軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

01-17 ゴーレム馬

今回の採集行で仁が見つけた 魔結晶(マギクリスタル) は土属性の黄色い物が、小さい欠片も含めて15個。かなりのものである。

加えて、ミスリル銀とアダマンタイトの鉱石。 魔結晶(マギクリスタル) は全部持ってくる事が出来たが、鉱石は無理。なので仁とロックが村に戻った後、ゲンだけでなくゴンも一緒に、掘り出してある鉱石を取りに行かせた。

疲れを知らぬ2体のゴーレムにより、翌日には全部の鉱石が庭にうずたかく積まれる。それを眺めた仁は、これで作れる物の幅が広がる、と1人ほくそえんでいた。

「おにーちゃん、なににやにやしてるの?」

ハンナにそう言われて我に返った仁は照れ隠しの笑いを浮かべ、

「な、何でもないよ」

「そお?……あのね、ロックさんが呼んでるよ?」

「ロックさんが?」

何だろうと庭の外に出てみると、ロックが手に何かを持って立っていた。

「よう、ジン。これな、山鹿の干し肉だ。少しだけどな、お裾分けって奴だ」

採集行の帰りに獲った山鹿を干し肉にしたのだという。生のままでは傷みやすいので、貴重な蛋白源である肉はこうして干し肉にして長期保存するのだ。

「ああ、わざわざ済みません」

仁が受け取ると、ロックは続けて、

「それでだ、今日はちょっと頼みもあってよ」

「何ですか?」

「今度は俺とあと何人かでよ、山鹿を狩りに行こうと思うんだがよ、荷物運びと万一に備えて、ゴンかゲンを貸しちゃあくれねえか?」

確かにゴーレムに荷物を持ってもらえれば、山に入るのにも楽だ。だから仁は、

「いいですよ。それじゃあゲンを連れて行って下さい」

「おう、そうか。じゃあ明日の朝、来るからよ」

そう言ってロックは帰って行った。仁はゴンとゲンを見て、

「うーん、そんじゃ強化だけちゃっちゃと済ませてしまうか」

「おにーちゃん、なにするの?」

まだそばにいたハンナが、仁の呟きを聞き尋ねる。

「ん? ゴンとゲンをもう少し強くしてやるのさ」

「つよくなるの? あたしもつよくなれる?」

「はは、それは無理かな。女の子はおしとやかな方がもてるぞ?」

無責任にも何気なくそんなことを言う仁。ハンナはそれを聞いて、

「そうなの? おにーちゃんもおしとやかな女の子のほうがすきなのかな……」

そう呟いていたのだが、仕事場へ向かった仁の耳には入らなかった。

「とりあえず、手の先と胸当てをアダマンタイトに変えよう」

前回、鉱石を掘り出していたゲンの手がアダマンタイト鉱石で壊れた事を 鑑(かんが) み、手を。そして 魔結晶(マギクリスタル) 製の 魔力炉(マナドライバー) 、 魔素変換器(エーテルコンバーター) 、 制御核(コントロールコア) の入っている胸部を守るための胸当て。この2つをアダマンタイト製にすることにした。

「 精錬(スメルティング) 」

鉱石を、魔法を使って金属へと精錬していく。分離した不純物の中には、錫やクロム、ニッケルなどの金属も混じっているので保管しておき、あとでまた精錬する予定だ。

仁は1人でそんな工程を行っているが、それがどれだけ規格外だかは自覚していない。まあ指摘する者が誰もいないカイナ村だから平和裏に進められるのである。

「よし、これで2体とも丈夫になったぞ」

そしてゴンとゲンがどんどん常識外れのゴーレムになっていることも自覚していないのであった。

* * *

「それじゃあ、ロックさん、ジェフさん、ヤンさん、気をつけて」

「おう、行ってくるぜ」

「あんた、気をつけてね」

「ゲン、ロックさん達のことを頼むぞ」

「リョウカイデス、マスター」

翌朝、ロック他2名が、山鹿狩りに出掛けていった。子供たちも面白がって途中まで付いていくものもいる。マリオはもちろん、ハンナもその中にいた。

そして仁はといえば、あらためて作りたかったものに取りかかっていた。

それは、ゴーレム馬である。

ゴーレムが人型なのは、動きを制御する 制御核(コントロールコア) に蓄えられる動作情報が人間のものだからである。言い換えると、制作者が人間の動作しか理解していないからという理由からである。

が、 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) である仁には当てはまらない。四足歩行の解析データは先代から引き継ぎ済みである。この点でも、この時代は過去よりも遅れてしまっていることがわかる。げに忌まわしきは戦争と言うことか。

閑話休題(それはさておき) 、仁が作り始めたのは 小型馬(ポニー) 。手始めに、ハンナ専用の乗り物を造ろうと思ったのだ。

自動人形(オートマタ) とは違い、ゴーレムなので構造は単純(ただし仁基準で)だ。

「まあおとなしめの性能でいいかな」

外装は魔法で硬化した青銅、一目で人工物とわかる。この辺はなんとか普通の範疇に入れていいだろう。

が、骨格にアダマンタイトを使い、耐久性を上げている時点でもうまともではない。

「速度よりも力と持久力重視だな」

ということで 魔力炉(マナドライバー) と 魔素変換器(エーテルコンバーター) に2個ずつ 魔結晶(マギクリスタル) を使用。既に化け物級である。

「 制御核(コントロールコア) は1個でいいよな」

複雑な自律動作は必要無いので小さめの 魔結晶(マギクリスタル) を使う。

「よし、 基礎制御魔導式(コントロールシステム) 構築。……うん、大分慣れてきたな」

仁の脳内で馬の動きがシミュレートされ、それを動作制御式に変換する。この一連の工程は 魔法工学師(マギクラフト・マイスター) だからこそ出来るのであって、普通の 魔法工作士(マギクラフトマン) には不可能なのだが、仁がそれを自覚することはない。

「で、乗りやすいように鞍を付けて、と。……完成だ!」

小型馬(ポニー) が完成したので、同じ構造でもう一台、自分用のゴーレム馬を作る。大きさは少し大きくして、普通の馬の小さめの個体くらいに。大きいと乗り降りがしにくいという理由で。

「おにーちゃん、なに作って……おうまさん?」

ちょうど2台目が完成した時、ハンナが帰ってきた。

「やあハンナ、ちょうどいいところへ。いいだろ。こっちの小さい馬はハンナ専用に作ったんだ」

そう聞いてハンナの鳶色の目が大きく見開かれる。

「え? あたしのおうまさんなの?」

カイナ村で馬を持っているのは村長だけなのでその質問も当然か。仁は優しく笑って、

「ああ、そうだよ。ちょっと待ってて」

そう言ってゴーレム馬に向き直り、

「起動」

2台のゴーレム馬が起き上がる。そして仁は、自分用の馬に、

「そうだなあ……命名、『コマ』。お前の名前は『コマ』だ」

コマ。駒ということか。最早何も言うまい。そして次はハンナに向かって、

「ハンナ、こっちの馬に名前を付けてやってくれ」

「あたしが? うーん、じゃあ『みんと』!」

この世界にもある 香草(ハーブ) である。見た目が緑青色なので似合っているかも知れない。少なくとも仁のネーミングセンスよりマシだ。

「オーケー、命名『ミント』。お前の主人はこの子だ」

ミントはハンナを見て頭を下げた。理解したようだ。

「よし、ハンナ、それじゃあ乗ってごらん」

「え? あたし、おうまさん乗ったこと無いよ?」

「大丈夫。馬より簡単だから」

そう言って仁はハンナを『ミント』に乗せる。 小型馬(ポニー) なので慣れればハンナも1人で乗れそうだ。

「そうそう。その『 鐙(あぶみ) 』に足を乗せて。うん、そんでこのハンドルを持って」

「え? なにこれ?」

ゴーレム馬、その首の付け根から突き出した物。それはどう見てもバイクのハンドルである。そう、仁はバイクの操縦法を馬ゴーレムに応用したのだ。

おっかなびっくりミントに跨ったハンナに、仁は基本的なことを教えていく。

「右手がアクセルって言って、ひねると動き出すからね。止まりたい時はひねったアクセルを戻して、ブレーキレバーを握るんだ。で、曲がる時はハンドルを左右に曲げると、曲げた分だけ馬も曲がるから」

そう教えた後、自分も『コマ』に跨り、

「じゃあ歩かせてごらん。大丈夫、俺も一緒に行くから」

最初は、馬が暴走しないよう、 制限(リミッター) を掛けてあるので、ミントが暴走することはない。

「う、うん」

そーっとアクセルをひねるハンナ。それにしたがってミントはゆっくりと歩き出す。

「わあ、動いた!」

ぱかぱかと馬独特の動きで『ミント』は歩き出した。仁も『コマ』で付いていく。

「上手い上手い。もう少しアクセルをひねってごらん」

「うん」

すると、 常足(なみあし) だったミントは速度を上げ、 速歩(はやあし) となった。今の設定ではこれが最高速だ。

「わあ、おもしろーい!」

鞍と 鐙(あぶみ) の安定感によって、ハンナは危なげなくミントを乗りこなしていた。仁も一安心である。