軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1171話 ミネルバ滞在④神隠し

いきなりの思いもよらなかった質問。すぐに反応したのはダニエルだ。

「代表者がけっこう年配だった」

ちゃんと小声。わたしたちだけの時はユオブリア語で話しているのに、だ。

でも確かにそう。ローブの人以外は60代以上、一般的におじいさんと称していい年代に見えた。

「わたしは女性や子供がいないのが気になった。わたしたちが通った時に家の中に居ただけかもしれないけど」

人じたい少ないのだとは思うけど。

一瞬、静かになる。赤ちゃんたちも、もふもふ軍団もわたしたちをマントの中から見あげている。なんでそんなことを言い出したのか、アダムの言葉を待つ。

「あのポーズ、食事の時のものではないよな?」

そうアダムに言われて頭が働き出す。

そう、前に食事のポーズかなってアダムがやって見せたこともあったけど、あれは決死の覚悟のポーズなのだと教えてもらった。

あの時は驚いたし、わたしたちがカザエルのその仕草を知っていることを知られない方がいいのだろうと推測してシーっの合図に従ったけど。

正真正銘食事の前だったのに、どうして彼らは食前の祈りに合わせて決死の覚悟を決めたのだろう?

「リディー、彼らを鑑定した?」

後ろから兄さまの声。

「うーうん、だってあの部屋、魔を封じる仕掛けがあったもの」

アダム、ダニエル、兄さまの動きがピタッと止まる。

今まで訪れた大陸のお城でもそういう部屋はあった。魔法で何かされたらたまらないってところもあるだろうし。でも友好を示すなら魔を封じる部屋へ入るべきではない?とか迷うことだろうと思う。だから大したことじゃないと思っていたんだけど、みんなわかってなかった? あ、そっか。今まではイザークが一緒だったから、彼は……みんなに言ってたかも。

「もしかしたら、非常事態かもしれないな」

アダムがボソッと言った。

「どういうこと?」

「彼らは王族ではなく、本当に現在の代表者なのかもしれない」

え?

「そういえば、他国のことはよく知らないと言っておきながらアネリストの情報はあったね」

「ああ、挨拶に来たって言ってたけど……彼の国を悪く言ってた」

「そういえばそこは不自然だったね。なぜだかアネリストを悪く印象付けていた気がする」

それってどういうこと?

わたしは抱っこしているもふさまに尋ねた。

「もふさま、ローブの人を気にしてたよね?」

『あいつだけ悪意があったからな』

「悪意?」

「お遣いさまはなんだって?」

「あいつだけ悪意があったって」

「みんなは何か感じた?」

それぞれのマントの合間から顔をだすもふもふ軍団にも尋ねた。

『人の気配が少ないですね。……建物に対してです』

ベアが教えてくれる。

『ローブのやつはちょっと臭いかも』

なんですって!?

わたしはベアとクイから聞いたことをみんなに話した。

「キナくさいな」

アダムが一人ごちる。

「それが……彼らのできる最善のことだった?」

ダニエルが呟く。

え? それがってどれが? なにが最善のこと?

「決死の覚悟のサイン。私たちが知っているとは思わなかっただろうけど。

それならなおさら、それは自分たちで覚悟を決めたということ」

なんの覚悟? どうして今?

今? 今ということをよく考えてみる。

今とは、わたしたち使節団がこの国に来た。

それが普段との違い。

魔法を規制された部屋。年配の方しかいない街。嫌な予感がする。

わたしは外聞を捨て最強ガウンを着込んだ。

うわーこれでも寒い。冷気カットのマントをその上から被り少しはマシになる。

みんなローブの上にさらにマントを着込んだまま移動する。

アダムが止まって腕を出した。わたしたちは止まって、気持ち壁に寄り添う。

先ほどの歓迎会をしてくれた 室(へや) 。中に人がいたことに気づく。声が聞こえる。

「睡眠薬を入れなかったのか? 本を見てるじゃないか! 全然眠らないぞ?」

ローブの人が憤ってる。

「人質より、恵まれたユオブリアの子供を優先するのか?」

「あれはまだ子供だ!」

年配の人が言い返した。

人質? 人質って言った。

わたしたちは顔を合わせる。

ダニエルとアダムが目を合わせている。

あ。

年配の人たち手に何か持ってる。ローブの人に何かしようとしている。

軽く頷きあったと思ったら、兄さまが出た。

ローブの人の後ろに回ったと思ったら、その人はくたっとなった。

き、気絶させただけだよね?

アダムは音も立てずに部屋の中に入り、声を出さないようにと中の人にしーっと人差し指を口の前に立てる。わたしはダニエルに引っ張られて部屋の中に入った。

ダニエルは自分のいうことをミネルバ語で伝えてと言った。共用語、ではなく。

「敵はどれだけいますか?」

わたしはダニエルの言葉をミネルバ語で繰り返す。

おじいさんたちは、わたしがミネルバ語を話したことに驚いている。でも、すぐに反応する。

「私らと違う肌の色の者は全員アネリストのやつ。老人以外は人質だと連れて行かれた。ドラゴン、そしてお嬢ちゃんと引き換えに返すと言われた」

「奴らは睡眠薬を盛り、その間にお嬢ちゃんとドラゴンを他の使節団から引き離し、神隠しにあったとするよう言った」

わたしはミネルバ語をユオブリア語に変換する。

「なぜ言われた通りにしなかったんです?」

ダニエルが尋ねると彼らは目を伏せる。

「いいや、睡眠薬を食事に入れなかっただけだ」

と辛そうに吐露した。