軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第120話 会えたから

みんなダンジョンに行きたがったが、わたしが病みあがりなので却下された。今日は大人しく過ごそう。それなので、自由時間はお菓子を作ることにした!

まずはルーティーンだ。畑仕事をする。砂糖は根づいたのかな? シャンと立っている。双子が砂糖専用の畑を増やしていた。そこの一角に穂がいくつか揺れている。

畑仕事が終わればお勉強だ。貴族の組織図?と外国語を教わり、そして物語の書き写しだ。文字を揃えてきれいに書いていくための練習。この物語は好きだけれど、何度も読んでいるし書き写すのはつまらない。好きなように書いてもいいかと尋ねたらいいとのことなので、わたしは物語を作ることにした。

わたしともふさまの冒険物語だ。いつの間にか夢中になって書いていると、双子が何をしているんだ?と覗き込んできた。お話を書いているというと、少し読んで自分たちも物語に出せとうるさい。チラ見しているアオも兄さまもなんとなく出演したいみたいなので、みんなを入れることを約束し、書き終わるまで読むのは禁止にした。

お昼ご飯を食べてからも物語を書き進めたが、筆がのらない。

書き終わってないが切り上げて、キッチンにこもる。

わたしは紙で作った四角と三角の型をジャーンと取り出す。

「それはなんでございますか?」

「型だよ。この通りに、クッキー焼くの」

「この通りにクッキーですか?」

ピドリナさんは首をかしげていたけれど、黙ってわたしの補佐をしてくれる。

今日はわたしがメインで作るよ。

前から考えていたんだ。

アオと兄さまと双子の分だから4つだ。あ、見本としてみんなに食べてもらいたいから全部で5つでいいね。

キッチンで寝そべっているもふさまには、生クリームをゲットしたら、ケーキを作ってホールごとあげるつもりだから、今日のはなしねと最初に告げておく。

これが成功したら、領地の子供たちの誕生月を調べてもらわなくちゃ。早急に12月生まれだけ。

型通りにクッキー生地を切り、土台部分になる大きめの楕円と合わせ、オーブンで焼く。

焼いている間にアイシング作りだ。マルサトウをすり鉢で潰してもっと細かくする。粉砂糖みたいに。

卵白に粉砂糖を入れて、伸ばしやすい硬さにしておく。

クッキーが焼けたら冷まして、アイシングでパーツ同士をくっつけて組み立てていく。

「お嬢さま、これは!」

ピドリナさんの目が輝いていく。でき上がったのはクッキーの家だ。

見ているだけでも楽しいよね。そして丸ごと自分のものって特別感があって嬉しいと思うのだ。

生クリームがあれば! アイシングだけじゃなくて、わたしは生クリームでくっつけるのが好きだ。しっとりへにょっとした、クッキー部分と生ではなくなったクリーム部分が、そこはかとなく好き。

クリスマス近くによく作っていたクッキーの家。1日鑑賞してから、バリバリとお家を壊しながらいただくのも楽しい。クッキー生地もおいしいのはわかっているしね。あとはお披露目直前に粉砂糖の雪を降らせよう。

もふさまがクッキーの家から目が離せないでいる。あ、やっぱり、全員分あった方がいいか。もふさま、父さま、母さま、アルノルトさん、ピドリナさん、そしてハウスさんの分6つを追加して焼き上げる。

飾り付けをするとなると時間がかかるけれど、家を組み立てて粉砂糖を振るぐらいならそう手間でもない。作る量が多いと、パーツがくっつくのを待つ間に次の作業にとりかかれて、時間を無駄にしないですむ。不器用なわたしがやるからやはりどこか不格好だが、5つ作ったあとだけに格段に手早くなり、出来栄えも少しだけよくなっていた。

夕飯の準備をするのに邪魔かと思って、収納ポケットにしまえばいいと思い出し、状態をキープできるんだったっけと、慌てて粉砂糖の雪を降らせて完成させポケットに収納した。

夕飯の後のお茶の時にお披露目予定だ。

眠くなったのでもふさまとお昼寝をして、起きてから本を読む。

兄さまたちが庭でアオと遊んでいるのが窓から見えた。寒いのに。

本は歴史を教えてもらった時に使っていた教本だ。

ロサは歴史を見れば、どうして光の使い手を王家が欲しがるのかわかるといったけれど、そんな記述はどこにもない。

文字通りではないということか。それを理解しろなんて5歳児に求めないでほしい。

王家にスポットをあて、読み流していくが、魔の属性のことだって触れてないし、なんもわからんがな。

聖女さまが現れるのは何かがあった時。

それ以外に法則性があるようには見えない。

ただ普通第一子が王位を継承するのが順当と思えるのに、明らかに第二王子以降の子が王位を継承することが多かった。第一王子が王様になるのは稀だ。そして現陛下はその稀な第一王子だったみたい。というより、先代の王様のお子様は陛下しかいなかったようだ。

夕ご飯に呼ばれて、席につく。アオはロビ兄とアラ兄の間に席を作ってもらっている。もふさまと同じで、テーブルより少し低くしたところを足置き場にしている。

今日は身体に優しいお料理だった。わたしがまだ本調子ではないので、配慮してくれたんだろう。デンとしたお肉がなかったことに落胆した様子だった双子たちも、お鍋いっぱいの卵カニ雑炊を一口食べた途端、復活だ。茹でてポン酢で和えた温野菜もいただきなさいと注意されても雑炊のかっこみが止まらない。

噛みごたえがないので、もふさまにはどうかなと思ったんだけど。お椀舐めてる、大丈夫みたいだ。あっという間におかわりだ。

「お嬢さまは?」

わたしが首を横に振ると、母さまが特別だとリンゴンのコンポートを出してくれた。わーい。体調が悪いときって、他は本来のおいしさを感じられないんだけど、甘いものだけは〝おいしい〟ってわかる。だから甘いものは嬉しい。でも、なんでなんだろう?

お茶の時間になった。わたしはひとつ収納ポケットから出して、アオの前に置いた。

「はい。アオの誕生日、わからないから。〝会えた〟祝して、みんな、今日まとめてね」

アオのクッキーの家に視線集中。

「何これ、いいな。いいなーーーーー」

ロビ兄にもクッキーの家を。

「これ、おれの?」

わたしは頷く。

「はい、アラ兄」

アラ兄も自分のお家に目が釘付けだ。

「はい、兄さまの」

「午後にこれを作っていたの?」

兄さまに頷く。

「いつも、ありがと。会えてよかった、感謝気持ち」

もふさまにも家を。

『我にはケーキとやらではなかったのか?』

「それも作るよ」

そして、父さまに、母さまに、アルノルトさんに、ピドリナさんにも渡した。みんなの顔がほころぶ。ハウスさんには渡し済みだ。食べられないだろうけど、鑑賞もできるからか、思ったよりもずっと喜んでくれた。

「2日後までに、食べ切って。わたし、一日鑑賞して、次の日から食べてた」

こうやってと言って、自分のお菓子の家の煙突をバリっと剥がす。

「食べる人?」

ロビ兄が手をあげたので口に入れてあげる。

「甘いのがついてる? 少しヘニョってしてる。これも砂糖?」

「オレも食べたい」

自分の家を壊すか悩んでいるアラ兄の口にクッキーを入れてあげる。

それからアオにも兄さまにも、もふさまにも。

父さまたちにも割ったのを渡した。

「クッキーだけでもおいしいですが、この甘い部分がまたクセになる」

「これは、嬉しいな。大人でも嬉しい」

父さまがそう言ってくれた。

「父さま、領地の子、12月生まれ、調べられる?」

父さまにどうしてかと尋ねられる。

わたし、父さまと母さまの子に生まれてよかった。父さま、母さま、兄さま、アラ兄、ロビ兄、もふさまに会えてよかった。みんなが存在してくれたことに本当に感謝する。だから生まれた日をお祝いしたかった。

でもこの世界では、曜日は大切みたいだけど、誕生日は重要視されていない。双子や兄さまは出生にいろいろあり誕生日を聞くのは憚られた。重要ではないから知らないかもしれないしね。だから聞けなかったのだ。

アオと会えて嬉しかった。もちろん、ハウスさんや他の今まで出会えた人たちとも。その人たちが 存在(あ) ってくれた、生まれた日を感謝して贈り物をしたかった。アオの誕生日もわからないけれど、出会えた記念にちょうどいいと思った。

出会えたのは、君が生まれていてくれたから。君が 存在(あ) ってくれたから。

その出会いに感謝を込めて。

領地の子たちにも 存在(あ) ってくれてありがとうを込めて、誕生日月に渡したいんだというと、父さまは調べると約束してくれた。そして、今後1月生まれも2月生まれも、毎月24日の休息日に誕生したことを祝いたいんだと続けると、請け負ってくれた。

わたしは誕生日会をしたいし、して欲しかった。だから誕生日を浸透させたいという思惑もあるのだけれど。

父さまがゆっくりとわたしを抱きしめる。

「このクッキーの家も、領地の子たちのことも、ありがとう。そして何より、リディーが生まれてきてくれてありがとう。私たちの元にやってきてくれて、ありがとう」

わたしは満足した。これできっと、来年の誕生日は祝ってもらえるはずだ。わたしはギュッと父さまに抱きついた。