軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1083話 駒にされた子供たち①将来

ドラゴンの幼体と卵は抑えたとして、あとは銀龍。

席につき、もふさまを膝の上に。

教室は適度にざわついている。

小さな声でもふさまに話しかけた。

「もふさまはどのドラゴンとも話せる?」

『いや、あちらに話そうという意思がなければ無理だ。そういう本能だけに生きる奴もいるからな』

「その本能って?」

「強さの証明、生き抜くこと。殺戮と呼んでもいいかもな」

意思の疎通が無理なドラゴンには気持ちは届かないってことね。

「リーディア♪」

歌でも歌うようにリーを長く伸ばし、わたしを呼ぶクラリベル。いいことでもあったのかな。浮かれてる。

わたしの机に指先を置いて座り込み、その指の上に顎を置いた。

「おはよう、クラリベル」

「おはよう!」

「ご機嫌ね?」

「うん、そうなの。私、甘かったわ」

え? 言葉と表情があっていないような。

「……嬉しそうね?」

「え、そう? あのね、私ナメていたみたい」

「ナメてた?」

「私の芝居がお粗末であることは知ってるわ。でもそれは練習していつか上手くなるものだと思っていたの。

でもそうじゃなかった。観客は見てるのよ」

「見てる?」

クラリベルは声を潜めた。

「元貴族令嬢、そして今は平民を演じた私たちの手を見て、平民の手と貴族の手だと言い当てた! 観客はそういうところまで見てるのよ!」

ああ、バンプーさまの推理だね。わたしも目ざといと思った。

驚きというより、クラリベルはそれが嬉しくて仕方ないみたいだ。

「嬉しいのね?」

自分で気づいてなかったようで、わたしの言ったことに驚いたみたい。けれど、自分の気持ちを見つめ直して気づいた。

「そうね、私嬉しかったんだわ。そんな細かいところまで見てくれている人がいることに! そしてお芝居ってそういうところからお芝居なのね。私、覚悟が足りてなかったのね。演技って演技だけを指すんじゃなかったのよ」

ニッコニコだ。

「私の手は家仕事をしてきた手よ。それはどうにもならない。だけど、貴族のふりをするときは少なくても手袋をしなくちゃいけなかったんだわ。演技が上手くなるのも難しいけど、他にもまだ私にできることがあるんだわ!」

クラリベルの目が生き生きと輝いている。

「……クラリベルは本当にお芝居が好きなのね」

そんな様子を見ているだけで、こっちが幸せになれる。

「え? うん、そうだね。私、自分で思ってたよりもっと演じることが好きみたい」

「わたしはクラリベルを応援する!」

「え?」

「諦めない方法はきっとある。クラリベル今すっごく楽しそうだった」

クラリベルはわたしの言いたかったことに気づいたみたいだった。

ハッとして、少し考え込む。

「リディアが言うなら、きっとそうね。諦めないでいられる方法はきっとある。うん、私楽しかったんだ。うん、私探してみる」

クラリベルは頬を赤らめたままスカートを翻す。

素敵な笑顔。それを偶然見た男子が顔を赤くした。

休息日。王都の家からお城へ。リノさまとお茶の約束をした。

昨日の夕方、第四夫人からお手紙をもらった。わたしとリノさまの対立を心配して相談に乗るというもの。

ガラットーニくんは第四夫人と繋がっていたようだ。

わたしはリノさまと話す前に第四夫人とお茶することに賛同をもらっている。

そうして今、フードを被った怪しげな人たちに追いかけられている。

王都内でカーチェイスならぬ馬チェイスやるなんて馬鹿なんじゃないの?

もっと人通りのない郊外ならともかく、こんな人目もあるところで堂々と狙ってくるなんて誰が思う?

「も、もふさま」

『口を閉じていろ』

わたしは馬車の中で少し大きくなったもふさまに抱きついている。

うちの護衛は優秀。念のため御者をアルノルトにお願いし、ガーシたちは少し離れて馬で護衛をしてくれていた。

とんでもないスピードで走っていた馬車がスピードを緩め、やがて止まる。

ドアを開けてくれたのはアルノルト。

「お嬢さま、狼藉者たちは捕まえました」

「ありがとう。わたしはお城で約束があるから、彼らのこと、お願いできるかしら?」

「承知いたしました」

「街中で派手に立ち回ってくれたんだもの、相応のおもてなしをしてさしあげて」

アルノルトはいい笑顔で任されてくれた。

誰が残り、どう分担するかはわからないけど、お城への邪魔者も排除。

これはスタンガンくん経由かな?

多分今までわたしに直接手を出してこなかったのは、噂が十分に広がっていなかったのと、ドラゴンでユオブリアを半壊しようと思っていたからではないかな? 聖獣や神獣の加護もちであるわたしの力かどう及ぶかそれを見るためであるかもしれない。

どう受け取ったかはわからないけど、ドラゴン計画は頓挫した。

焦るのはわかる。駒にした子供の言葉を与えられるがままに信じるぐらいには。

わたしは決して子供のすることを軽んじているわけではないけれど、でもね、大人が子供を利用するというのはとても嫌なことだと思っているの。子供が大人を利用するのは特に感情は動かないけどね。やるじゃんって思うぐらい。でも逆はないわ。それはいけないこと。

それも騙してなんて。……そこは子供たちに詳しく聞いてからじゃないとわからないけど。わかってないから裁きはしない。様子を見るだけだ、今日は。

早めに出ていたので、約束の時間には間に合った。

「来たか。入りなさい」

もふさまの同行はご理解いただいている。

夫人の前まで行ってカーテシー。

「ユオブリアの陽に照らされし月の君にご挨拶申しあげます」

「礼儀作法も完璧ね、賢いけれどでしゃばらずに控え目。14歳にして淑女ね」

「恐れ入ります」

第四夫人はお茶を勧めてくれた。

このタイミング絶対にガラットーニくんから聞いたことだとは思うけど、何事も決めつけてはいけない。それにいつどこでエリンの話に飛び火するかわからない。表情は崩さず、夫人に目を戻した。