのかなって思っちゃう。わたしが機転を効かせるなんてことは起こらないだろうからいいけどね。貴賓でいいんだもん。ロサと招かれた人を演じていれば。

その後キュアと合流した。磨かれてとっても可愛くなっていた。

女王役だから明日はおめかしするみたいだよ。

わたしの飾りたても頼んでおきましたからと笑顔で言われる。

伯爵令嬢だからそれなりでいいよ。おしゃれは楽しいけど、やっぱり大変だからね。ガインは忙しいらしく(将軍だから仕方ない)、こちらに顔を出せなくてすまない、明日はよろしくとご馳走を手配してくれていた。

夕食の席でニアにガゴチの話を聞いたり、根掘り葉掘り聞かれて課外授業襲撃のことについて話してしまっていた。

お茶の席でブライがアダムの横腹にパンチを入れる。

「痩せたんじゃないか?」

「身が引き締まったんだ」

「心は決まったみたいだな。オーラが澄んでる」

そういったイザークをアダムは少しだけ嫌なものを見る目で見た。

「悩むことぐらいあるさ。けど、そうだな。心は決まった。あとはやるべきことをやるだけだ」

アダムはニコッと笑う。

「……無茶をする気じゃないよな?」

ロサが心配そうに尋ねる。

みんなこの頃のアダムの様子をやっぱりおかしいと思ってたんだ。

「無茶をする気はないよ。決めたことを貫くのに、結果無茶をすることはあるかもしれないけど」

ロサが眉根を寄せる。

「なんだ、心配してるのか?」

「そうだ。あまり心配をかけると嫌がらせをするぞ」

ロサがアダムに嫌がらせ? どんな?

「お兄さまと呼んでやる」

「やめてくれ」

速攻でアダムが返して、本当に嫌そうな顔をしたので、みんなで笑ってしまった。

始まりには終わりがある。楽しい学園生活にも終止符を打つときは来る……。居場所が変われば隣にいる人の顔も変わる。

いつまでも同じではいられない。でもそれを淋しいと思えるぐらいに、わたしたちは素敵な子供時代を過ごしたんだと思う。仲間たちと一緒に。

いろいろ、本当にいろいろあったけどさ。

でもそれも全て含めて、わたしたちは幸せだったんだと思う。

そう身につまされる出来事の始まりは、多分この時からだった。