軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21-38 区切り

1月14日。

仁、ラインハルト、エルザの3人は、ショウロ皇国 宮城(きゅうじょう) に出向いていた。

遠征の報告と仕上げを行うためである。

仕上げというのはもちろん、

「ジン・ニドー卿を『崑崙君』として認めます」

『崑崙君』としての承認を取り付けることである。

ショウロ皇国女皇帝のこの言葉により、仁自身が交流のある全ての国が、『崑崙君』ジン・ニドー卿を認めたということになる。

口頭ではあるが、セルロア王国とフランツ王国も認めているから、これにより、晴れて仁は堂々と『崑崙君』を名乗ることができるというわけだ。

「ありがとうございます」

そして仁は、他国に渡した物と同じ地図を女皇帝に献上した。

地図を見た女皇帝は目を見開き、それを隣にいた宰相に手渡す。そして仁に礼の言葉を述べた。

「崑崙君、貴重な地図、感謝します」

次いで外交官ラインハルトの報告が行われた。

「今回の目的は全て果たしたと思います。詳細は報告書にまとめました」

その成果として、

1、船を使っての、エリアス王国との定期的な交易の承認を取り付けた。

2、その航路の一部であるエゲレア王国の港を使用する許可を取り付けた。

3、ナウダリア川を使ってのクライン王国との交易の許可をエゲレア王国から取り付けた。

等。

ここまでが外交官としての成果。次いで、

1、エリアス王国に、輸送用浅底船の技術指導を行い、ショウロ皇国の株を上げた。

2、エゲレア王国にも、同様に浅底船の技術指導を行い、ショウロ皇国の株を上げた。

3、エリアス王国からクライン王国への援助に関する助言を行った。

4、船を用いた交易に関する、多くの改善案を提出した。

という、技術的な功績も上げていた。

もっとも、後者は、仁やエルザと共同で、という但し書きが付くのだが。

「ラインハルト、そしてエルザ、ご苦労様」

女皇帝からの労いの言葉をもらい、仁たちは退室した。

詳細は報告書を見てもらうことになる。不明点などは翌日改めて、ということになっていた。

「さて、今日はこれで終わりか。のんびりできるな」

飛行船で移動し続けたということになっているので、この日は半日で解放してくれたのである。

「ん。そういえば、フリッツ兄さまたちはどうしてるのかな?」

超高空から蓬莱島 空軍(エアフォース) 部隊が監視してくれているはずだ。

「急いで帰って、行ってみるか」

まだ 宮城(きゅうじょう) の中庭、誰が聞いているかわからないので、『どこへ』という目的語を省略して言う仁。

「ん、賛成」

それを察してエルザも頷く。

まずは仁の屋敷へと飛行船で移動。

「お帰りなさいませ、ジン様、エルザ様。いらっしゃいませ、ラインハルト様」

バロウが出迎えてくれる。もうすっかりこの屋敷に馴染んだようだ。

いずれ近いうちに、こことカイナ村のどっちがいいか聞いてみようと思っている。

それはさておき、仁たちはベーレが用意した昼食を食べてから蓬莱島へと移動した。

『お帰りなさいませ、 御主人様(マイロード) 』

「老君、早速だが、旧レナード王国調査隊の様子はどうなっている?」

『はい、彼等は……』

老君は、高高度から観察した調査隊の様子をかいつまんで報告した。

「なるほど、そのボッツファ遺跡とかいう場所で、金とアダマンタイトの容器を見つけたというんだな?」

『はい。そしてそれらを持ち帰ることにしたようです』

「……どう思う、ラインハルト?」

仁はラインハルトの意見を求めた。

「うーん、そんな場所に保管してあったものを無闇に持ち出すのはなんかすっきりしないなあ」

「ん、私もそう思う」

エルザもラインハルトに同意した。

「……フリッツ兄様が元気そうなのはいい。グロリアさんも無事。でも、その遺跡、なんだか気になる」

「俺もさ。容器の価値に目がくらんで、災いを解き放ったのでなければいいんだが」

『 御主人様(マイロード) 、まだ目が離せませんね』

「ああ、引き続き監視を頼む」

仁は老君に彼等の様子にもっと注意するよう指示したのである。

* * *

15日の朝。

朝食を簡単に済ませた調査隊一行。

容器の中身を捨てた穴を埋め戻そうとした際に、ジェード・ネフロイが思いつきを口にした。

「物は試しだ。金の容器の中身を、ここに捨てたらどうなるか、試してみようではないか」

謎の液体と謎の粘性流動体。混ぜたらどうなるか、その結果は皆知りたいようで、反対は出なかった。

「では、試してみます」

窪地へと容器を1つだけ運び込み、小さな穴を開ける。そして身体に掛からないよう慎重に、中の液体をほんの僅か、穴へと注いでみた。

「おお!?」

鉄をも溶かす液体は、何事もなく粘性流動体に吸収されていったではないか。そして粘性流動体には何の変化もみられない。

「これなら処分してもいいのではないか?」

結果を隊長たちに知らせると、皆頷いた。

「錬金術師のために1つだけ残し、残りは全部空けてしまおう」

ということになる。

危険物なので少々時間は掛かったが、48個の容器の中身は、全て穴へと廃棄されたのである。

「よし、あとは埋め戻せばいい」

それは『ゴリアス』に任せることとし、他の面々がテントを片付けていると、不意にフリッツが叫んだ。

「 岩狼(ロックウルフ) だ! 気を付けろ!!」

同時に血飛沫が舞う。フリッツが背負ったロングソードを抜き放ち、1頭を斬り捨てたのだ。

「きゃああ!」

油断していた女性騎士が襲われる。

「伏せろ!」

それを救ったのはグロリア。彼女もまた、愛用の剣で 岩狼(ロックウルフ) を斬り飛ばしたところ。

「くっ、囲まれているな」

岩狼(ロックウルフ) の群れに取り囲まれていた。その数、およそ50頭。

斬り捨てた2頭以外は急には襲ってこず、彼等を取り巻いて様子を伺っていた。

「全員、抜剣! 円陣を組め!」

フリッツが声を掛ける。クライン王国調査隊隊長のベルナルドも、エゲレア王国調査隊隊長のブルーノもその指示に従った。

若い女性騎士2人とジェード・ネフロイを中にし、円陣を組む。

岩狼(ロックウルフ) はじりじりと包囲を狭めてきていた。