軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

01-26 それから

山へと逃げた仁は、礼子の案内によって、 転移門(ワープゲート) を隠した洞窟へ向かう。

「ここがそうです」

そこは麓を望める見晴らしの良い場所だった。仁はカイナ村を眺めやり、

「せっかく居心地のいい場所だったんだけどな、残念だ」

そう言うと、まず付いて来たゴーレムのゴンとゲンを転移させる。ゴーレム馬の『コマ』もなんとか洞窟に押し込み、転移させることが出来た。

残るは仁と礼子である。

「さて、俺たちがこっちへ逃げたのを見られてるから、こいつも使えなくしとかないとまずいかな」

「そうですね」

「ちっ、次にカイナ村へ行けるのがいつになる事やら」

「わたくしがお手伝い致します」

礼子がフォローする。

「うん、そうだな。じゃあ、俺たちが使って1分したら壊れるようにしておくか」

転移門(ワープゲート) には悪用されないためにデフォルトでそういう機能が付いている。セットを終えた仁は、

「じゃあ、行くか」

「はい」

そして2人の姿は消えたのである。

「くそう、逃がしたか」

「ぜえ、ぜえ、ぜえ……」

仁達が消えてからたっぷり1時間後、ワルター伯達がようやく山頂に辿り着いていた。既に何の手がかりもなく、雪がちらちらと降ってくる天候に、

「伯爵、ここにいてもどうしようもありません。暗くなる前に撤退すべきかと」

との副官の進言に、

「仕方がない、帰るぞ」

苦々しげにそう呟き、ワルター伯爵とその兵達は下山、カイナ村を横目に、そのまま王都へと向かったのだった。

* * *

「これが研究所のある島か」

研究所に帰った仁は、礼子の案内で外へ出てみた。気候的にはカイナ村より暖かい。密林というほどではないが、そこそこ雨も降るのであろう。

「開拓すれば自給自足できそうだな」

畑を作れそうだと仁は思った。ただしまだ先のことであるが。それよりも大事なこと。

「食べられそうな実の生る木とかを探してくれ」

「はい、御主人様」

礼子、そして5人のゴーレムメイドと手分けして、とりあえずの食料を確保することである。

2時間ほど掛け、4種類の果実、2種類の木の実を見つけることが出来た。それに、ゴムの木らしき物も。

分析(アナライズ) で毒性の無いことを確認すると、早速味見である。

「うん、これは甘くて美味い。こっちは甘酸っぱいな。これは甘いけど少しぱさぱさしている。これは酸っぱい」

果実はそれぞれ、桃、オレンジ、リンゴ、レモンに近い味といえばいいか。

木の実はクルミと栗に似ていた。

「なんとか食べる事は出来そうだな。それじゃあ、果物は20個、木の実は10キロくらいずつ集めて来てくれ」

ゴーレムメイドに指示を出し、研究所に戻る仁であった。

* * *

「馬鹿者!!」

クライン王国の王都では、報告に戻ったワルター伯爵が国王アロイス3世から叱責を受けていた。

「儂はそのジンという者を王国に仕えさせようと思い連れてくるように言ったのだ。それを犯罪者扱いしおって! 挙げ句の果ては怒らせ、逃げられたとは! 他国へ仕官されたらなんとする!」

「も、申し訳ございません……。し、しかし、かの者がゴーレムを操り、我が国に害をなしていた可能性もございましたので」

「それも既に報告を受けておる。ジンはあのゴーレムを見たこともない魔法で捕縛、自分のいうことを聞くように作り替えたのじゃ」

「なんと!」

これは、仁の無罪を立証するため、リシアがいち早く王都へ戻り、件の出来事を報告し直していたのである。その際、事実を隠していたことを叱責されはしたが、仁本人から頼まれたこと、それにリシア自身が見た仁の実力を報告することで、帳消し。そして王と宰相は仁という人材が欲しくなっていたのだ。

「もうよい、下がれ。それからカイナ村にはこれ以上の手出しは無用じゃ。わかったな」

「は、ははっ」

これ以上仁を刺激したら、逃げられただけでなく、敵に回る可能性も出てきてしまう。リシアから聞いたその実力を考えてもそれは避けたかった。

「うまくいかないものよの……」

クライン王国国王、アロイス3世は一人になると天を仰いで溜め息をついたのであった。

* * *

「おにーちゃん……」

毎朝、ポンプを動かして水汲みをする度、ハンナは仁を思い出していた。

あれから、ワルター伯とその兵は村を素通りして帰り、報復などは一切無い。マーサをはじめ村の者達は皆、山へ逃げた仁を心配していた。

「なあに、あいつのこった、レーコちゃんもいるし、馬にも乗ってるんだ、大丈夫だろうさ」

とはロックの言。

転移門(ワープゲート) の事を知らないため、村人達は皆仁が山に隠れていると思っているのだ。それで時々、残されたゴーレム馬で山へ行き、仁を捜したりしているのだが、当然成果は上がっていない。

そんなある日、リシアが村を訪れた。

「おや、リシア様、どうなさいました?」

出迎えた村長が、リシアの明るい顔を見てそう尋ねた。

「よろこんで下さい、ジンさんの疑いは晴れました」

「えっ!」

「そして国王陛下直々に、今回の誤解を謝るとともに、ジンさんを王都にお招きして、出来れば仕えて欲しいとおっしゃってます。その際、身分は最低でも 王国魔法工作士(ロイヤルマギクラフトマン) を保証するとも」

「ほう! それはすごい!」

感心する村長。 王国魔法工作士(ロイヤルマギクラフトマン) 、『ロイヤル』を冠されたそれは、貴族に準ずる待遇である。

「で、ジンさんは?」

「それが、あれきり、音沙汰がありませんので」

「そうですか……」

仁が認められたことは素直に嬉しいが、肝心の仁が行方不明のままでは喜びも半分、というカイナ村の住民達であった。