軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

03 遭遇

青い空のキャンバスにゆっくりと雲が流れて行くのを、ぽけーっとしながら見送る。こんな風景は、元いた場所と変わりない。平和だ。

逆に周りの生態系は、見れば見る程元いた場所ではあり得ないが。

太陽も実は大小二個あるけど、見ない振り。

記憶が正しければ、とんだマヌケな理由で死んでる上に、転生までしたらしい。異世界トリップと言うには、状況的に無理がありすぎる。

電柱に激突して人が消えるなんて、しかも時間の逆行付きなんて、どんなSFだよ。そんなボケかます愚か者には裏手どころか裏拳で急所にツッコミ入れてくれる。

それにしても、私の常識ではこんな大自然溢れる中に小さな子供が一人きりなんて物騒な事この上ない。

ただの迷子であって欲しい。

だけど、余程大きなショックを受ける出来事があったが故に子供の精神が耐えきれず、『私』という人格が復活した可能性もある。それとも、死んだばかりの子供の身体に憑依しちゃったっとか?

何それ。自分で考えたけど、どっちにしても超シリアス。

ただ、両手首に付いていた金のブレスレットには『ユーリ』と名前らしきものが刻み込まれていて、名前はほぼ同じらしい。筆記体の様な、全く知らない文字でだが、読めたからそれで良しとスルー。

…狙ってやったギャグじゃないよ。

正直、今置かれてる状況は考えれば考える程ヤバいと思う。対応を一つ間違えれば命に関わるって。

だって、私には此処の生態系が全く分からない。

まず第一に食べ物の判別がつかない。前回は運良く巡り合わせただけで、すぐに食べ物に困るだろう。毒はご遠慮申し上げたい。

第二に、草食獣に出会わす分にはいいが、肉食獣が出てきても分からないのはマズすぎる。食われるって。

そしてトドメに、日が落ちた時が最大の難関になる。間違いなく危険が増すが、危険レベルが私には一切図れない。動物って夜行性が結構いるだろうし。

現代日本で生まれ育った人間が火も持たずに無事でいられるものなのか。

だけど、私は簡単に死ぬ気はない。自殺願望は全くない。

考えると気が滅入りそうな現実だが、そう簡単に諦めてたまるか。

だって、まだ知らない美味しい物がきっと沢山ある。やっと調理師として一人前になって、自分好みの味を作れる様になった。

此処が異世界というなら、この未知の生態系ならば、尚更知らない美味しい物が溢れてるはず。

しかも、ピッチピチの若い体には時間が沢山ある。益々死ねないでしょうが。

食い意地張ってる? 誉め言葉です。アリガトウゴザイマスー。

だらだらと考えている間にも雲は流れ、日が西へ(?)移動していく。

下手に動く気にもなれず、とりあえず夜の為に体力の回復と温存に努めた。

「…お腹、空いたなぁ」

再び芸術的なサウンドを響かせ始めたお腹を膝と一緒に抱えつつ、呟いた。

半日近くが経過したが、人気は全く無い。いつもは気にならない孤独感が襲ってくるのは、不安からかもしれない。

空も夕焼けでオレンジ色に染まり、夜はもうそこまで迫っている。

…果肉たっぷりのオレンジゼリーが食べたい。あ、思い出したら涎が。じゅる。

なんて考えてた罰なのか。

「ちょっと待て。ソレはヤバいだろ」

オレンジ色から濃紺色へと空の色が移るとほぼ時を同じくして出現した存在。

夜目に馴染んでいない状態にあっても、一目で危険と判断できる。

映画で知ってる存在よりも遥かに小さいが、今の私には充分に巨大。暗闇に爛々と目を輝かせてこちらを見るソレは、

「あはははは…」

乾いた笑いだろうと、笑うしかないその存在は、

恐竜モドキ☆

しかも、餌認定されてる確率はほぼ100%!

体力は底辺。

ミニマムな幼児体型で逃げ足は期待出来ない。

武器は無し。

当てに出来ない、食べる事重視で食べられるなんて想定外な残念すぎる頭脳。

これで死亡フラグをへし折るってどんな無理ゲー!?

あ、ヤバい。食べる気満々で近付いてくる。

「うっはーい!」

何、この可愛げ皆無通り越してアホ丸出しの悲鳴…って私かぁ。

走り出したはいいけど、追われてるよね? ドスドスという足音と、枝がバキバキ折れてる音がするっ。捕まったら私の骨噛み砕かれる音と同じ擬音ですね、分かりますっっ。

あのバカっぽい記憶から始まって、もう終わるの? 早すぎるよね!

ひぃっ、もう息切れしてるよ。心臓色んな意味でバクバクしてます。

誰か私に救〇下さい!!

とりあえずちょこまかジグザグ走ってるけど、

「無理だからーっ!」

お腹空いてるから執念が半端無いよ、恐竜さんや。

暗い怖い転けるー!!

ってか、前方にもう一体見えるっぽいのを誰かウソだと言って!

もう、体力も尽きるから〜っっっ。

「〜〜〜っ!!」

もうダメだ、喰われるっ。

「−−−」

酸欠と恐怖で気を失う直前、何かの煌めきを見た、気がした。