軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1052話 放課後の影絵⑩エルター

「それで、僕らに協力して欲しいこととは?」

ズバリきた。

お見通し感が凄いな。

ちょっと恥ずかしいので、気分を変えるために手をポンと合わせてお祈りをするように組んでみたけれど、お願いしたいことは何もお礼を返せることもなくただのおねだりになるし、もしバレたら今のとこそれを罰する法案はないはずだけど、悪いことに引き摺り込むことなわけだから、手がクネクネしてしまう。

「ほら、みんなのお家はお金持ちだよね?」

ウチと違って、3代以上続く上級貴族。爵位も上。

「資金に困っているの?」

ルシオが驚いたように声をあげる。

「いえ、資金は大丈夫なんだけど。

ユオブリア以外に土地持ってるよね? その別荘にわたしを招待してほしくて。ちょっとその空間にミラー部屋を作らせて欲しいんだけど」

ピタッとみんな動かなくなる。

「あ、もちろん、ミラー部屋は瘴気を排出し終えたら消滅するように仮想補佐に頼むから、心配しないで」

ウチというかウッド商会が各地に支部を持っているので、そこにてミラーハウスを作り瘴気部屋を作らせてもらうつもりだ。だけど、できるだけいろんなところに、数多くあるといい。瘴気排出が偏らないように。っていうか、瘴気が多いところができたら嫌だからね。

「……それ、さっきは流して聞いたんだけど、ミラー部屋って行き来ができるって言ったよね?」

イザークに確かめられる。

「うん、そう。最初はその場所にわたしが行かないとなんだけど。ミラーでルームを……わかりやすく言うと複製して、仮想補佐をつければそのルーム間で行き来ができるようになる」

「ひょっとして、自分の家にもある?」

今度はアダムに聞かれる。

「うん」

「それって、もしかして転移みたいに、たとえばここからシュタイン領の家に行けちゃうってこと?」

「ここはルームがないから行けない。王都の家とシュタイン領町の家、シュタイン領外れの家の行き来はできる」

「あと、オレたちの別荘にもルームはあるから、そこにも行くことができます」

アラ兄がつけ加えた。

なんか、みんな頬が上気してる。

「リディア嬢、この秘密基地にルームを作ることはできる?」

アダムの目がキラキラしてる。

「……お城はさすがにまずいでしょ」

ロンゴに疑われたこともあるし。あの時罪を着せられなかったのは、お城に無断で入ることができない前提だからだ。

「ってことは、できるはできるってこと?」

ロサまで前のめり。

「お城の中は魔力感知が凄そうだし」

『リディアは城の結界を作ったものたちより上級ゆえ、感知されないようにすることも可能だろう』

え、マジ?

わたし、お城の結界やらの魔法システム構築した人たちよりレベル上ってこと?

「どうした?」

「ううん、なんでもない」

コホンと咳払い。

いやいやいや、お城に簡単に忍び込める道筋作っちゃまずいでしょ。

犯罪者一直線コースな気がするよ。

『まぁ、ここは特別な結界がはられているが』

あ、そっか。ここはアダムの許すものしか入れない特別な結界の中だものね。

「もふさまが、ここは特別な結界がはられているからって」

みんなの表情が曇る。

『ゆえに、そいつの許可があればミラーできるだろう』

ま、そうだよね。

「だからアダムの許可があればミラーできるだろうって。え?」

「許可する! ミラー部屋作ってよ。王都の家で何かあったとしても、ここにも逃げ込める場所ができるってことだろ?」

「いやいや、そんな簡単にお城に忍び込めちゃまずいでしょ」

「僕が許した人しか元々入れないし。終焉案件が終わったら、ここも壊すから一時的なものだ。心配することはないよ」

「相当魔力を使うんじゃないか?」

イザークが心配そうな声をあげる。

「そんなこともないけど」

「それなら!」

「リディア嬢、頼むよ!」

「俺も見たい」

「……ロサ」

「何があるかわからない。ここはアダムの許した人しか入れないところ。ここがひとつの隠れ家となるなら、それはとてもいいことなんじゃないかな?」

青少年の好奇心なめてた。

いつも大人顔負けの発言と行動力の彼らが、こんなにミラーに興味を持つとは。

お城でそんなことして本当に平気かしらと思ったけど、兄さまも、アラ兄もロビ兄も仕方ないかと言う顔だ。

見てもらうっていうか体験してもらうのが一番早いから、やってみることにした。

ここ、特別な空間なのに本当にできるのかな?

ま、できないなら弾かれるだけか。

よし。

「元祖秘密基地をミラー!」

わたしは壁に向かって片手を出す。

ここではそうした方が定義しやすい気がしたからだ。

この地下には、何度もこさせてもらったからか、目を瞑ってもどの部屋も思い出せる。

あ、一部屋でよかったのに。と思った時は、いつもより魔力を取られていたけれど、できたのがわかった。

秘密基地そのままミラーで作ってしまった。

「終わり?」

何も変わったところはないからだろう、不思議そうなブライ。

「じゃあ、みんなで移動するよ。ルーム」

軽く目を瞑ってまた開ければ、同じ部屋に佇んでいた。

「え? ここ、違うの? 何も変わってないと思うけど」

「玄関を出るとわかると思うよ」

そう言うとみんな走り出した。

え。どんだけ興味があるの?

秘密基地を思い描いただけだから、玄関を出ると靄っているだけ。

「リディー、魔力は?」

「まだ十分あるよ。仮想補佐を作っちゃうね。あ、名前どうしようか?」

「名前?」

みんな不思議そうにしている。

「仮想補佐の名前。ウチはハウスさん、アオ、ドロシー、フリンキー、ショウちゃん」

「アダムのだから、アダムが決めるのがいいんじゃないか?」

ダニエルが言った。

「あ、いずれ撤去するから思い入れのない名前にした方がいいよ」

わたしはアドバイス。

「エルターで」

第一王子の名前だ。

「いいの?」

一応、確認。

「ああ。期間限定だとしても君を守ってくれそうだから」

なんか胸がギュッと締めつけられる。

なんでもない会話に感傷的になりすぎだ。

わたしは目をつむる。

「仮想補佐、あなたはエルター。元祖秘密基地に入れる者はここをみんな使える。

ハウスさん、聞こえる?」

少しだけ間があったけど、声が聞こえる。

『イエス、マスター』

「新しいルームよ。管理者はエルター。わたしたちをメインルームに」

『イエス、マスター』

領地の外れの家、メインハウスのルームにいた。

みんなキョロキョロしている。