軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

03-01 港町ポトロック

小群国がある大陸、その南端の半島。その名をエリアス半島。同名のエリアス王国の統治下にあり、海運、漁業、製塩などが盛ん。

大陸と繋がっているのは細い陸地のみであり、他の小群国との行き来は少なく、独自の文化が形成されつつあった。

「なるほど、ここは暖かいな」

潮風を胸に吸い込む仁。

今、仁は礼子に案内されて、エリアス王国東の玄関口である港町ポトロックを散策していた。

「15回目の暴走転移で飛ばされたのがここの海岸でした。海蝕洞窟があったので、そこに 転移門(ワープゲート) を設置し、岩に偽装したりして隠しておいたのです」

「お前にも苦労かけたな」

そう言って礼子を労う仁。

「いえ、当然のことですから」

そう答えたものの礼子は嬉しそうだ。

「通貨は同じトールだったよな?」

「はい。小群国ですので共通です」

仁は、ブルーランドで魔導具や 魔石(マギストーン) を売ったので小金を持っていた。

「それじゃあどこか、安い宿にでも腰を落ち着けるとするか」

南にあり、周りを海に囲まれているので避寒地として観光客が来る。そのため、宿泊施設が多いのも特徴だ。

「1泊200トールくらいの宿がいいんだが案内所みたいな所って無いのかな?」

「聞いてきましょうか?」

と礼子が言ったので、

「そうだな。あそこの串焼き売ってる露店で聞いてみてくれないか。ついでに串焼き1本買ってきてくれ」

「はい、わかりました」

礼子は肯いてその露店へと駆けていき、串焼きを1本買い、店主と何事か話していたが、一つ頷いて戻ってきた。

「お父さま、はいどうぞ」

「お、いい匂いだな」

それはイカ焼きに似ており、魚醤のようなもので味付けがしてあった。

「うん、うまい」

仁はその串焼きを食べながら、礼子の報告を聞く。

「それでですね、案内所のようなものは無いそうです。でも、あの店主さんおすすめの宿を聞いてきました」

「そうか、それでいいか。で、どこだって?」

「はい。大通りを真っ直ぐ行って、道具屋の角を左に曲がった先、突き当たりだそうです」

というわけでそこへ向かってみる。

まずは大通りを歩く。両側は石造りの建物が立ち並んでいる。潮風に強いからだろうか。

「やっぱり中世くらいの文化なのかなあ」

仁の独り言に礼子が反応する。

「中世、というのはよくわかりませんが、お母さまのいらした時代よりなんだか遅れているような印象があります」

「うーん、やっぱり『魔導大戦』とかのせいなのかな。一旦文明が破壊され、文明の担い手の魔導士が激減したっていうからな」

そんな話をしながら歩いていたら道具屋の前だった。

「道具屋の角を左、と」

「あそこでしょうか?」

突き当たりにあったのは、古びてはいるが、がっしりした石作りの建物。小さく『海鳴亭』と看板が掛かっていた。

「ここのようですね」

そこで入っていく2人。

「こんちはー」

「はいよ、お泊まりかい?」

カウンターで出迎えたのは、恰幅のいいおかみさんだった。

「あの、串焼きの露店で聞いてきたんですが、宿泊お願いします」

「パウルの紹介かい。それじゃあ1泊1人200トールだけど、そっちのお嬢ちゃんは小さいから2人で300トールでいいよ」

「それじゃあ、とりあえず3泊でお願いします」

仁は財布から900トールを出して支払った。

「はい、確かに。それじゃあここに名前を書いて。……ジン、とレーコ、ね。……これが部屋の鍵だよ。2階の突き当たり。食事は食堂で別料金になるからね」

「わかりました」

それで2人は部屋へ向かった。階段も石造り、軟らかい石なのか、足音は響かない。

「大谷石みたいだな」

魔法工学師(マギクラフト・マイスター) として、石材にも興味を持つ仁。蓬莱島でも大谷石つまり浮石凝灰岩が採れる。耐火性があって加工しやすいので建材に使われている石である。

「ここが部屋ですね」

ドアには部屋番号ではなく、『ボニート』と書かれている。

「魚の名前ですね」

礼子に言われて、他の部屋のドアを見てみると、『サルディナ』『バラクド』『カルプ』などと書かれていた。

「ボニートってどんな魚なんだ?」

「さあ?」

礼子も魚のことはよく知らないらしい。

とりあえず部屋に入る。ベッドが2つと小さいテーブルが1つ。それにスツールが2つ。

壁には棚があって荷物を置けるようになっているようだ。トイレは廊下の反対側の突き当たりにあった。

小さい窓から外をのぞくと、海辺である。『海鳴亭』というだけあって、海に面して建っているようだ。

荷物といっても下着などの着替えが入っている袋が1つだけだ。その気になれば蓬莱島へ戻ることも出来る。ただ、この町の人間と交流を持つ事を考え、宿を借りたわけである。

風呂はなく、シャワーに似た設備だけである。風呂は蓬莱島で入るしか無さそうだ、と仁は諦め、

「さて、それじゃああらためて町を見て回るか」

「はい、お父さま」

それで2人は部屋に鍵を掛け、フロントのおかみさんに預けてから外へ出たのである。

「お父さま、まずどこへ行かれますか?」

「そうだな、船を見てみたいから、港へ行ってみよう」

ということで、まず海を目指す。

『海鳴亭』の裏手は入江状になった海である。そこは海水浴場のようで、まばらに海水浴客がいた。

港は、と左右を見てみれば、右手側、300メートルくらい先に船がたくさんもやってあるのが見えた。

「あっちが港らしい」

海岸沿いに歩けばすぐに港である。大小様々な船が静かに波に揺れていた。魚臭いのは、漁に使っている船が多いからか。

「ふんふん、船体はやっぱり木造が多いか。金属は補強に使われているだけのようだな」

早速観察を始める仁である。

「お父さま、こちらの船は面白いですよ」

礼子の声を聞き、そちらへ行ってみると、確かに、面白い船が浮かんでいた。

「 双胴船(カタマラン) か」

それは確かに、現代地球で 双胴船(カタマラン) と呼ばれる形状の船であった。全長は4メートルくらいであろうか。

「高速航行と安定性の両方を備えた船だな。だけど何に使うんだろう?」

そのように仁が独り言を言っていると、背後から声がした。

「へえ、見てわかるかい。あんたも 造船工(シップライト) なのかい?」

振り向くと、そこにいたのは、仁よりも2、3歳年上に見える女性であった。

スタイルは良く、出るところは出、くびれる所はくびれている。髪は金髪をショートにしており活発そうな印象だ。青い瞳は海を思わせ、小麦色に焼けた肌は張りがあって、いかにも健康そうだ。

「いや、俺はマギクラフト・マイ…… 魔法工作士(マギクラフトマン) だ」

あやうく、またマイスターと名乗りそうになった仁。だが、 魔法工作士(マギクラフトマン) と聞いたその女性は目を輝かせて、

「 魔法工作士(マギクラフトマン) だって! なあ、あんたはどこかに所属してるのかい?」

そう尋ねられた仁は、

「いーや、別に」

するとその女性は更に嬉しそうに笑みを浮かべ、

「フリーなのか! そりゃあちょうどいい。あんた、名前は? あたしはマルシア」

「俺は仁。で、この子は礼子」

「ジンとレーコ、ね。よろしく。でさ、さっそくだけど、話をしたいからこっちおいでよ」

そう言って港にある喫茶店へ誘うマルシア。 船室(キャビン) と言う名のその店にはちょうど他の客はいなかったため、3人は一番奥の席を選んで座った。