軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1010話 木漏れ日の間で見た夢

朝が来た。

カーテンの隙間から光が溢れている。

眠い。結局眠れたのが明け方になってからだった。

チンタラやってるつもりはなかったけれど、教室に入ったのも予鈴ギリギリになる。

「眠れなかったの?」

開口一番アダムに言われる。

「だから悩んでも無駄って」

「いや、別便」

短く遮る。

「別便?」

アダムが眉根を寄せた。そして腕を組む。

とにかくまず眠ったほうがいいと言われ、1限はそりの合わない〝環境学〟だし、ちょうどいいから保健室で眠れと言われる。

君が起きてスッキリした頭になったら、その〝別便〟を聞くからと保健室に追い立てられそうになり、わたしは慌てた。

クラリベルは風邪で休むことになっている。わたしが同じ日に体調が悪かったら、どこかで繋がりを持ってると思われるかも?

アダムはなんとなく察したのか、目を閉じた。

あ、と思うと木漏れ日の空間。

「聖樹さま、ご機嫌よう。朝からすみません。リディア嬢が参っているようなので、これだと話になりません。ここで睡眠を取らせてまともになった彼女と話したいのですが、よろしいですか?」

アダム、聖樹さまとコンタクトもとってる。わたしだけじゃなかったか、ちょっとジェラシー。

『かなり便宜を図ることになるのー』

「彼女の魔力玉2つでいかがでしょう」

『2つか』

勝手に!と思ったけど、便宜を図ってもらってるのはわたしだ。

「私のスパークがお気に召せば、私からも贈ることができるのですが」

『おお、あれか! 知人に見せてやりたい。スパーク玉で手を打とう』

え? 聖樹さま、スパークを知ってるの??

「ありがとうございます。では彼女が起きたら、私たちみんなを呼んでください、お願いします」

とアダムが消えた。

あれ、でも精神体が睡眠を貪っても、体に戻ったら変わらないんじゃ? あーなんか考えがまとまらない。

『リディア、眠ってしまえ』

言われて制服にシワがよったことも無視し、もふさまに抱きついて目をつむる。もふもふだ。気持ちいい。

『末のが変だわ。苦しんでる!』

『黒い何かを吐き出しているぞ』

『……世界から拒絶されてる』

『なんでこんなことに……』

筆でめちゃくちゃに塗りつぶそうとしているような黒い気の線。それが地を覆っている。

『姉上、悠の周りにあるのを水で流して!』

ピンポン玉の中にいる精霊の容姿のようなものがいくつも飛んでいた。表情がせっぱつまっている。服はみんな個性豊かで違っていたけれど、顔立ちは整っているからかどこか似通って見えた……。

あ、ここは。

目を擦る。

『リディア、目覚めたか』

「おはよう、もふさま。えっと、なんだっけ?」

『なんだっけとはご挨拶だのー。ゆっくり休ませてやったのに』

「あ、聖樹さま、ご機嫌よう。ありがとうございます。

〝なんだっけ〟は違うんです。……夢を見て」

『夢?』

「昨日レオたちから聞いたからか……あれ、なんだっけ?」

何か夢を見たのに、記憶が逃げていく。

「だめだ、もう思い出せない」

ふぅと息をつく。

「聖樹さま、今のわたしって精神体なんですよね?」

『……なぜそんなことを尋ねる?』

「精神体ならここで眠っても、寝不足の器に入ることになるのかなと思って」

心配事を話すと聖樹さまは豪快に笑う。

『その点でいうのなら器ごと来ているのと同じだな。ここで腹を満たせば腹は満ちたままだろうし、怪我もここで治せば器も治る。ここで魔力の暴走がおさまれば戻ったときも暴走しなかっただろう?』

あ、そうだった。

時が止まった時点に戻れる。もし精神だけが出てきている状態なら、つまり器的には時間が経過していないはずだから、その間に体験しちゃうことはどうなっちゃうのって思ったんだよね。記憶みたいの精神上のことは覚えていられるのはわかるとして。でもそういえば魔力を暴走させそうになっていたのをここで安定させて戻ったこともあったっけ。

ここでのことは器も精神も刻まれるってことね。

それなら睡眠もしっかりだ。

けど、リノさまの器は顔色が悪かったのに、ここに来たらそうでもなく見えたんだよな。だから精神体だからかと思ったんだけど……。

でも、とりあえず。

「聖樹さま、頭スッキリしました! 休ませてくださってありがとうございます」

改めて聖樹さまにお礼を言う。

聖樹さまは皆を呼んでくれると言って、瞬きをすると、もうみんながいた。

みんなあたりを一瞬見回して理解している。

聖樹さまに挨拶をした。そしてわたしに向き合う。

「なんかあったって? 寮に帰ってからだろう?」

「それまではアダムといて、なんでもなかったみたいだもんな」

ロサとブライに言われてわたしは頷く。

「寮の子と何かあったのか?」

ロビ兄が心配そうだ。

「友達が報告に来てくれたの」

わたしは消灯を過ぎてノックがあったところから、順を追ってクラリベルの話をした。

「ってことは、今日台本を返す日だな」

ダニエルが腕を組んだ。

「今日クラリベル、風邪ということで寮で休んでもらっているの」

「それはリディア嬢が?」

ロサに確かめられて頷く。

「そう。授業を休ませちゃったけど、どうしたらいいか決めないうちにクラリベルと連絡が取れなくなったり、グレーン酒を飲まされてぽやーんとしちゃったらまずいと思って」

「いい判断だ」

ロサに褒められた。

「そのグレーン酒、調べる必要あるね」

ルシオの言葉にみんな頷く。

皆にクラリベルがどうしたら危険でなくいられるかを一緒に考えて欲しいとお願いをし、クラリベルもそれを望んでいて、そして協力すると言ってくれてることを話した。

「……実はある人に集会への潜入を頼んでいたんだ」

アダムがふっと笑う。

「集会への潜入?」

それって危険なのでは……。

「ローヴを被ると言っても私たちだと面が割れているからね」

ロアが申し訳なさそうに理由を教えてくれる。

確かに。

「彼女に特に何かしてもらわないとしても、中の様子がわかるだけでかなり助かる」

潜入者とスパイもどきをゲットしているってことね。

「証書にもサインしちゃったみたいなんだけど、どうにかなるかな?」

「なんとか考えよう」

さすがブレーン!

「そういえば、今日はお遣いさまとアリだけだね。他の子は?」

わたしはレオとアオはリノさまのところに行って、クイとベアがクラリベルについている話をした。