軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1193話 ベクリーヌ滞在⑨神託

カードさん、ノエル、それからこの国の神殿を取り締まるために派遣されてきた神官は神官長さまだった。わたしたちは黙礼する。ルシオもすべて報告済みなのか、会釈のみ。

神官長さまは王への謁見を果たす。

この大陸のこの国に、神殿が脅し見返りをもらっていたと聞いたことを話し、罪状を全て調べてから謝罪したいと述べた。

王もそれを許した。

そして、神殿に行くことになった。

レオやベアから特別な連絡はなかったから、逃げるとかそういうことはしていないはずだ。

瘴気避けのポンチョも着て、今度はわたしも一緒に行くことにした。

みんなも、知らないところで何かあるより、一緒にいる方がいいと思ったんだろう。反対されなかった。

神殿は一般的な街の教会より多少立派な造り。

誰でも訪れていい聖堂へと入っていく。見習いを含め11人の神官がいると聞いたけれど、中にいた神官はひとり。それも神官服もあつらえてないところから、見習いだと思う。

王にたいしても、ちょこんと頭を下げるだけ。

嘘ぉ。どういう教育しているの?

神の前では平等説を実践?

「神殿長を呼べ」

これが普通の対応なのか、王は驚くことも罰することもなくそう告げると、見習いはめんどくさそうにうなずいて、奥のドアに入っていった。

神官長とルシオがわなわなしてる。普通の神官の考えとここは異なっているみたいだね。

少しすると、神官服を着た人たちがゾロゾロとドアから出てきた。

先頭は中年男性で、大変ふくよか。

「王自らご足労とは」とニヤニヤしている。

上の者が王に対してそんな態度だから、下の見習いも王に対して敬意を払わなくなる!

神殿が一番偉いと思っていそうだ。

彼らと一緒にもふもふ軍団が帰ってきた。住居の奥に人がいっぱいいると耳もとで教えてくれてから、素早くもふさまのリュックに飛び込む。

「さて、何用でいらしたか? 我らも暇なわけではないのでね」

ルシオから黒いものが流れ出ている気がする。

「神の子、ホークとラビをお呼びください」

ルシオがそう言うと、一瞬この神殿の長だというでっぷりした人は動作が止まる。

今まで第一大陸において、必要以上にふくよかな方はお見かけしたことはない。けれどこの神官たち、衣が立派な人ほど体が肥えている。わかりやすく偉い順に私服を肥やしていそうだ。

ホークとラビとは捕らえた人たち。わたしが鑑定をし、神官の力でそれを確めたところ間違いはなかった。

「それが今朝から姿が見えないのです。どこに行ったのかと探しておりました。二人のことを何かご存知で?」

うわー、しらばっくれた。ふてぶてしい。

「実は我が客人のところに賊が入りこんでね。調べてみると……」

「あの者たちは!」

「実はあの者たちがドラゴンを欲していたようなのです!」

「それで盗みに入ったのかと!」

こちらは賊に入られたとしか言ってないのに、勢い込んで話を作っている。

それも王の言葉を遮ってだよ。

ベクリーヌ人ではないとしても、この国に神殿を構えているのだから、礼は尽くすべきだ。

アダムはすらっとぼけた。

「おかしいですね。彼らは……」

「独断です! 我らの関知しないこと。あやつらが勝手に攫いに行ったのです」

おお、息巻いている。

「変ですね。彼らは……」

本当のところ彼らは眠らせたままなので、何も話は聞いてないんだけど、アダムはさも聞いたふうに反論しようとする。すると、言葉を被せて話させないようにしてくる。

「言い逃れしようとしてるんでしょう。彼らの言葉は信じないでください」

「……彼らの狙いはドラゴンではなかったようですが」

ようやく目を合わせる神官たち。

でっぷりした長だろう人が、咳払いをした。

「リディア・シュタイン、神の言葉を告げてやる」

いきなり、何?

「お前に授けた力、民のために使え。我の声は今後この神官に伝える。神官を神だと思って仕えるように」

は? ……バカなの? 神がピンポイントの神託下すか。

え、そう言われて、わたしが仕えると思っているの? 頭おかしいの?

これはどこまで茶番に付き合わないといけないの?

腹が立ってきた。

「どなたが、神託を受け取れるんですの?」

わたしは貴族モードで尋ねてみた。

でっぷりした人が、自分だと言った。

「どちらの神さまの神託、ですの?」

「何を言っておる?」

「ですから、命運を司るオルポリデ神さまですか? 遊戯神レクションさま? それとも生命の維持を司るウケモミチ神さま? ソピアー神さまですか?

コミュニティーさま? ディフュージョンさま? クリエートさま? ソクラさま?

エアさま? ポジッティブさま? クロノ神? ターンさま? ボーンラドアさま?」

私はステータスボードで見た、祝福をしてくれた神さまたちの名を連ねる。

なぜか神官長やルシオからも視線がきていた。

「なっ。そんなのは決まっておる。創造神さまのお言葉だ」

「神が下界とかかわってはいけないと創造神さまが下されたことをご存知ないのですか? 仮にも神殿の長でありながら?」

「うっ、うるさい! 神殿のことを何も知らん者が、知ったようなことを言うではない!」

「ではお呼びしましょうか? 神獣さまを。神獣さまにお尋ねして差し上げましょうか、あなたの言うことが本当かどうかを? 神に仕える神獣さまの前で嘘があった場合どうなるかご存知ですよね?」

呼ばないけどね。

はったりにははったりで返してやる。

でも本気にしてそうな神官長さま、目を輝かせているではないか。

いや、呼びませんよ。こんな私的なことでお呼びしませんから。

でっぷり神官はフルフル震えて顔を赤くしている。

わたしは神獣さま、聖獣さまの加護があることになってる。

嘘だとは思わないだろう。はったりというのは条件の整った舞台の上に立ち、本当にやるかもって思わせるようにこうやってかますもんなんだよ。

「ベクトリーヌ神殿の神の子、第三の位フェスティラ」

神官長がでっぷり長に呼びかける。

え? この人、第三の位なの? 第三の位ってことはルシオと同じだ。

ってことはルシオも神殿の長になれるってこと?

「誰だ、お前は?」

「ユオブリア支部の神官長ランスが伝える。この時を持って、ベクトリーヌの神殿は閉鎖する。また神官は全員司祭さまから裁きを受けることとなる。すべての聞き取りは私がする。質問はあるか?」

「ドラゴンや令嬢を攫おうとしたのはふたりのやったこと。我らは与り知らぬ」

「そうだ! あいつらが何を言ったか知らないが、全部でたらめだ!」

「それなら、下のものの統制も取れてないところで、一階級降格です」

うぐっと神官たちは言葉に詰まった。

「それからあなたたちにお尋ねすることは、そのことだけではありません。この第一大陸において何をしてきたか、洗いざらい吐いてもらいますよ」

「な、なにをいう! 神官長がここに来るなど連絡はなかった! 偽物だ!」

「往生際が悪い。騎士の皆さま、お手を煩わせて申し訳ありませんが、全員捕えてください」

冷静に神官長が言った途端、長は身を翻し、他のものも逃げようとした。それを一緒に来てくれた世界議会の騎士さんたちが追いかける。

なんだかすっちゃかめっちゃかになった。