軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10-20 依頼

ゴーレムの製作依頼に対し、条件がある、と言った仁に対し、王女は大きく頷く。

「うむ、当然じゃな。対価か? 手間か? この仕事は 妾(わらわ) ではなく、父王に奏上するからの。何でも言うてくれ」

「いえ、大したことではありません。我々の身柄を拘束しないと約束して貰えれば、それで」

それはもちろん、と王女は名誉にかけて約束した。ジェシカとグロリアも同様だ。

「お主に敵対されたら国が滅びそうじゃ」

と冗談めかして笑う王女であったが、それが冗談ではないことを知る者はこの場にはいない。エルザですら蓬莱島の真の実力は把握してないのだから。

「それでは、済まぬがこの後、また王城へ来てくれぬか?」

「仕方ないですね」

諸条件を考えると、一旦カイナ村に帰るという選択肢は採れそうもない。どこへ行くつもりだ、とか尋ねられたら答えに窮するからだ。

老君に伝えれば、何らかの方法でカイナ村にちゃんと伝えてくれるだろう。

「エルザ、ハンナ、帰るのが1日2日伸びそうだが、いいかな?」

仁は済まなそうな顔をして2人に聞いた。が、エルザもハンナも笑って諒承する。

「ジン兄が決めたことだから」

「またおうじょさまのところ? いいよ!」

それを聞いて仁も安堵した。

「では、また馬車に乗ってくれ。……グロリアは済まぬがここで賊を見張っていてくれ。すぐに人を寄越す」

「はっ」

* * *

再び馬車に乗り込んだ仁たちは、先ほど出てきた離宮へとんぼ返り。

客室に通され、お茶を出されて待つ事30分。

その間に仁は、礼子から老君へ、事情をカイナ村に説明しておくよう指示を出した。

おそらく老子もしくはバトラーを使うなりして、カイナ村に連絡を入れるだろう。

それが済んだ時、エルザが質問をする。

「ジン兄、私も聞きたいことがある。さっき、ハンナちゃんを助けた黒いゴーレム、あれはなに?」

「そうそう、おにーちゃん、あたしもしりたい!」

いつかは聞かれると思っていたので、仁は簡単に説明する。

「普段は姿を見せないが、いつもそばに付いている守護ゴーレムだよ」

「ふうん! そうなんだ。ありがと、おにーちゃん」

ハンナはその説明で納得したようだが、

「姿を消せるの?」

エルザはその辺が気になったようだ。

「ああ。礼子も使ってるだろう? 隠身(ハイド) の魔法の上級版さ」

「なるほど。……わかった」

それに対して仁が何かを言おうとした時、礼子が仁の袖を引いた。

「礼子?」

「お父さま、カイナ村が大変です。たった今、徴兵の命令が届いたそうです」

「何だって!?」

仁は思い出した、確か、4月21日だったと思うが、クライン王国が非常事態宣言を出し、領地を持つ貴族に軍を編成するよう命を下したという情報を、老君を通じて聞いた事を。それが今ごろになって……。

唯一の救いは、戦争が終わっていると言うことである。

「おにーちゃん……?」

大変だ、という言葉を聞いたハンナは心配そうな顔。エルザも同様である。

そんな2人に仁は、状況を説明する。

曰く、戦争は既に終わっているから、徴兵されたとしても危険はないこと。

そして、すぐに解放されるだろうと言うこと。

それを聞いてハンナは安心した顔になった。

「だが、俺がここにいると言うことをもっと上手く利用出来るよな……」

仁が何事か考え始めたその時、ドアが開いてリースヒェン王女が入って来た。

「ジン、喜べ! これから父王が会うと言ったぞ!」

「え?」

一瞬躊躇ったが、王が直接会ってくれるなら手っ取り早くいろいろ要求出来る、そう思った仁は立ち上がった。

「あ、それから、妹御たちはすまぬがここで待っていて欲しい。……安全は保証する。何もせぬ」

別に仁は何も言っていないが、心理を読んだかのように王女は仁の背中を叩いてそう言った。人質として仁を脅すような事はしない、と言外に匂わせたのだ。

「お主を敵に回すような真似はせぬ。 妾(わらわ) の誇りにかけて」

それで、仁は礼子だけを連れて離宮から王宮へと向かった。付き従うのはジェシカ。先ほど戻ってきたばかりのグロリアはハンナ達に付いていることになった。

屋根付きの渡り廊下のような通路があり、歩いて5分ほどで王宮の敷地内である。

更に5分ほど歩いて、立派な扉の前まで仁はやって来た。

「ここが父王の執務室じゃ。今は宰相が一緒におる」

そう言ってリースヒェン王女はジェシカにドアを開けさせ、仁を連れてきた旨を告げた。

部屋の中から入れ、という声がかかり、王女は仁を促して入室した。礼子は影のように仁に寄り添っている。

「父上、エゲレア王国 名誉魔法工作士(オノラリ・マギクラフトマン) 、ジン殿を連れてまいりました」

「うむ」

重厚な木製の執務机、その向こう側にクライン王国国王、アロイス3世が座っていた。

王女は仁に名乗るよう小声で囁いた。

「ジン・ニドーと申します。これは 自動人形(オートマタ) の礼子です」

仁は頭を深く下げる。礼子は横で佇んだまま。 自動人形(オートマタ) に礼儀を期待してはいないと見え、誰も何も言わなかった。

「クライン王国国王、アロイス3世である」

国王、アロイス3世が名乗る。

アロイス3世は当年50歳、175センチ、75キロというがっしりした体躯をしている。

リースヒェン王女と良く似た色をした焦茶色の髪。目はグレイで厳しさを湛えている。

その右横に立っているのはやせぎすの中年男性。左横に立つのはいかにも武人という雰囲気を纏った筋骨隆々とした男であった。

「宰相のパウエルだ。そちらは近衛騎士団長のグレン・ダブロード」

宰相は会釈をしたが、グレン・ダブロードと紹介された男はわずかに顎を引いただけ。

だが仁はそんな些事に頓着するような性格はしていない。というか、騎士団長など歯牙にも掛けていない。

そしてしばらく沈黙が流れた。

間に立つ王女がたまりかねて何か言おうとした時、ようやくアロイス3世が口を開いた。

「……ようやく会えたと思ったら、エゲレア王国のものになっていたとはな」

「は?」

「まずは済まなかった。誤解だったとはいえ、そなたをカイナ村から追い出すような結果になったことを詫びよう」

そう言って、アロイス3世は軽くではあるが、間違いなく頭を下げた。慌てたのは宰相と近衛騎士団長。

仮にも1国の王が、 名誉魔法工作士(オノラリ・マギクラフトマン) とはいえ、庶民に向かって詫びを入れ、あまつさえ頭を下げたのである。

「そなたはポンプを作り、コンロを開発し、納税の邪魔をしたゴーレムを撃退した、それに相違ないな?」

「……はい」

仁は頷かざるを得ない。ポンプについてはリシアのみならず、グロリアにも知られているわけであるから、誤魔化すだけ無駄だ。

「やはりな。リシア・ファールハイトからそなたのことは聞いていた。 王国魔法工作士(ロイヤルマギクラフトマン) として迎えたかったのだが、不幸な手違い、いや、こちらの不手際で、迷惑を掛けてしまったな」

ワルター伯爵が、まるで罪人のように仁を連行しに来たことを言っているのだろう。

「その結果、エゲレア王国へ行っていたのか。風の噂に聞いていた、ゴーレムが暴れる騒動があったそうだな? その時に大活躍した 魔法工作士(マギクラフトマン) とそのゴーレムがいたと聞いている」

そこでリースヒェン王女が補足を入れた。

「父上、 妾(わらわ) はジンの口から聞きました。その時に活躍したのがそこにいるレーコという 自動人形(オートマタ) であるということも」

「ほう、やはりな。見た目は可憐な少女だが、途轍もない力を秘めているというわけか」

感心した顔で礼子を眺める国王。その視線を受けても礼子は平然としている。

「礼を言う、レーコ。リースより聞いた。先ほどは、この都市を襲わんとする賊50名とゴーレム1体を無力化してくれたそうだな」

そう言われた礼子は初めて口を開いた。

「私はお父さまの命に従っただけです」

「うむ、その点についてはジンにも感謝しておる」

そして国王はいよいよ本題に入った。

「ジン殿、その手腕を生かして、我が国に高性能なゴーレムを作って欲しい。もう気が付いているかも知れぬが、人手不足、人材不足でな。ようやく先日、隣国フランツ王国との紛争が終わったのだが、やはり人材不足は否めなかった」

そして宰相に目配せする。宰相は軽く頷き、手元のメモに目を落とすと、

「報告によると、鋼鉄100トン、青銅100トン、軽銀25トン、アダマンタイトとミスリル少々、等がとある筋から提供され、テトラダからこちらへ輸送されている途中だ。明日か明後日には到着するだろう」

そこで仁を見て、

「つまり、それに相当する素材を使っても国の備蓄には響かないと言うことだ」

と締めくくる。だが、仁はそれが正確ではないと言うことも知っている。なぜならば、運搬中の資材の一部はクライン王国兵士達の武装だった金属なのだから。

そこでまた王が話を引き継ぐ。

「そこで、ジン、そなたに頼みたいのは、鋼の剣100振りと、戦闘にも耐える汎用型のゴーレム20体の製作だ」