軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

16-03 魔族領

「見ろ、ここに 魔石(マギストーン) が埋め込んであるだろう。これが発動の鍵だ。これをこうやって……取り出してしまえば罠は発動しない」

「なるほど、勉強になります」

ネトロスが早速罠を発見、解除していく。熱心にそれを見ているのはアン。

「……?」

ルカスはどうにも飲み込みが悪い。

「こっちのは魔法陣だな。これは一部を消してしまえばもう心配はいらん」

ネトロスはかなりの知識があるらしく、次々に罠を解除していった。

今回の罠は、どちらかというと単純で簡単なもののようだ。

「かといって、解除したつもりが、2段構えの罠と言うこともあるから気を抜くなよ」

「はっ、はい!」

ネトロスは慎重さも見せる。ルカスは覚えようと必死。

一通り撤去作業が終わったところで、アンは一旦カプリコーン1に戻った。そして 魔力探知装置(マギディテクター) を確認してもらう。

「罠は全部解除できたようですね」

「ああ、そのようだな」

アンが報告し、仁が確認をしてほどなく、ネトロスとルカスも戻って来た。

「お嬢様、計4つの罠が仕掛けられていました。2つは『Murodelfuego』(火の壁)を発生させるもの、1つは『Trampa』(落とし穴)。そして最後の1つは『Distruzione』(破壊)でした」

「そう、ごくろうさま」

イスタリスはネトロスを労う。そしてシオンとルカスは。

「ルカス、少しは勉強になった?」

「は、はい、ほんの少し……」

「……ルカスはまだまだこれからね……」

シオンは小さく溜め息をついたのである。

「さて、それじゃあ再度北上するぞ」

仁が言い、ランド1はカプリコーン1を発進させた。赤っぽいラジオラリア板岩の土地に踏み込むカプリコーン1。

そのまま何事も無く、赤い大地を進んでいくことができた。

次第に地峡の幅は広くなり、完全に魔族の土地に入り込んだことがわかる。

「君たちの氏族はどこに住んでいるんだ?」

「あ、はい、地峡を過ぎて東に折れ、海岸沿いに進んでください。小さな入江があって、そのほとりが『森羅』氏族の居住地です」

あたりは赤みがかった石がごろごろ転がる荒野。ところどころに草や苔が生えるだけ。

「あまり豊かな土地じゃないな」

「はい、土地は痩せていますし、岩場が多くて農耕地も少ないんです」

食糧不足が起こるべくして起こったようだ、と仁は感想を持った。

そして大分日が傾いた頃。イスタリスの言葉通り、入江が見えてきた。

「あれか?」

「……いえ、違います。あれよりもっと東です。入江ももっと大きいのです」

そこで更に東へむかう。もう邪魔は一切入らなかったので行程は捗る。

「ああ、あそこです!」

先程のものより更に大きな入江が見えてきた。周囲には緑が広がり、農耕地であることがわかる。

近付くカプリコーン1を見つけ。人々が大騒ぎを始めたようだ。カプリコーン1は一旦停止する。

「いけない! ネトロス、あなたが行って説明してきてちょうだい」

「はい、お嬢様」

言うが早いか、ネトロスはドアを開けて外へ飛び出した。魔法で身体強化をしているのだろう、その速度は速い。

見る見るうちに、騒いでいる人たちのところに到着した。

何やらネトロスが説明しているらしい様子が見えたが、少し様子がおかしい。

ネトロスは住民達に罵られているかのような態度を取っている。頭を下げ、謝るような仕草が見られた。

そのうち、彼に向かって手を上げるらしき光景まで見られた。

「……何かおかしいな?」

仁の呟き。

「私も行ってきます」

イスタリスが立ち上がり、ネトロスの後を追った。

「気を付けろよ」

「大丈夫ですよ。同じ氏族の者たちですし」

イスタリスは心配そうな仁に微笑んで、カプリコーン1を後にした。

「うーん、やっぱり心配だ。礼子、頼めるか?」

その言葉とほぼ同時に礼子は立ち上がり、

「様子を見てまいります」

と、一言を残して飛び出した。

不可視化(インビジブル) を使用した礼子は気付かれることなくネトロスとイスタリスに近付き、その話の内容を知った。そして呆れてしまった。

それは、ネトロスが、いや、イスタリスが、シオンが、そしてルカスが、非難されていたからである。

「人間にこの地を教えたのか!」

「蛮人などに媚を売りやがって、誇りはないのか!」

「貴様等は裏切り者だ!」

などと口々に罵る発言が飛び出してくる。集落から更に人がやってきて、その数は増えていく。

「ちょ、ちょっと待ってください、みなさん!」

そこへやって来たイスタリスが大声で叫んだ。

「私たちは氏族長の命を受けて……」

だが、それ以上言葉を紡ぐことはできなかった。石つぶてが飛んできて、イスタリスの頬を掠めたのである。

「あっ……」

「嘘をつけ! 氏族長は、お前たちが命に背いて里を抜け出したと言っている! 黄金と 魔結晶(マギクリスタル) まで盗み出しやがって!」

とんでもない発言まで飛び出してきた。

「ち、ちが……」

「でていけ! 2度と戻ってくるな!」

「殺されないだけありがたいと思え!」

更に飛んでくる石つぶて。イスタリスは呆然と立ち尽くすだけ。だがネトロスが当たりそうな石は全て払い落とした。

「みんな! 聞いて!」

「うるさい! 裏切り者!」

「恥知らず! 出て行け!」

その時、人垣の奥から1人の老人がやって来た。白髪、白髯。イスタリスやシオンと良く似た水色の目をしている。

「皆の者、止めよ」

「氏族長……」

「お祖父様……」

それはイスタリスの祖父で『森羅』氏族の長、バルディウスであった。

「イスタリス、お前は儂に無断で里を抜け出し、ぬけぬけとまあ、よくも戻って来たものだな」

「お、お祖父様、違います、私はお祖父様の命を受けて……」

「儂はそのような命を出した覚えはない。勝手に黄金と 魔結晶(マギクリスタル) を持ち出した上、おまけに人間にここの場所を教えたな? 恥を知れ」

「ち、ちが……」

イスタリスはもう泣き出しそうだ。

「何が違う。あの乗り物はなんだ。人間どもの兵器ではないのか?」

「ち、違います」

「ほう? 岩巨人を破壊し、『傀儡』のベリアルスを捕らえておいて、兵器ではないと? よく言うわ」

「あ、あれは『 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) 』、ジン様の作った乗り物です! 戦うための武器ではなく、防御のためのもので……」

「はっ、 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) じゃと? そんなお伽噺を信じているのか」

「お伽噺なんかじゃありません! 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) は……」

だが、氏族長、バルディウスは聞く耳を持たない。

「ああ、もうよい。お前はもう我が氏族ではない。どこへなりと行くがいい。殺さないのはせめてもの慈悲と思え」

「お、お祖父様ぁ……」

ついにイスタリスは泣き出してしまった。

「皆の者、あの兵器を破壊せよ」

バルディウスはそれだけ言うと、踵を返して戻っていったのである。

そして残った人々はというと。

「……破壊」

「……破壊せよ」

「破壊せよ!」

口々に呟きながら、カプリコーン1目指し、歩み始めたのであった。