軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

02-19 いやな予感

結局、大型冷蔵庫2台と温水器10台を発注してクズマ伯爵は帰っていった。

「何だか夢みたい」

上気した顔でビーナが呟いた。

「ジンが来てくれるまで、作った魔導具が1つも売れなくて困っていたのに」

「それより、昨日受注した分を作り始めなきゃ」

「そ、そうよね」

そこでまず、温水器を作ることにする。受注した5台を作っていく。

複製工程なので、短時間で完成する。が、もう材料が足りない事に気づく。

「あー、銅も足りないし木材も足りないわね」

「今日、店が終わったら買い出しに行くか」

「ええ、遠いから早めに出ないといけないわね」

「ああ、そんなこと言ってたな」

「お金の方は昨日5万トール貰ったから大丈夫でしょう」

冷蔵庫を売った代金の、ビーナの取り分である。

そこではたと気が付いた。ポップコーン製造器がない。

「困ったわ……」

材料も切れているので今から作ることもできない。

「今日は謝るしかないな」

「それしかないわよね……」

ライターなら作る位の材料が残っていたので、ライター30個を作り、

「それじゃあ少し早いけど、お昼にしちゃいましょう」

そう言ってビーナはパンを出して見せた。真っ白、とはいかないが、かなり高そうなパンである。

「お、いいパンじゃないか」

仁がそう言うと、ビーナはにっこり笑って、

「でしょ? クズマ伯爵が持ってきてくれたの」

「ふーん」

大半はナナとラルドのために残してやることにして、仁とビーナは昼食を済ませる。ビーナはその2人に昼食を持っていった。

そこへ礼子がやってきた。

「お、礼子、早かったな」

「はい、お父さま。島の方は順調です。それで、ビーナさんにお話しされたのですか?」

そう言われて仁は、すっかり忘れていたことに気づく。

「あ、忘れてた」

「お父さま……」

呆れた視線を礼子に向けられた。

「ま、機会を見つけて言うから」

「しっかりしてくださいね?」

更に念を押されてしまった。そこへビーナが戻ってきて、

「あら、レーコちゃん、来てたの」

「はい」

なんとなく礼子はビーナに打ち解けきらないようだ。

「それじゃあ、店を出しに行くか」

そうして3人はいつもの場所へと向かう。3人で分担して温水器を抱えて。

「なんだよ、楽しみにしてたんだぞ!」

「昨日はそんなこと言ってなかったじゃないの!」

「ふざけんなよー、子供たちも楽しみにしてたんだぞ!」

「すみません、すみません……」

案の定、ポップコーンを楽しみにしていたお客達が文句を言ってきた。必死に頭を下げるビーナ、そして仁。

礼子はそんな仁の姿を見ると、文句を言う客達を睨み付けていた。物騒な魔力も漏れ始めている。それに気が付いた仁は、礼子の腕を取って少し離れた場所まで引っぱっていく。

そして、仁がなだめる間もなく礼子の口からは、

「……お父さまは何も悪くないのに、何ですか、あの人間達は。粛正していいですか?」

過激な言葉が。仁は溜め息をついて、

「礼子、頼むから何にもするなよ?」

「ですが、お父さま……」

「何にもするなよ」

仁に重ねて言われた礼子は、

「はい……」

と小さい声で不承不承肯いたのだった。

店に戻ると、文句を言うだけ言ったお客は帰っていた。が、

「頼んでおいた『おんすいき』、だっけ、あれは出来てるのよね?」

「はい、それはもちろん」

そう言って、温水器を1台手渡す。

「よかった。それじゃあ、200トールだったわよね、はいこれ」

「ありがとうございます」

そんな調子で、予約された5台が売れる、そしてライターは言わずもがな。

「売るもの無くなっちゃったわね」

「ああ。早いけどかえって好都合だな」

そこで、遠くにあるという資材を扱っている店へ向かう事にする。

そこはブルーランド城外から、1時間ほど歩いたところにある山の麓。鉱山があり、木材資源のある場所だ。

そこまでの道中、仁はビーナにどのタイミングで話すか考え込んでいた。そんな事とは露知らず、

「ほら、ここなのよ」

それは大きな倉庫の建つ一角にあった。

「いらっしゃい」

店番の男が出迎える。

「えーっと、青銅のインゴット2キロと銅のインゴット10キロ。それに木材」

ビーナは注文内容を考えていたようで、てきぱきと注文していった。

「31000トールですが、おまけして30000トールにしときます」

「ありがと。うちまで運んでくれる?」

代金を払いながらビーナがそう言うと、

「かなわないなあ」

そう言いながら承知してくれた。これで、重いインゴットを持つことなく帰ることが出来る。仁は礼子に持ってもらおうかと考えていたのだが。

荷車をロバのような小さい馬に引かせた男と共にビーナの家へ帰ると、また馬車が停まっているのが見えた。

だが、その馬車の紋章は、ガラナ伯爵のもの。そして、私兵らしき男達が10人ほど立っていた。

「やな予感がする」

そんな呟きが仁の口から漏れた。

「面倒ごとはごめんですよ!」

そう言って、インゴットと木材をそこへ放り出し、空になった荷車をロバ?に引かせ材料屋は飛ぶように帰って行ったのである。

仁はビーナを庇うように立ち、礼子はそんな仁の真横に並んで立った。