軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1073話 真っ直ぐな子供たち④小さい利点

迷っている時間はない。

もふさまに大きくなって運んでもらうことは、いろいろバレるから不可。

だったらわたしが小さくなるしかない。

「服は海に捨てて」

そうお願いして、心の中で乞い願う。

変化! トカゲの姿に!

わたしはトカゲ、わたしはトカゲ、わたしはトカゲ、わたしはトカゲ、わたしはトカゲ、わたしはトカゲ……

ヤバっ。漏れてくる光が増えてる。側面の出入り口が開く!

いや、集中しろ!

トカゲ、トカゲ、トカゲ、トカゲ、トカゲ、トカゲ……

きつく目を瞑ったのに目の前が赤く染まる。

体の節々がギシギシして痛いけど、心のどこかでほっとする。

目を瞑っているから何も見えてないのに、ぐるぐると目が回っているのがわかる。魔力がごっそり抜けた。気持ち悪くなり、息がしづらくなって。体がびくんと痙攣し、やがて治ったと思ったら、わたしは布の中にいた。

ゴソゴソと服の中から脱出。

「もふさま!」

名を呼んだけど、自分の耳にもひ弱なぴーという鳴き声に聞こえ、これが地味に堪える。もふさまはわたしを咥えて自分の背中に乗せた。

『リディア、外に出るぞ』

そう言って、わたしの服の上で高速に足を動かし、小さく寄せてまとめて咥える。

もふさまは木箱の影に隠れるようにして、船員さんから見えないよう動く。

階段の下までたどり着き、途切れるのを待った。

今だ!

降りて来る人たちがひと段落したところでもふさまは軽快に駆け上がった。

「あれ、今なんか階段を?」

「ネズミでもいたか?」

「それよりもっと大きかったような……」

「お前ら、いらんこと言うなよ。倉庫の大掃除になるぞ?」

外だ! 日の光。

もふさまは手すりにとんとジャンプしてあがり、咥えていた服を落とした。

そして華麗にジャンプ。桟橋に見事着地。そして鼻をひくっとさせてからまた走り出した。

ヤバイ、眠くなってきた。

掴んでいるもふさまの毛を引っ張る。

だめ、眠い……。

次に目を開けた時、目の前にエリンの顔があった。

「姉さま、起きたのね!」

わたしの頭にちゅっちゅっと口を寄せる。

それより寒い。

わたしはエリンの袖口に入れないかと頭をもたげた。

「まぁ、姉さまどうしたの?」

お腹を掴まれて持ち上げられたと思ったら、袖口が見えたのでそこにおさまる。

ああ、安心する!

「ちょっと、何するのよ、ノエル」

「起きるまでエリンが抱えていたんだからいいじゃないか。次は僕の番だ」

なぁに、わたしを取り合っていたの? トカゲの姿なのに。

エリンもノエルも、トカゲの時でさえわたしと慕ってくれて、なんて可愛い子たちなのっ。

って和んでいる場合じゃなかった。どうなったの?

「ねぇ、みんなは? 子供たちや魔物はどうなったの?」

わたしの耳にもぴーぴーとしか聞こえないから、エリンとノエルにはわからないだろう。

「きっとどうなっているのかを聞いたのよね?」

エリンがそう言ったので、わたしは勢いよく頷く。

って、袖の中だからあんまり見えないだろうけど。

「大丈夫、助けてくれた人がいて、うまくいってる」

助けてくれた人?

「ロビン兄さまを知ってて。4番のところにあった船がその人の知り合いのだとかで匿ってもらって。それでアダム兄さまがいいこと思いついて、今それをやりに行ってる。あたしとノエルは姉さまの護衛」

と思っているうちに、扉が開いてみんなが戻ってきた。

「おかえり!」

嬉しくなって声をかけると、みんなの視線がさまよう。

ノエルが少しだけ袖口を高くして、みんなに見せるようにした。

「あー、リディア嬢、起きたんだね、よかった。君の運動能力をなめていたよ、ホントごめん。でも、切り抜けてくれてありがとう」

なんか「をい」と言いたくなるけど、言葉の壁が高いのでカット。

『リディア、大丈夫か?』

アダムの肩にぬいぐるみバージョンの小さいもふさま。

翻訳機使ってる。

「また眠るかもしれないけど、平気。うまくいったのよね?」

もふさまがわたしの言葉を訳してくれた。

「子供たちや魔物を抱えて船からでたところで、誰にあったと思う? リーも知ってるやつだよ」

ロビ兄が得意そうに言った。

わたしの知ってる人? 船着場で?

「思いつかない」

ぴーというわたしの言葉に被せるように、もふさまが訳してくれる。

「コビー・マグノリアだ」

コビー・マグノリア? 誰?

「ウィットニー嬢の兄だよ」

ウィットニー嬢、聞いたことあるような。

「リーの寮の部屋に録画の魔具をつけて退園になった……」

思い出した!

はいはい、いたね。1年生の時、恐らくメロディー嬢の差し金で巻き込まれた、実行犯の子。そのお兄さんも学園生で「妹は馬鹿だから、そんなことをする頭も財力もなかったと。何かに巻き込まれたと思え、きっとそれだけではすまない。その裏にいる人を引っ張り出すのに協力するから、助けてくれないか」とヘルプを出してきた人。華やかな遊び人ふうに見えたけど、意外に実直だった。

「あの人が、船着場にいたの?」

もふさまの通訳にロビ兄が頷く。

「4番にも船が止まっていただろ?」

魔具や魔法、それから船の操縦の技術が上がったことにより、港がコンパクト化してきてる。前はひとつの桟橋にひとつの船しか考えられなかったみたいだけど(時間をずらして船は一艘)技術の向上により、桟橋の両側に船がいるということもできるようになってきたんだって。ってウッドのおじいさまから聞いた気がする。

3番の左側ばかり見ていたけど、右側にも船はいた気がする。

「コビーと共同で事業をやっている人との船らしい。子供や魔物を抱えていたらいくらなんでも目立つからどうしようと思っていたら、目があったコビーがとりあえず中にって船に迎えてくれたんだ」

コビー氏はもふさままで中に入れてから、側面の荷の出入り口を閉めた。

彼の船はこれから旅立つ船で荷を運び入れているところだった。その木箱の影に身を寄せていたのがみんなで、彼は驚いたけれどロビ兄を見て、みつかりたくないのなら、中へどうぞと言ってくれたそうだ。

もふさままで入ると、荷口を閉めた。

そしてロビ兄に挨拶。「あの時は妹共々ご迷惑をおかけしました。できることがありましたらなんでもします」と言ってくれたそうだ。