軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

16-20 まとめ、そして始動

蓬莱島の研究所地下に集まった仁の『ファミリー』は、推測を交えつつ、これまでのまとめを行っていた。

「まずは人類のルーツ」

指を一本折り曲げながら仁が言った。

「大昔、別の星……『ヘール』と言うらしい……から宇宙船でこの星……『アルス』と言うらしい……にやって来た原初人類がいた、ということ」

ラインハルトが続けて言った。

「で、昔話との整合性も取れたのよね」

ヴィヴィアンが嬉しそうに言う。

「『人とほとんど変わらない従者』というのは 人造人間(ホムンクルス) ? のことだったわけね。『新天地』、というのはこの星のことで。随分と事情がわかった訳よ」

頷く仁とラインハルト。

「新天地で再び繁栄の時を迎えた、というのは原住種族と一緒になって、また人口が増えてきた、ということだろうな」

仁が推測を述べた。

「うむ、原初人類は原住種族と交配した。それが魔族と人類の祖先となった」

トアがそれを引き継いだ。

「ここで疑問が起きるよね。魔族と人類の差はどこで生じたんだろう?」

サキが第1の疑問を口にした。

「基本的に、魔族と人間の身体に差は、ない」

エルザが事実を述べる。

「聞いた話では魔族は人間より長生きだそうじゃないか。それはどうしてなのか?」

ラインハルトが再度疑問を提示した。

『それに関しまして、仮説を立ててみました』

今度は老君からの発言があった。

『 魔力庫(エーテルストッカー) という魔導具があります。これにより、魔力系素材の半永久的保存が可能です。素材でなく人間だったら?』

「……なるほど……」

「 自由魔力素(エーテル) 濃度の濃い土地に住むことで細胞の劣化が抑えられるのではないか、ということね?」

ステアリーナが結論を導き出した。

『はい。加えて、何世代も経った後には、更に細胞レベルで 自由魔力素(エーテル) に馴染み、寿命が延びたのではないかと推測いたします』

「いいことずくめ! ……とはいかないわね。 自由魔力素(エーテル) の濃い土地でしか生きられなくなってしまうのじゃ……」

ヴィヴィアンが苦笑しながら発言した。

『その通りです。ある意味『 自由魔力素(エーテル) 依存症』と言ってもいいかもしれませんね。その状態になったら、『 魔素暴走(エーテル・スタンピード) 』は致命的でしょうね』

自由魔力素(エーテル) 依存症、という状態は身体の内外に 自由魔力素(エーテル) が無いと苦しくなるような状態、と言えばいいのだろうか。エーテルジャマーを浴びせられたときの魔族の反応を見る限りそれは間違いないようだ。

結局、 自由魔力素(エーテル) の濃い土地で何世代も何十世代も過ごしたために起きた 自由魔力素(エーテル) への依存。それは大きな力をもたらしたと同時に、禁断症状ももたらす諸刃の剣であった。

* * *

「2つ目は、魔族と人間の確執について」

2本目の指を折り曲げて仁が言った。

「どうやら仕組まれたものらしい。仕組んだのはサーバント700672号が『デキソコナイ』と呼んだ 人造人間(ホムンクルス) 、でいいのだろうか」

「うん、そのあたりは、かの700672号も眠っていたということで情報が少ないが、間違ってはいないだろうな」

仁の推測をラインハルトも支持した。

「……そ、その『デキソコナイ』ですか? それって、廃棄されたのはずっと……何千年かというくらい前なんでしょう? なのに、300年前の魔導大戦まで何もしてこなかったというんですか?」

珍しくミーネが意見を言った。が、その内容は的を射ている。少なくとも廃棄されたのは魔導大戦の頃の筈がない。

なぜならば、『デキソコナイ』を作ったのはサーバントたちの主人がまだ存命の頃の筈だからだ。

『それにつきましても仮説を立ててみました』

今度も老君が推測を述べてくれる。

『論理的に思考できる存在であれば、十分な準備期間を取るであろうことは容易に想像できます。まして寿命という概念がないならば、生き残った『デキソコナイ』が『 負の人形(ネガドール) 』と名乗るに到るまで、1000年単位の時間が掛かっていても不思議ではないと考えます』

それを聞いて一同は深く頷いた。

自由魔力素(エーテル) 以外に食事の必要もなく、極端に長い寿命を持つ存在ならそうするだろう、という、自らもそういった存在である老君の説は十分納得できるものだったからだ。

「とにかく、『 負の人形(ネガドール) 』は魔族と人類、というよりも、『 堕ちた者たち(フォールナー) 』、だったか? 主人の子孫を憎み、皆殺しにしようとしている、ということだな」

「その手始めに魔族を扇動して人類と争わせる、ということか」

ラインハルトと仁が『 負の人形(ネガドール) 』の目的を端的に述べた。

「と、なると、大規模な攻勢もあり得るな」

「ああ。今のような小競り合いでは滅亡には程遠い」

その言葉を聞いたエルザは、いや、女性達は身震いをした。

「……戦争、になるの?」

「第2次魔導大戦、ということかい?」

「また大勢の血が流れるのでしょうか……」

「そんな悲惨な出来事を後世に伝えたくはないわよ」

「人間の歴史がそんな形で終わるなんて悲しすぎますわ」

「ジン様なら、何とか出来ますよね?」

仁は首を縦に振った。

「そうさせないために、こうして情報を集めているんだ」

いざとなったら、魔族を全滅させるくらいの兵力はある。だが仁は、そんなことになる前になんとかしたかった。

「『 負の人形(ネガドール) 』の情報がもっと欲しいな。……老君、カプリコーン1だけに任せておく時は終わったようだ」

『はい、 御主人様(マイロード) 。これより、蓬莱島は第2次魔導大戦を阻止すべく、活動を開始しようと思います』

「許可する。頼むぞ」

そして仁は『ファミリー』に向き直る。

「というわけだ。みんな、力を貸してくれ」

そう言って頭を下げた仁に、仲間からの声が飛ぶ。

「もちろんだとも、ジン!」

「……できることは何でも、する」

「わたくしに何ができるかわからないけど、協力は惜しまないわよ!」

「ジン、ボクにできることがあったら何でも言ってくれ」

「ジン君、これは君にしか出来そうもない。私は、いや、我々は精一杯君を支えるよ」

「正直、私なんか何の役にも立てそうもないけど。それでも何かできることがあったら言ってちょうだい!」

「ジン様、決してお一人で抱え込まれたりなされませんように」

「そうですわ。わたくしたちみんながついていますわ!」

「……ありがとう」

いい仲間、いや家族を持った、と仁は目頭を熱くしたのである。

* * *

一方、カプリコーン1は、『福音』の氏族の洞窟に戻って来ていた。

「私が確認してくる」

アレクタスが立ち上がった。

「私もお伴します」

『 操縦針(アグッハ) 』は無効化された筈だが、万が一ということもある、アンが伴を買って出た。

「それでは2人で行ってもらおうか」

仁(の 身代わり人形(ダブル) )と礼子、イスタリスたちに見送られ、アレクタスとアンは慎重に洞窟へと入っていった。

そして5分もしないうちに戻ってくる。アレクタスの喜色満面といった様子を見れば、うまくいったことが容易に想像できた。

「ジン殿! 我が氏族は解放された! 貴殿のおかげだ!」

「それはよかった」

「改めて、氏族長からお礼と謝罪、それに事情の説明をしたいそうだ。来てもらえるだろうか?」

この申し出に、仁(の 身代わり人形(ダブル) )は大きく頷いた。

一行は、前回と同じく、ランド1をカプリコーン1に残し、『福音』の氏族の居住地へと向かったのである。

折しも、蓬莱島が本格始動を開始したのと同時刻のことであった。