軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1184話 神学③底上げ効果

「最後の方、なんか様子がおかしく見えたけど、大丈夫?」

「あ、ああ。えっとね。光が舞ってたでしょ?」

ルシオはうなずく。

「わたしには光っている小人が踊っているのが見えたよ」

「小人が?」

わたしはうなずく。

「水の精霊ちゃんに顔立ちが似てたから、光の精霊じゃないかな?」

「え?」

ルシオの歩みが止まる。

「それって、あれは光の精霊が舞っていたってこと?」

ルシオの口を塞ぐ。

声がおっきい。

「もふさまも見えたよね?」

『ドラゴンたちも見えていたようだな』

わたしはルシオの方へ顔を向ける。

ドラゴンちゃんたちは、呼ばれたと思ったのか、わたしの髪を引っ張る。

何気に痛いからね。君たち、手加減しているのは知ってるけど、それでも力強くなってきてるからね。

言いたいけど、可愛い顔して、無垢な瞳で見られると何も言えなくなっちゃうんだけど。

「もふさまもドラゴンちゃんたちも見えてたみたい」

「僕は水の精霊は見えたのに、光の精霊はどうして見えなかったんだろう?」

うーん、どうしてだろう?

あ、発現はしてないから?って思ったけど、水の精霊ちゃんはシャボンの玉の中にいるような状態で見えていた。

みんなにも光の精霊は見えてなかったみたいだから、みんなとわたしの違い……水と地の精霊の祝福を受けた、だから見えるのかもしれない。

「リディア嬢、これはすごい発見かもしれないよ」

え?

「今まで神力を強くするためって言われていたけど、僕は疑問に思ってたんだ」

ルシオは神属性のスキルを持っていた。不本意ながらスキルの中で一番得意に使うことができた。なぜ不本意かというと。

彼は神を敬っている。神を信じてもいる。けれど神の力は大きすぎるのか〝破壊〟するのに適している。ルシオはその破壊活動が好きにはなれなかった。

逆に不得意なのが聖力。聖水を作るのが一番骨が折れたという。

ええっ? ルシオはあんなに何度もわたしに聖なる力をかけてくれたりしてたのに、あれで苦手なの? どういうこと?

その能力の高さ、ちょっとムッとくるんだけど。

ルシオはそんなわたしの不満に気づくこともなく続ける。

「何が言いたいかっていうと、神力の波動っていうか感じはわかっていると思うんだ。だけど、あの神力をあげる修行をすると何かは感じるけど、神力ではないんじゃないかって思ってたんだ」

ルシオって真面目だよな。

「今までも精霊が来ていたかもしれないんだね」

「でも今日たまたまかもしれないし、神官長さまにいうぐらいにしておいた方がいいんじゃない?」

イザークが心配してたからさ。ルシオは悪目立ちして、神官の中で浮いているって。それに悪意ある噂も聞いたことがあるとかで。

みんなは神力を鍛えるってずっと思ってきた。それに異論を唱える。いつか異論の方が正しいと証明されたとしても、最初に言った人にあたりがキツくなるものだ。

「そっか、そうだね」

ルシオはうなずく。

「第一大陸は僕が行くって聞いた?」

「アダムから聞いた」

「第一大陸は無駄足になるかもね」

「え?」

「君の真の目的は瘴気を撒けるようにするためだよね?」

「うん、その通りだけど、無駄足??」

「僕はわからないんだけど、あそこに行くと胸が悪くなる人がいて聖水を口にすると和らぐんだ。もしかして瘴気が濃いんじゃないかと思えて」

ルシオはチラッとわたしをみる。

「僕じゃ瘴気はわからないからな……瘴気が多いと、リディア嬢は辛いんだよね?」

「……うん」

第一大陸は瘴気の使い手であるグレナンの故郷でもある。

ということはその聖水で治って胸が悪くなるものの正体って瘴気って可能性が高いな。トルマリンさんたちに作ってもらったポンチョはあるけど、他大陸より瘴気が濃い状態のように漂っているなら、覚悟しないとヤバそうだな。

瘴気による攻撃ならポンチョで対策済みだけど……。

「ルシオ、神力を高める修行で使うのはいつもあの経本なの? 祝詞もあれ?」

「あ、いや。本式はもっと長いのだよ。今日は学生にだし、授業の時間も短いから、短いものを選んだんだ」

「その本式の方を教えてもらうことってできる?」

「どうして?」

「魔法を使うとき、色の入った文章を作って詠唱したら、底上げされたの覚えてる?」

「ああ、アダムがフランツの屋敷めちゃくちゃにしたやつだね?」

わたしはうなずく。

「今回は精霊が現れた。それが今回たまたまなのか、神か何かが具現するのかはわからないけど、あの祝詞や経本は〝歌〟を底上げするんじゃないかと思えるの」

「歌を底上げ?」

「もしかしたら魔法を使うときも有効かも。有効であっても、魔法使う前にあれは長いじゃない? でももし歌だったら? 魔力が枯れたとき歌で何かを底上げできたら?」

「……その考えは面白いね。リディア嬢は攻撃以外の魔法を使うとき、詠唱を試してみたことある?」

「実はない。色々忙しくて忘れてた。授業で歌って何かを高めるってのを実践した時に、思い出したの、実は」

「僕もだ。なんやかんやでいろいろ起こっているから」

「イザークあたりは一通り試しているかもね。あ、でも破格な破壊になっちゃうと困るから止めているかな?」

「どうかはわからないけど、結果報告は聞いてないな」

「そうだね」

「もしエリア展開だっけ? 広範囲で光魔法底上げを祝詞でできて、さらに詠唱で高められたら、すごい効果がありそう」

「瘴気をどうにかするのに活用できないかと思ってさ」

「ああ、なるほどね……お遣いさま、近くに人はいませんか?」

もふさまは顔をあげて鼻を動かす。

『大丈夫だ』

伝えるとルシオは結界石を出した。

え? 何か大事なこと?

「祝詞や経本で精霊を呼び出せた。それは今日あった事実だ。

瘴気は精霊が転じた姿。だとしたら色の詠唱より、そちらの方が効くかもしれないよ。僕、長い祝詞と教本を持ってくる」

ルシオのその言葉に胸がドクンとする。

そ、そうだ。瘴気は十三番目の精霊「悠」が転じた姿。

祝詞や経本は精霊を呼び出すことができるかもしれないもの。

瘴気だって呼び出せるものなのかもしれない……。