軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1115話 Mother⑮クリスタル

『赤子がこんなに元気に……』

感極まったようなクリスタルドラゴンの呟き。

もう我慢できないと言わんばかりに、隣のブラック、グロウィングもわたしにひっついている赤ちゃんに顔を寄せる。

わたしなんてひと口で食べられてしまう大きさなので、ちょっとだけ怖い。

ブラックの赤ちゃんは一番度胸がある。同じように真っ黒のドラゴンに何かを感じたのか、自分の翼で飛び立ち、ブラックドラゴンの鼻の上に乗った。そしてミャアミャアお話してる。

グロウィングの赤ちゃんは動じない。鼻でおっきなドラゴンにつんつんされても、他の子みたいに逃げようとしたりせず、わたしの髪の毛をはみはみしたままだ。

クリスタルドラゴンはクリュクリュ言いながら、わたしの髪下に隠れてしまった。銀龍の赤ちゃんはわたしの首筋にブローチのようにひっついて固まり、ピカピカ機嫌よくおしゃべりしてる稲妻の赤ちゃんは、揺れるわたしの頭の上でバランスを取っている。もう体幹を鍛えているの?

『娘に問おう。本当に赤子たちは地龍から預かったのではないのか?』

涙ぐんだクリスタルドラゴンが声を絞りだす。

『地龍とは会ったことがないと思います。船荷に卵がありました。木箱に収められていたので、それは人族のしたことだと思います』

それぞれのドラゴンの巣のある場所の問題から卵を攫ってくるのは人族では難しいのでは?と思いもしたけれど、セローリア家の船荷に紛れ込ませる、木箱に入れるなどは絶対に人がしたことだ。

『地龍と先ほども言っておったな、まだ仲が悪いのか?』

フレデリカさまが尋ねる。

そういえば銀龍のガルゴも、稲妻ドラゴンは地龍と仲が悪いって言ってなかったっけ? クリスタルドラゴンはため息をついてから何か話出そうとした。

わたしはその前に手をあげ、発言の許しをもらう。

会話、置いてけぼりになる兄さまとアダムに通訳をしていいかと確認をとる。

するとフレデリカさまが、もふさまを振り返った。

『聖なる大地を守護する者よ。他種族の言葉を繋げるマドウグというものを持っておるだろう、出してやれ』

もふさまも盛大にため息をついた。

『リディア、この魔石に魔力をこめられるか?』

わたしはもふさまに近づき、アクアマリン色の大きな魔石に魔力を込めた。

『それが他種族の言葉を繋げるマドウグなのか?』

ガルゴが目を輝かせている。っていうか、ドラゴンたちは目がキラキラ。新しい物好きというか、興味があるようだ。レオがホルクに講釈をしている。

もふさまが、これに触れれば、人族に伝わる言葉となると魔石を差し出すと、みんながちょんちょん触り、兄さまとアダムに話しかけた。二人がそれに応えると、本当に通じたと感動している。なんだか可愛らしい様子だ。

わたしは今までの流れを兄さまとアダムに伝える。ふたりはうなずきながらも一瞬変な顔をした。わたしと同じことを考えたに違いない。

しっかりと下準備をしたところで、クリスタルドラゴンの話を聞いた。

✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎クリスタルドラゴンの話✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

ドラゴンは飛空が得意だけれど、地中に住むことが多いという。クリスタルドラゴン、グロウィングドラゴン、地龍、黄龍、稲妻ドラゴンなんかは元々地中に住んでいた。それが地龍が勢力を広げ、他のドラゴンたちは地中から追いやられた。それははるか昔のこと。先祖から言い伝えられていることもあり、多くのドラゴンは地龍を嫌っている。

それにここ500年ぐらいで、とうとう地龍の出生率も下がってきて、それをなぜだか他のドラゴンたちの仕業と思っているところがあり、運悪く出くわすと、お前たちのせいで子供が産まれなくなったと言いがかりをつけられ、争いになることもしばしば。

地中を追われたドラゴンたちは、それぞれの性質に特化した住処を見繕った。

稲妻ドラゴンは空へ。黄龍は岩山へ。グロウィングは木の上に。クリスタルは水晶の洞窟に。ちなみにブラックドラゴンはマグマの中に巣を作っているというから、かなり意味がわからない。

クリスタルドラゴン一族の住む水晶の洞窟は魔山の山頂から入れないらしく、魔の森の中にあることからも、人族が入るのは難しいところだそうだ。

ところで、クリスタルドラゴンは一族が同じ洞窟には住んでいるけれど、お互い血の繋がりみたいのを気にするような、繊細な種族ではないらしい。どっちかというと、使命により繋がりを得るというか、目的によりその時絆を深めるというか。

子供が産まれにくいのも種族の繁栄を願えば問題ではあるけれど、産まれないものは仕方ないといったドライな考えの方が多いそうだ。

ただ、それが奪われたり、何かの思惑により生きられなかったというのなら話が違ってくる。そういう時は一族が一丸となり仇をうつような面も持つ。

ある夫婦から卵が生まれたが、その夫婦は仲のよくない夫婦だった。

ある日卵がなくなった。お互いが〝卵を割ったか何かして、なくなったことにしたんだろう?〟と罵り合っていた。それで、周りもそうなのだろうと思っていた。

だが故意に卵に何かする夫婦たちとは思えなかったので、どちらかの不注意で卵がそんなことになり、咄嗟になくなったことにしてしまったのだろうと、激しく泣きながら罵り合う夫婦を哀れに思っていたそうだ。

クリスタルドラゴンの長はたった今、空の守護者、神獣であるフレデリカさまにより呼び出しを受ける。そこで見たのは、人族にくっついている種族の赤子。

その時、脳裏に浮かんだ。あの夫婦に言ったことは本当で、どちらでもない第三の者に卵を攫われたのではないかと。そしてその第三の者とは、言いがかりをつけてくる地龍ではないかと。

赤子がひっついていたのは人族であったけれど、自分たちの住んでいるところは人族が入り込めるようなところではないので、地龍が人族に渡したのではないかとそういう思考になったようだ。