軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

03-03 フィギュア

「ジン、それじゃあ悪いけど、すぐに行かなきゃならないところがあるんだ」

マルシアは考え込んでいる仁の腕を取り、

「今日中に登録しないと参加できないんだよ」

「そうか、そりゃまずいな。わかった、急ごう」

参加登録の締め切りと聞かされては仁も急がざるをえない。

マルシア、仁、礼子の順で通りを小走りに駆けていく。行き着いたのは港町の中央通り、そこで一際目を惹く大きな石造りの建物。

「ここがポトロックの町役場さ」

そう言ってマルシアは扉を開け、中に入っていく、仁達もそれに続いた。

「おや、マルシアではないか。 魔法工作士(マギクラフトマン) は見つかったのかね?」

そう声を掛けてきた人物は、年の頃はマルシアと同じか少し上、茶色の髪にグレイの目。貴族なのだろうか、気障な服に身を包み、護衛を2人連れている。

「ああ、見つかりましたよ」

マルシアがそう返事を返すとその男は小さく舌打ちをした。それに構わず、

「ゴーレム艇競技に参加したいんだけど」

特設の受付へ申し込みをするマルシア。

「はい、それではメンバーの確認をいたします」

受付の係員がそう言うと、マルシアは仁を手招きした。

「 造船工(シップライト) はあたし、マルシア。ゴーレム製作担当の 魔法工作士(マギクラフトマン) は彼、ジン」

「はい、それでは、 魔法工作士(マギクラフトマン) である証明は?」

そう言われたので、マルシアは仁に尋ねる。

「ジン、 魔法工作士(マギクラフトマン) の 互助会(ギルド) か何かに入っているか?」

「いや、特には」

仁がそう答えると係員は、

「でしたら何か作品を見せていただくか、当方で用意した課題を解いていただければいいですよ」

と言った。それを聞いた礼子が進み出た。

「それでしたら私が……」

仁は慌てて礼子を引き戻し、

「課題というのは?」

なんとかそう尋ねる事が出来た。すると係員は、

「こちらに用意してある素材で、何か作っていただければ」

そう言って隣の部屋へのドアを指差した。仁は、

「ああ、それならすぐにでも」

そう言ってその部屋へ、係員と共に向かう。途中、振り返って、

「マルシア、礼子。すぐ戻るから」

そしてドアが閉じられた。その時、マルシアに声を掛けた男が暗い笑みを浮かべていたのを見た者はいなかった。

* * *

その部屋には、もう1人係員がいて、

「それでは、これを使って、何かを作って見せて下さい」

その係員はテーブルの上に銅の塊を置き、仁にそう言った。

「わかった。さて、何作ろうか」

銅の塊は握り拳より小さく、大したものは作れそうにない。コップか、皿か、燭台か……

「よし」

作るものを決めた仁は、さっそく手に魔力を込める。

「ん?」

その際、ほんのわずかに違和感を憶えたものの、

「 変形(フォーミング) 」

構わず魔法を発動させた。

* * *

「マルシア、よくフリーの 魔法工作士(マギクラフトマン) なんて見つけられたものだな」

一方、 互助会(ギルド) のホールでは、先ほどの気障男がマルシアに話しかけていた。

「運がよかったんですよ」

「だが、 互助会(ギルド) が認めなかったら結局は競技参加資格は取れないぞ」

「どういう意味です?」

「言葉の通りだ。奴が口先だけの男で、 魔法工作士(マギクラフトマン) なんかじゃなかったらどうする?」

そう言われてマルシアは憤った。

「ふざけるな。ジンはそんな奴じゃない」

つい敬語を使うのも忘れ、地で怒鳴ってしまうマルシア。だが気障男は気にするでもなく、

「ふふん、どうだかな。すぐにわかるさ」

そう言っている間に、ドアが開いて、係官と仁が出てきた。

「どうだった?」

そう尋ねたのは気障男。

「……」

係員は黙って、手にした物を掲げて見せた。

「ひゃっ」

「おお?」

それは、高さ10センチほどの銅像。いや、人形というべきか。

「すまん、マルシア。作る物がすぐに思い浮かばなかったので、君のフィギュ……人形を作ってしまった」

仁は孤児院時代、バイトの一環で、フィギュア造形の原型製作を手伝った事がある。

オリジナルデザインは苦手だが、手本があれば人一倍上手く作った仁であった。その技術は 魔法工作(マギクラフト) でも遺憾なく発揮されていた。

「それはいいけど、何でこんな水着なんだ!」

頬を染めてマルシアが文句を言う。その服装はワンピース水着であった。

「いや、時間がなかったから。まさか、裸というわけにもいかないし」

「それにしても何でジンがあたしの水着姿知ってるんだい!?」

「いや、そこは想像力で」

「さすがお兄さまです」

真っ赤なマルシアと、淡々と答える仁。ひたすら仁を誉める礼子。

「そ、それでは、ジンさんが 魔法工作士(マギクラフトマン) であることを認めます」

「やったな、マルシア」

それでマルシアは参加料の10000トールを支払う。

「後日でいいですので、チーム名も登録して下さい」

差し出された参加章を受け取り、胸にかき抱くマルシア。

「ジン、ありがとう」

だが仁は、

「お礼なら優勝してからでいいさ」

と不敵に笑った。

* * *

その傍らで、気障男は係員を物陰へ引っ張って行き、

「おい、どういうことだ!」

「い、いえ、私はおっしゃるとおり、あのテーブルで作業させましたよ! なのにあいつは、あっという間にあの銅像を作ってしまったので。試験担当の奴も見てましたから、誤魔化せませんでしたし」

「あれは魔法発動妨害の魔法陣を組み込んだテーブルだぞ? 別のテーブルに変わっていたんじゃないだろうな?」

「それはありません。ちゃんと目印を確認しましたから」

「くそっ、不良品をつかまされたか?」

気障男は悔しそうにしていたが、思い直したのか嫌らしく笑いを浮かべ、

「まあいい、まだ手はある」

* * *

おまけ。

仁が作ったマルシアフィギュアを競技委員長であるポトロック町長は眺めていた。そして一言。

「うん、今年の競技公式水着はこれでいこう!」