軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1119話 逆の定義①モンティス公

アダムは陛下やロサに報告するために秘密基地から出て行った。

兄さまは各方面への連絡。

父さまにはフォンを使うことにした。

父さまはわたしが無事なのことはわかっていたけれど、心配していたようだ。

声が聞けて安堵したと言われ、胸がしめつけられる。

赤ちゃんドラゴンたちの親の心情に感化されたからかもしれない。

「父さま、騒がしいようですが、何かあったのですか?」

兄さまが尋ねた。

わたしも気になっていた。言葉としては聞こえないけど、なんだかざわついている。フォンでも聞こえるとは、本当はかなり騒がしいんじゃないかな?

一拍の間をおいて、父さまが答える。

「まーこれは、なんだ……断っているんだが、リディーへの側室祝いがひっきりなしに届いてな……」

父さまの疲れた声。

兄さまが重たいため息をついた。

「全くもって失礼な話ですね」

その通り! わたしは婚約しているのに! 婚約したまま、側室になるわけないし、どちらの相手にもものすごく失礼なこと。それを祝うってことは、どちらの顔も潰していることに気づいているのかね、その人たちは!

「昨日、お客さんが来て、それで噂が加速したようだ」

お客が来て加速?

「どなたがいらしたの?」

「……ん。モンティス公だ」

モンティス公って……、廃妃のお父上。

「モンティス公がシュタイン家に?」

兄さまの声も鋭くなる。

「モンティス公は事業の引き継ぎが終わったら、傍系に爵位を譲るそうだ」

王妃を輩出したことで勢いがつき栄華を極めたけれど、結果として廃妃になり、名も地まで落ちた。けれどその家門から発展したことは現在いろいろな立場で主要な軸となっていて、全てを引き上げることはできなくなっている。

商売ひとつをとっても、いくつもの商会がモンティスからの派生であり、それら全てがなくなれば、国が揺らぐことになりかねない。

だから爵位の返上はできないとは耳にしたけど、傍系に譲るとはまたすごい判断だ。

モンティス公はその引き継ぎのために各地を周っている最中で寄ったという。

わたしたちは父さまの次の言葉を待った。

「謝りにこられたんだ」

謝りに……。

「謝って済むことでないのはわかっているが、意識のない娘に代わってと頭を下げた」

父さまの声が感情を押し殺すために震えている。

わたしは兄さまに手を掴まれて、固く拳を握っていたことを知った。手のひらに食い込んだ爪の跡が痛い。

「父さまはどうしたんですか?」

兄さまの声も怒りで震えている。

悪いのはモンティス公ではない。意識なくずっと眠り続けている廃妃がしたこと。

「元王妃さまのしたことを許すことはできないけれど、モンティス公の謝罪の言葉だけは受け取ったよ」

「モンティス公は、廃妃が母さまに何をしたかご存知だったんですね?」

兄さまが確かめた。

「少し前に知ったそうだ」

「少し前に?」

「メイダー伯夫妻が移動中、谷底に馬車が転落して亡くなったそうだ」

メイダー伯は元モロール領主。領主の侍女頭が母さまに呪いをかけた実行犯だった。

「メイダー伯夫妻はモンティス公爵さまからの呼び出しを受け、王都に向かっている途中で事故に遭った。行き先はモンティス公爵家だったから、モンティスさまのところにも連絡が入った。けれど、モンティスさまはメイダー伯を呼び出したりしていなかった」

「ということは、何者かがモンティス公の名前を使ってメイダー伯夫妻を呼び出し、馬車ごと転落させたということですか?」

転落は事故じゃないってこと?

「モンティス公はそう思われたようだ。それで調べて、9年前娘がメイダー伯夫妻に頼み事をしたことを知った。モンティス公のところには、毎日のように刺客が現れるそうだよ。一族を繁栄させるために悪どいことをしてきた、その因果応報だと思っていたけれど、王妃時代に娘がしてきたこと、その報復も含まれているのかもしれないと今更ながら気づいたそうだ。

メイダー伯のことで、報復しようとしたのはウチと思ったようだが、調べたところどちらかというとうちも被害者だと思ったそうだ。それで、誰がどんな目的かはわからないけれど、9年前のあの呪いの件で誰かが動いている。メイダー伯夫妻は亡くなったと、そのことを伝えに来られたんだ」

モンティス公は誰だかはつかめなかったが、その時の呪術師が怪しいと思っている口ぶりだったそうだ。

あの時の呪術師はトルマリンさんだ。彼は確かにあの呪術を引き受けたせいで、それから呪術ができなくなっていたけれど、わたしと再会し、折り合いはついている。

とすると、メイダー伯夫妻を殺害したのは誰?

「どう話が屈折して、誰を恨んでいるかわからないから、気をつけてというためにな」

そうだったのか。

「父さまは今どこにいるの?」

「町の家だ」

「母さまは町はずれの家だよね?」

「ああ、ハウスさんに特に気をつけてもらっているから、あちらは大丈夫だ。父さまは町の家にいるが、父さまの強さは知っているだろう?」

「……うん」

父さまはわたしがもふさま、兄さまと一緒だし、秘密基地にいて良かったと思っているようだ。きな臭い話が出ているからお互いに気をつけようと話を結んだ。

フォンを切ってから、ドラゴンのことを話そうと思っていたのに、衝撃的な話をきいて飛んでしまった。話すの忘れた!と思ったけど、掛け直すものなんなので、また明日にでも話そうと思った。

「メイダー伯夫妻とモンティス公を恨むのは、誰だろうね?」

「普通に考えるとウチだよね」

そう返すと、兄さまは真面目な顔になった。

「9年前のことが今になってなぜ……」

顔をしかめている。

「マハリス邸のもそうだよね? なんで〝今〟なんだろう?」

「待ってリディー」

「え?」

「そうだ、定義が逆だったのかもしれない」

定義が逆?

兄さまは報告したいことがあると、みんなを招集した。