軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

37 初特訓(体術編)

「………………まさかここまでとは、流石のオレも想定外だ」

呆れたと言うか、どこか困った表情で呟くディルナンさん。

そのお言葉が示す通り、今の私は地面に撃沈しております。

息が苦しい。ぜーはーぜーはー、自分の呼吸が五月蝿いよ。

ポッコリしたお腹も見事に上下しているのがよく分かる。

まさかの体力の無さです。

因みに、運動(私はそのつもり)を始めてからこの状態になるのに五分程しか経っておりません(泣)

お昼寝から目覚めると、食事用のテーブルで何やら事務作業をしていたディルナンさん。

私の起床に気付き、その作業を終えた。

その後はトイレに行って、裏口から再び小さな広場に出て訓練再開。

午前中にやってみた亜空間魔術の復習をして、きちんと空間が私の物として定着したのを確認してから午前中に買って貰ったリュックやらお菓子やらレツのぬいぐるみやら着替え一組にハンカチ類やら包丁セットやらをしまった。

そこまでは良かったんだ。順調でしたよ。

問題はそこから。

「まずはお前の純粋な実力を確認するから、どっからでも好きに掛かって来い」

ディルナンさんのそんな言葉に、取り敢えず真っ向から向かって行き。

アッサリと腕のリーチ一つで、特に力を入れた風でも無く簡単に抑え込まれて即終了のお知らせ。

正しく漫画なんかで出てくるあのイラスト通りの状況ですよ。

それならと思ってディルナンさんの後ろを狙おうと思ったけど、ディルナンさんはこちらの動きを見て簡単に方向転換してしまう。それはもう無意味にグルグルと回転するだけで終わりましたよ。

例えるならば、ディルナンさんを軸にして一人メリーゴーランド状態。

そんな有様でディルナンさんの後ろなど取れる筈も無く。

最後に攪乱してみようと思ったけど、これまでの散々たる結果が物語る通りですよ。そんな高度な動きが出来る訳も無く。

それどころか無駄に左右に動いた分に比例して、体力だけがみるみる消耗され。

結果。

ディルナンさんに防御代わり(?)に超軽く…人差し指の指先で押されただけでひっくり返り、動けなくなりましたとさ。

因みに、ディルナンさんは元の位置から一歩たりとも動いていない。

ディルナンさんが凄いとか言う以前の問題だ。逆に私のダメ指数の高さが凄いという現実が露呈して終了の鐘の幻聴が聞こえた。

この状況を経て冒頭のディルナンさんの台詞な訳ですが。

「さて、どうしたもんだかな」

すみません。ご迷惑をお掛けします…。

「取り敢えず、暫くは実践無しだ。体力作りを中心にする」

暫くして私がどうにか起き上がると、考え込んでいたディルナンさんが口を開いた。

「たいりょく…」

「そうと決まれば、まずは子供らしく鬼ごっこでもするか」

「ほえ?」

ディルナンさん、その言葉とは裏腹な意味深な笑みは何ですか…(ガクブル)

「「「待て待てー!」」」

「にょーっ!(泣)」

問:何故に私は複数人に追われているのでしょうか?

答:ディルナンさんが休みの人を嗾けたから

超やる気満々な本日お休みの三人の隊員さん達に追われ始めてどれぐらい経っただろうか。

参加者は次の勤務時にお昼増量サービスと言う名の餌をぶら下げて鬼ごっこの鬼役を集めてしまったディルナンさん。

そんなディルナンさんはと言うと、木陰で座りながらのんびり何やら資料を確認している。ズルイ!

しかも、私には捕まる毎に買ったばかりのオヤツを一個ずつ没収と宣言した。

何てこった!

鬼ごっこは決められた範囲内だけ。

勿論大幅に手加減してくれているし、小さな体で唯一利点がある障害物や隙間を利用してどうにか逃げているが、そろそろかなり厳しい。

横っ腹が痛いし、口の中が鉄の味がする。

でもでもオヤツ没収は嫌だ。幾らディルナンさんのお金で買って貰ったとは言え、私が選んだオヤツ達だもん! 私のオヤツだー!!

「ボクの、オヤツー……」

奪われそうなオヤツの事を考えたら、何だか泣けてきた。

終いにはヒグヒグと嗚咽が零れだし、思わず声を上げて泣き出していた。

これにはディルナンさんが目を丸くし、鬼役の三人の隊員さんが恐ろしく気まずそうな表情で立ち止まってしまった。

「誰もお前のオヤツを取り上げたりしないから、いい加減に泣き止め」

「うううぅぅぅ…っ」

ディルナンさんに抱き上げられてあやされ、どうにか泣き止んできた。

結局、あのまま鬼ごっこは終了の流れにならざるを得なくなった。

三人の隊員さん達はディルナンさんが部署と名前の確認をしてから解散を言い渡し、それぞれのお休みに戻って行った。

ゴメンね、隊員さん達。

「お前の訓練自体、もう少し考えてからにしよう。今日は散歩だ、散歩」

「おしゃんぽ…?」

「昨日エリエスと見て回ったんだろう? 今日はまた違う感じで歩くぞ」

ディルナンさんの言葉に、嗚咽を零しつつ頷く。

私、こんなんで本当に大丈夫なのかしらん。

既に行先に暗雲が立ち込めている気しかしない……。