軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1146話 オーランド滞在③歓迎

返答にちょっと困る。

「大丈夫とはどういう意味ですか?」

「え? 言葉通りです。ドラゴンといつも一緒のあなたを受け入れられるのかということです」

? 受け入れるとか、受け入れないとか、ええ? 懐かれちゃったらそれはそれで仕方なくない? ドラゴンに懐かれた人は受け入れられないって反応があるってこと?

「……それはもちろん、丸ごと」

殿下はちょっと納得いかない顔。

殿下たちはわたしたちをお城の上に連れて行った。屋上というか、見張り台でもあるところだ。

街全体、いいやもっと遠くまで見渡すことができた。

といっても街の外はほぼ雪の積もった氷の世界だけど。

でも街の中はいろんな形と色の屋根があって、ちっちゃな人々が動いている。

「ここで、確かめるんです。私たちが守るべきものを」

そう言って夕焼けに染まった街を見下ろす。

その横顔はなかなかかっこいいけど。

「すみませんが、婚約者がおりますので」

大きく兄さまが声を張り上げてる。

「わ、私はオーランドの王女でしてよ?」

「申し訳ございませんが」

兄さまは丁寧に礼を尽くし断っている。

王女は完全にヘソを曲げた顔。

「私はあなたに決めましたの! お相手には諦めていただきますわ」

アダムが暴走している王女殿下に声をかけようとすると、イザークについていた王太子さまが動いた。

王女殿下の口を後ろから塞ぐ。

「セイラ、黙りなさい。申し訳ないねー、末のをどうしても甘やかしてしまって」

王太子は兄さまにきちんと謝る。

「でも、どうだい? セイラはなかなか可愛いし、身分も高いよ。政治的に決まったことで、君がセイラを望むのなら、お相手をどうにかすることもできるけど……」

「リディー」

兄さまに呼ばれて、わたしが駆け寄ると、兄さまはわたしの手を取った。

「彼女、リディア・シュタインがわたしの婚約者です」

みんながえっという顔をする。

「ええとリディア・シュタイン嬢の婚約者は、バイエルン侯爵ではなかったかな?」

25歳だったかな、王太子殿下はわたしと兄さまを交互に見ている。

「ああ、はい。私がバイエルン侯爵改め、フランツ・シュタイン・ラインディラカです」

みんな目が点になる。

まぁ、あんまり聞かないよね。身分の下がる改名は。

「こ、こちらの令嬢が、ドラゴンの令嬢が婚約者ですの!?」

ドラゴンの令嬢って……略しすぎでは? なんか目を釣り上げているんですけど。

兄さまはそんな様子を構わず、手に取ったわたしの手の先にチュッと口を寄せた。

わたし、絶対顔赤くなってる。王族の前、そしてみんな注目されている中、兄さまやりすぎよ。

「これはセイラが目に入る隙はなさそうだ。

……そろそろ宴に出る用意をした方が良さそうだね」

頬を膨らませた王女殿下を、王太子殿下が肩を押さえ込んで促す。

みんな言葉を濁しながらも、準備をと促した。

民族衣装を贈るので、ぜひ宴で着て欲しいと言われる。

わたしたちは一度部屋に戻った。

みんなすでに疲れていた。

ソファーに座り、お茶をいただく。

「リディー、第五王子には気をつけるんだよ」

兄さまから言われる。

「え? 何かあった?」

アダム、イザーク、兄さまからジロジロ見られる。

「リディーのそういうところが好きだよ」

ええ?

ドアがノックされ、シモーネが顔を覗かせる。

使用人さんたちが民族衣装を持ってきてくれたみたいだ。

わたしには着替えを手伝ってくれる侍女までついていた。

隣の続き部屋で着替えることになる。

少しだけなぜか不安だったので、もふさまに付き合ってもらう。

着替えを手伝ってくれたのは、首輪をつけた褐色の肌の少女たちだ。一番小さい子がこの侍女たちの頭であるみたい。

少し辿々しいけれど、共用語で話をしながら着替えを手伝ってくれた。

オーランドの正装、民族衣装は女性は胸の下できゅっと締め、そこから広がるタイプのワンピースで、裾の幾何学模様みたいな刺繍が特徴だ。

ゲッ。このレートというワンピース、丈の短いものと長いものがある。長いものでもすねの真ん中あたりまでと足を見せる仕様なんだけど。これ膝上の短いやつだ。

郷に入っては郷に従え、わたしはそう思うタイプだけど……。

ユオブリアの女性は足を出さないのが主流。短いものしかないならわかるけど、もう少し長いものもあるのに、こちらを選んだのがちょっと引っかかる。

「スカートの丈の長いものはありませんか?」

と尋ねると、ひたすら身を低くして謝る。

謝ってほしいわけじゃない。でも「ない」ということなのか持ってこようとする気配はない。

「それなら、パーニエを貸していただけますか?」

そう告げれば、ひとりの侍女がうなずいて部屋を出ていった。

パーニエとは薄い生地でできた大判のストールのようなもので、レートだけで寒い時に活用する補助的なもの。

こんな短いの履いたの知ったら、母さまなんか卒倒しそう。

用意されたのは真紅のレート。お子さま体型で、地味なわたしには似合わない色合いだ。裾には黒糸と白糸、それから青糸で模様が刺繍されている。

ああ、全体的に服が大きくて、首周りも大きく開いてしまう。

これじゃあだらしなく&いかがわしく見える。

上からパーニエを着込むようにして、開いたところを見せないようにしないとだ。

侍女が戻ってきてパーニエを渡してくれた。原色の黄色だ。真っ黄色だ。

赤いワンピに黄色のパーニエ。服だけ悪目立ちしそう。

肩からパーニエをかけるようにして、隣の部屋に戻った。

侍女たちは頭を下げ、急いで出ていく。

「リディー……」

兄さまが目を丸くしている。

っていうか、わたしもきっと目を丸くしている。民族衣装を着た3人がとてもかっこよかったから。

みんなはサーアと呼ばれる男性用の衣装。片方の肩を通したすとんとしたワンピースみたいなもので、その布の刺繍で目を楽しませる。アダムは地の色が朱色で、兄さまが金色、イザークは藍色だ。3人とも金の足輪をつけている。

アダムは少し考えてから、録画のブローチを持ってるかと聞いてきた。

持ってるというと、それを貸してと言われた。

パーニエを天女の羽衣のようにふわりとかけて、レートの空いた胸元を締めて、パーニエを交差させるようにしてブローチで止めた。

おおう、おしゃれな感じで胸元問題も、パーニエは膝下まで長さがあるので、足もあまり晒さなくて済む。

わたしがお礼を言うと、なぜか兄さまがアダムの手を取ってお礼を言った。

「リディア嬢、我らは手放しに歓迎されていないようだ。言質を取られないよう、話す時は気をつけてね」

さらっとアダムに言われる。

どうやら歓迎されてないのは《《わたし》》だけみたいね。

みんなはとても合っているものを用意されているもの。