軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1198話 ベクリーヌ滞在⑭手立て

調印式はまいてまいて終えたようだ。

ほら帰れ、やれ帰れの勢い。

ここまで知っちゃって、帰れるかって。

ところが、アダムはわたしには帰れという。

向こうの目的のひとつはわたしだからと。

それは正論なんだけど、わたしもここは瘴気があるから嫌なんだけど。

でも、余計に引けないじゃない?

「わたしにドラゴンを止める手立てがあると言ったら?」

「ホルクか?」

アダムに言われてわたしは首を横に振る。

「フランツがいないな。フランツに何を頼んだ?」

すぐに気づかれてしまった。

「ドラゴンに与えられたのは赤き石。これは瘴木から取れたものだって」

そこまで言えば、アダムは気づく。

「火は火で消すってことか」

腕を組み考えている。勝算があるか検討しているんだろう。

「どういうことだ?」

陛下がアダムに尋ねる。

「ドラゴンを止められるかもしれません。

ただ、カザエルだかバッカスだかとは戦うことになるでしょう」

「バッカス?」

王とアカさんが不審の顔。

「彼女、シュタイン嬢に執着しているのはバッカスのやつらなんですよ。

捕らえたバッカスは何も白状しませんでしたが、仲間とカザエル語で会話したことがあって、バッカスにはカザエル民が混じっていることがわかっています。

その者たちは、肌の色がわたしたちと同じでしたけれど」

うーーん、ごちゃ混ぜになってる感じがするね。

わたしがバッカスを気にするのは「瘴気」を使われたことがあるから。

そしてカザエルだと繋がらなかったけど、グレナンと派生が同じなら、いや、元々カザエルがあり、第一大陸にきて、グレナン、出て行った人たちがカザエルとなり、グレナンは虐殺にあいベクリーヌとなったことがわかり。カザエルも瘴気の扱いに長けているのではと推察できる。

バッカスが烏合の衆なら、カザエルの瘴気に長けているバッカスにわたしはより気をつける必要がある。知りたいのはそこだけ。

バッカスはバッカスの花の刺青を体のどこかにしている。

アダムは言葉巧みに、いつの間にか、ベクリーヌの戦力はどれくらいなのかを聞き出している。

簡単な地図を書いてもらって、戦いの場とするところを決めている。

この城に人を集め転移をしているから、ここは守らなくてはならない場所だ。せめて完了するまでは。

カードさんは見届け人になると、調印の証を議会の人に持たせて帰した。

戦える人は武器を持ち、アカさんに言われた「なんとかの陣」をするように動いている。

「リディア嬢、本当に帰る気ない?」

「うん。わたしも見届けたい。だって他でもないわたしの名前があがってるんだもん」

「相手の戦力がわからないから、カバーできないかもしれない。お遣いさまのそばを離れるなよ?」

「ドラゴンを連れてくるなら油断しているだろうし、数は多くないと見込んでいる、違う?」

わたしの発言に王とアカさんも少し驚いている。

「城の料理に赤き石を混ぜろって言ってたということ、神殿に石を横流ししていたってことはあいつらも噛んでいたっぽいことから小規模な気はするけれど、確証はない」

アダムは慎重派だもんね。

「少量の赤い石で満足していたみたいだから、使い手も少ないって気がする」

「だからって油断しないように」

「もちろん」

そう言ってから、こそっとアダムに耳打ちする。なくても倒せそうだったら、詠唱の底上げなどはしないように。

ドラゴン相手なら総力戦でもやばいと思うけど、ドラゴンを乗っ取ることができれば「待機」させておく。バッカスがそこまでの人数でなかったら、なんとかできるような。それだったらこちらが強くなったのをここで見せるのはよろしくない気がしてる。出し惜しみしてる場合じゃなかったらやるけどさ。

バッカスはどんなふうに情報が回るかわからないから。

バッカスになるべく情報を渡したくない。

「貴公らは対人戦の経験がおありか?」

「戦争の経験はありません」

「だとしたら、やはり帰ってくれ。恵まれない大陸では戦いといったら殺し合いだ。息の根を止めて、その上にのしあがる。そうやって奪うものだ」

淡々と言っているけど、深い言葉なのはわかっている。

こっちはやめてくれればいいと思っているけど、あちらは奪う気でくる。

息の根を止めるまで終わらない人たちなのだ。

そういう戦いは、きっとショックを受けるだろう。そういくら殺されないためでも人を殺めてしまったら、心に傷をおう。言葉では知っているけど、それがどんなことか想像していることは上辺だけのことだろう。立ち直れなくなることがこれから待ち受けているのかもしれない。

でも、だけど。だからって逃げたくない。

『リディア、何かが近づいている』

「アダム、何かが近づいてるって」

「? 見張りからの報告はないが?」

渡り廊下に出てみれば、空に茶色の点が。

だんだん大きくなり、ド、ドラゴンだ!

ものすごい速さで、大きくなりというか近づいてきてる。

もふさまが大きくなった。

「ここじゃ標的だ。走りましょう」

アダムが言って、王さまと装備をつけたお城の騎士たちも走り出す。

アカさんが深々と腕を胸の前まで上げ手をくみ、頭を下げている。

「ご武運を」

もふさまに乗せてもらって、場所を移した。

なんだろう、ここは?

街の跡地って感じ。

土で作った素朴な家々。それぞれの場所が決まっているのか、みんなの姿が見えなくなった。どこかに隠れているのだろう。

わたしと陛下とアダムも、家の軒下に入った。

第四大陸の砂漠の家々みたい。ドアや窓がそのままぽかんと口を開けているタイプだ。

「陛下」

アダムが呼びかける。

近づいて耳打ちする。

陛下の目が見開かれる。

「な、何を!?」

「お覚悟を」

え、どうしたの? 何を言ったの?

ドラゴンが降り立った。風で飛ばされそうになったのを、もふさまが上から押さえてくれた。赤ちゃんたちはすっ飛ばされて焦ったけれど、風が止むとみんな一目散にわたしめがけて飛んできた。無事ではあるみたい。髪の中に潜り込んでくる。

そういえば兄さまたち、無事に魔石をゲットしたとしてお城に帰っちゃわない?

最終兵器がないと!?

口にするとアダムがなんでもないようにいう。

「ひとりじゃないんだ。リディア嬢の気配を探れないわけがない」

あ、そっか。もふもふ軍団が一緒だもん、わたしの魔力やもふさまの魔力を辿ってきっと来てくれるだろう。

ぐあぁああああああああああああああああ

首を振り咆哮を上げるドラゴン。

鑑定。

土竜。気性が荒い。ヤクトのいう通りに体が動くので不機嫌

土竜といえば、他ドラゴンたちと敵対してたドラゴンだよね?