軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

09-32 戦場

「お父さま、行ってまいります」

「礼子、頼むぞ」

「はい!」

「コンドル1、タイタン2、発進します」

礼子が操縦するタイタン2を乗せ、コンドル1は空へ浮かび上がった。そのまま、研究所裏手、蓬莱山側を整地して建造した巨大 転移門(ワープゲート) へと向かう。

「俺はここから指示だな」

研究所内の司令室へと仁は向かった。

* * *

「陛下、殿下、こちらへ!」

アスント城3階では激しい攻防が繰り広げられている。

王族を狙い、3体のゴーレムが進んでくる。

それを防ごうと、近衛騎士隊、近衛魔導騎士隊が駆けつけてきていた。

ロッテはトレイを手に、そしてモップを背負った姿で王子を守っている。

「『 風の一撃(ウインドブロウ) 』!」

風系の魔法を立て続けに放ち、迫り来るゴーレムを押し止めているのは近衛魔導騎士隊のアイリ・ソリュース。

室内では炎系、雷系は味方への影響があるため、風系を多用している。が、風系の魔法はゴーレムにはあまり効果が無いのも事実。

質量の大きな相手に有効なのは 風の一撃(ウインドブロウ) くらいで、それにしても押し止めるのが関の山であった。

城の外では、空飛ぶ球からの攻撃がなされ、半数の兵士達はその対処に追われていた。

「ライラ、手伝いなさい!」

風の一撃(ウインドブロウ) を立て続けに放ったため、アイリの息は荒い。

同僚達は 風の弾丸(ウインドバレット) で攻撃しているが、明らかに威力不足である。

「で、でも、姉さま、あたし……」

「いいから! 四の五の言わずにやるのよ! こんな時にやらなくてどうするの!」

なおも尻込みするライラに、後方からアーネスト王子が声を掛ける。

「ライラ、頼むよ。僕や父上では威力のある攻撃魔法は使えないんだ。女の子である君に頼るのは情けないと思ってるんだけどね」

「殿下……」

王子にそうまで言われて引っ込んでいるわけにはいかない。心を奮い立たせたライラは足を踏み出した。

* * *

夜明け前。まだ日が昇る時刻には早く、あたりは闇に沈んでいる。

セルロア王国とフランツ王国の国境に位置する巨大湖、アスール湖。その長径は100キロを超え、最大水深は約300メートル。その深みから浮かび上がる人工建造物。

直径70メートルはある球形の建造物である。

水面に浮かび上がると同時にその巨大な上部ドームが開く。その中心にはこれまた巨大な 転移門(ワープゲート) が鎮座していた。

転移門(ワープゲート) が作動。そこに転移されてきたのはやはり巨大なゴーレムとそれを運ぶ航空機。

「お父さま、予定通りアスール湖に到着。これよりテトラダへ向かいます」

アスール湖中心部からクライン王国テトラダまでは直線距離で約120キロ。タイタン2を乗せたコンドル1の最高速度は時速100キロほど、1時間と少しで着ける筈だ。

ほぼ同時に、ラプターとファルコン隊も到着する予定である。

* * *

テトラダの城壁上では死闘が繰り広げられていた。

片や、テトラダを死守せんと奮戦するクライン王国第3騎士団。片や謎の勢力が送り込んできたゴーレムである。

「『 火の弾丸(ファイアバレット) 』!」

騎士団の魔導士達が魔法で牽制するが、謎のゴーレム2体は左手の小型盾で楽々防いでしまう。

「くっ、対魔法の盾か!」

ここは城壁の上、魔導騎士隊が駆けつけてくるにはあと数分かかりそうである。その間に2体のうち1体でも城門に取り付かせたら負けだ。

「突撃! 何としてもゴーレムを止めるのだ!」

副団長、ニクラス・ファールハイトは叫んだ。その号令に従って、騎士5名が突撃する。が。

「ぎゃあっ!」

「ぐわああっ!」

「があ!」

空飛ぶ球から放たれた雷魔法 落雷(サンダーボルト) により5人とも地に伏してしまった。

「い、いかん!」

その隙にゴーレムの1体が城壁から下へ降りる階段に取り付いてしまった。

「くそっ! 『 炎の槍(フレイムランス) 』!」

最後の手段として、ニクラスは自分に放てる最大の炎魔法を放った。その目標はゴーレムではなく、階段。

石造りの階段は 炎の槍(フレイムランス) により砕け散った。

いかにゴーレムとは言え、その重量のため、高さ8メートルの城壁から飛び降りることは出来ないだろうという心算である。

だが、その目算は外れてしまった。命を持たないゴーレムはその巨体を踊らせ、飛び降りたのだ。

8メートルといえば、人間であれば絶対に無事には済まない高さである。

轟音が響き、石畳の石が砕けて飛び散った。ゴーレムは、下半身を歪ませながらも起き上がった。だが足首は折れ、膝はおかしな方向に曲がっている。最早まともには動けないだろうことは誰の目にも明らかだ。

だが、ゴーレムの役目は城門を開けること。それには魔法の一撃で事足りる。

「下にいる者ども! そのゴーレムを城門に近づけてはならぬ!」

声を限りにニクラスは叫ぶ。城門を守る兵士10名がゴーレムへ武器を向けた。

「ぎゃあああ!」

「ぐあ!」

下へ注意を向ければ、空からの魔法攻撃が放たれる。空に注意を向ければ、城壁上に残ったもう1体のゴーレムが攻撃してくる。

「くっ、空からの攻撃がこれほど厄介だとは!」

おそらく今まで誰も考えたことがなかったであろう、空からの攻撃。ニクラスはそれを身を以て体験していた。

空からの援護を受け、ゴーレムは身体を引きずりながらも城門に辿り着いた。そして無事な右手を門に向けると魔法を放つ。

それはニクラスが放ったのと同じ 炎の槍(フレイムランス) 。だが威力が桁違いであった。

ニクラスの 炎の槍(フレイムランス) より10倍はあるであろう炎が城門を叩く。

青銅のかんぬき、鉄の蝶番が吹き飛んだ。

そして城門はゆっくりと外へ向かって倒れていったのである。

それは城塞都市テトラダの敗北を意味していた。

* * *

エゲレア王国の都市、ストリアル。そこにはブルウ公爵とクズマ伯爵が手勢を引き連れてやって来ていた。首都アスントの防衛をするためである。

ブルーランドはガラナ伯爵に任せてきた。

「亡き父上もセルロア王国と戦っておられた。ならば自分も国のため、同じように戦う!」

婚約者ビーナの心配そうな顔が浮かぶが、クズマ伯爵は国の危機に私情を捨て、参戦していたのである。

「明日夜にはアスントに着けるであろう」

出発準備をしながらブルウ公爵がそう呟いた、その時である。

ふと空を見上げたクズマ伯爵は、何かが太陽の前をよぎった気がして目を凝らした。

「何だ?」

鳥ではない、何か。それが高い空を一塊になって飛んでいく。その向かう先は首都アスント。

だが、不思議と不吉な予感はしなかった。

* * *

「城門が開いたぞ!」

「よし、第1、第2中隊は……」

フランツ王国軍の攻撃が始まろうとしたその時。

巨大な影が日を遮った。

見上げれば、不思議な物が浮かんでいる。

4つの輪が正方形に配置され、それらを十文字に繋ぐ構造物から綱が2本下がり、横板を支えている。そしてその横板には見たこともない巨大なゴーレムが乗っていたのである。

ゆっくりと降下してきた不思議な飛行物体に乗ったその巨大ゴーレムは、フランツ王国軍と都市テトラダ、その双方を睨み据える位置に今、降り立った。