軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

09-13 捜索

「うーん、ブルーランドにもいないらしいな……」

仁のいる蓬莱島ではまだエルザを捜していた。

「ミーネに何て言おう……」

今は蓬莱島で8時。崑崙島との時差は約1時間。向こうは7時、そろそろ帰らないとおかしい時刻だ。

「まあ、正直に言うしかないか……」

以前のミーネが脳裏に焼き付いているので、怒鳴られる結果しか想像できない仁である。

それでも仁は崑崙島へ跳び、ミーネに会う。

「ジン様、エルザが遅いようですが、何かあったのですか?」

心配顔のミーネを見て、仁の腰が引ける。が、気を引き締め直して、

「エルザが……行方不明になってしまったんだ」

と正直に話す仁であった。

「え? 行方不明? エルザが? 何があったんですか?」

有り難いことに、ミーネは逆上することも仁に掴み掛かることもなく、その事実を受け入れた。もちろん心配そうに顔を歪めて。

「実は……」

仁は推測も交えて、これまでのことを説明する。一通り聞いたミーネは、ぽつりと呟く。

「あの子は……きっと好奇心で 転移門(ワープゲート) を覗いていたんじゃないかと……」

それはかなり的を射た推測だったがそれで現状が変わるわけでもない。

「とにかく、全力で捜しているので、心配しないで……というのも無理だろうけど、あまり心配しないでいてほしい」

と、仁。台詞が若干支離滅裂気味なのは致し方ないところだろう。

「ええ、ジン様はあの子と私を助け出して下さった方。その方がまたエルザを捜して下さっているんです、信じてます」

そう言われた仁はプレッシャーを感じたが、それを顔には出さず大きく肯いて、

「任せといてくれ」

そう言って崑崙島を後にしたのである。

「ごしゅじんさま、エルザさんはどうして転移できたんでしょうね?」

アンが質問してきた。質問というか、原因を見つけるための確認のようなものだ。

「うーん、認証が上手く働かなかったか、あるいは……」

「ごしゅじんさまの魔力を帯びた何かを持っていたんですね」

それを聞いた仁ははたと手を打った。

「そうだ、それに違いない! 何でもっと早く思いつかなかったんだろう」

エルザがいなくなってパニックになっていたとしか思えない。

反省しつつ仁は老君に指示を出す。

「老君、前にエルザを捜したように俺の魔力……」

その指示が尻すぼみになった。

「 御主人様(マイロード) 、どうされました?」

老君が怪訝そうに尋ねた。仁はわかった、という顔で、

「そうか、多分そうだ! エルザは俺がプレゼントしたブローチを付けていたんだ! そうだな、礼子?」

仁は基本的には人の服装にはあまり頓着しない。自分の服装にも、だ。

「ええと、そうですね、確かに胸にブローチを付けていたと思います」

礼子もあまり気にしていなかった。似たもの父子と言ってもいいかもしれない。

まあ礼子の場合は仁以外の人間への関心が薄いだけかもしれないが。

「老君、まず間違いなさそうだ。前にエルザを捜した時と同じブローチ。それを目標に捜してくれ」

「承りました」

老君は 魔力探知機(マギレーダー) を用い、エルザの捜索を開始した。

探査ポイントは、 転移門(ワープゲート) を設置してある場所。

ポトロック、ブルーランド、第8砦跡、そして……。

「 御主人様(マイロード) 、カイナ村にて反応あり」

老君が探査を開始して約30分後、発見の報告が入った。

「カイナ村だったか!」

とりあえず危険な場所でないことに安堵する仁。

「きっと不用意に外に出て、結界に阻まれて戻れなくなったんだな」

この手の結界の特性として、中から出ることは容易いが、外から中へは入れないことだ。主に発動する魔力の流れに関連するのだが詳しくはここでは説明しない。

「それにしても、カイナ村か……」

仁はふ、と遠い目をする。

「カイナ村を出たのが確か去年の12月で、今は4月だからだいたい4ヵ月か……」

長いのか短いのかわからない4ヵ月。その間にいろいろなことがあった。いやありすぎた。

エゲレア王国の 名誉魔法工作士(オノラリ・マギクラフトマン) という称号を得た今、カイナ村に戻ってもおいそれと危害を加えられることはないだろう。

だが、村に迷惑を掛けることだけはどうしても避けたい。

「とにかく明日の朝、行ってみるしかない、か」

だが、エルザも心配である。いくらカイナ村の人たちがいい人ばかりと言っても心細い思いをしていないだろうか。

そこで仁はカイナ村のゴンとゲン、そしてハンナ専用 隠密機動部隊(SP) に連絡を取った。

『はい、イリスです』

隠密機動部隊(SP) のイリスが代表で応答した。仁はエルザ失踪の話を簡単にし、最後にエルザがそっちへ行っているはずだが見かけたか、と尋ねた。その答えは、

『はい、その人と思われる女性でしたら確かに来ています』

であった。

『村長のギーベック氏の家に、エルザと名乗る16、7歳の女性が滞在してます。髪はプラチナブロンド』

エルザに間違いなかった。

『バーバラという村長の姪に歓待されているようです。ハンナちゃんも一緒です』

それを聞いて安堵する仁。

「わかった。明日、俺が迎えに行く。それまでハンナはもちろん、エルザに何事もないよう、気をつけていてくれ」

『はい。ゴンに家周辺を警備させましょう』

それで連絡は終える。

今は蓬莱島時間で午後9時過ぎ。カイナ村との時差は2時間と少しくらいであるから夜の7時頃。もう真っ暗である。家々はそろそろ眠りに入る時刻だ。

そんな時間に行っても仕方ない。と言うより迷惑だろうし、大騒ぎになりかねない。

仁は内心の葛藤をそんな風に落ちつかせた。そして礼子に話しかける。

「礼子、エルザは間違いなくカイナ村へ転移していた」

「カイナ村、ですか」

「ああ。明日、そうだな、現地時間で8時、なら大丈夫だろう。迎えに行こうと思う」

仁が決意を込めた顔でそう言った。

「お父さま、カイナ村にお帰りになるのですね?」

礼子が確認するように言った。

「ああ。少なくともみんなに無事な顔を見せて、後はそれからだ」

今の仁なら1国を相手にしても怖くはない。だが争いは避けたかった。そこがカイナ村であるから尚更だ。

「エゲレア王国 名誉魔法工作士(オノラリ・マギクラフトマン) の格好で行こうと思う」

一応の自己主張である。

「はい、私は桃花と 魔力砲(マギカノン) を持っていきます」

「いや、どっちもいらないから」

カイナ村にそんなものが必要だとは思えないし、必要にならないことを祈る。

翌日の再会に半ば不安、そして半ば心弾ませながら仁は眠りに就いたのである。

* * *

「じゃあ、エルザさんは 転移門(ワープゲート) の暴走で?」

こちらはカイナ村村長、ギーベック宅。時刻は夕方。

少し早めの夕食後、バーバラとエルザがおしゃべりをしている。大半はバーバラがいろいろ話し、エルザが答える、という構図ではあるが。

「ん。暴走、とはちょっと違うかもしれないけど」

「そうなの? でも、 転移門(ワープゲート) 、か。そう言う事ってよくあるのかしら?」

「え? どういう事?」

怪訝そうな顔のエルザにバーバラが説明をする。

「去年も、 転移門(ワープゲート) の暴走で飛ばされてきた人がいたのよ」

それを聞いたエルザは少しドキッとした。

「そ、それで、その人は?」

「もうここにはいないの。誤解だったんだけど、この辺の領主、ワルター伯爵にあらぬ疑いを掛けられたので村を出て行っちゃったのよ。もう誤解は解けてるんだけど、それきり戻って来ないから伝えようがないし」

「それでその……」

エルザが何か言いかけた時、ギーベックがやって来た。横には小さな女の子が。

「あら、ハンナちゃん、どうしたの、こんな時間に?」

もう午後5時近い。バーバラがそう尋ねたのも無理はない。

「あのね、エルザおねーちゃんが気になって」

「私?」

少し驚いた顔でエルザはハンナの顔を見た。

「うん。1人でこんなところへ来ちゃって寂しいんじゃないかなあ、って」

それを聞いたエルザは微笑む。

「ありがとう。……ハンナちゃん、ね?」

「うん、あ、そうか、おねーちゃんにあたし、名前おしえてなかったね、ごめんなさい」

そう言ってハンナはぺこりと頭を下げた。それを見てエルザはふふっと笑う。

「いいの。ハンナちゃんのおかげで私、助かったから」

そう話す2人だったがバーバラが椅子をもう1つ持ってきて、

「ハンナちゃん、ここにお座りなさいな。今エルザさんにいろいろ聞いていたの。ハンナちゃんもお話しするでしょ?」

と言った。ハンナは元気に肯く。

「うん!」