軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

08-13 仁の怒り

「警備3名、無力化」

「表門歩哨2名、無力化」

砦の周辺を警戒していた3名と、入り口を守っていた2名をあっという間に無力化する。手段は『 麻痺の杖(スタンロッド) 』や『 麻痺(スタン) 』と同じである。

皮膚に直に当てる時は50万ボルト、厚い革の服が相手なら最高で約500万ボルトを発生させる。

隠密機動部隊(SP) 、別名忍者部隊のゴーレム達は杖が無くとも自らの手で電撃を放ち、麻痺させることが出来るのだ。

「裏門歩哨2名、無力化」

消身(ステルス) で姿を消し、人間の数倍の力と素早さを持つ彼等の前に、砦の要員は1人また1人と無力化されていった。

「砦内にいる人数は32名。現在12名を無力化」

内蔵された 魔素通信機(マナカム) により、次々に礼子へと報告が入る。

「砦は地下3階、地上3階の構造の模様。材質は花崗岩。比較的新しい建造物」

建物の様子も逐一報告されていく。同時に蓬莱島の老子にも伝えられており、老子は独自に状況分析している。

「地下2階にエルザと思われる反応有り」

「地上2階に砦の首領と思われる存在」

「現在19名を無力化。そろそろ気付かれる可能性有り」

「よし、エルザの保護を最優先しろ」

「了解」

* * *

「どうした? 何があった!」

「わかりません! 歩哨が消えました! 警備に当たった者も戻っていません!」

「敵襲か?」

「一切不明です!」

「よし、第1級警戒態勢だ!」

* * *

「……?」

騒がしさでエルザは目を覚ました。

「なに、かあった、の?」

その時、2名の黒覆面が階段を降りてきた。

「いるぜ」

「ああ、こっちは異常ないな」

牢の中にエルザがいるのを見てそんなことを言い合っている。その1人が、そしてすぐにもう1人が崩れ落ちた。

「?」

何が何だかわからないでいるエルザの前に、2体のゴーレムが姿を現す。

2体とも女性型で、エルザと同じくらいの背格好だ。その片方が声を発した。

「エルザさん、で間違いないですね?」

「あ、はい」

それを聞いたもう一体は、ここにはいない誰かに報告をしているようだった。

「エルザさん発見、大きな怪我はしていない模様。牢に入れられており、これより救出開始」

女性型のゴーレム、その1体が牢の鉄格子に手を掛けたかと思うと、太い鉄棒を曲げてしまった。

「す、ごい」

人1人が十分通り抜けられるほどに曲げられた格子からそのゴーレムは中に入ると、

「失礼します」

そう言ってエルザの両手両脚を拘束している拘束具をねじ切ってしまった。だが、

「そのチョーカーはチーフでないと外せそうもありません、もうしばらくご辛抱下さい」

「え? チー、フ?」

「はい。私たちを造って下さった方」

「その、ひと、って、もしか、して」

「二堂仁お父さまです」

「ジン、くん……」

エルザの両目から涙が溢れた。仁が、自分を見捨てないでいてくれた、その事実を知って。

「エルザさん、歩けますか?」

「だい、じょう、ぶ」

「それではこれをお付け下さい」

ゴーレムは腰部の小物入れから指輪を取り出しエルザに手渡した。それはエルザにはなじみ深いもの。

「これ、は」

初めて仁に貰った指輪、 保護指輪(プロテクトリング) 。何度もエルザを救ってくれた指輪だった。まだ目から涙を流しながら、エルザは指輪をはめた。

「さあ、行きましょう」

先に立って歩き出すゴーレムに、

「待っ、て、あなた、たちの、名前、は?」

仁のゴーレムならきっと名前があるはず、そう思ってエルザは尋ねた。

「私はカンナ。あちらはダリアです」

「カン、ナ、ダリ、ア。あり、がとう」

短くそう言ってエルザはカンナとダリアに続いて歩き始めた。

階段を登っていく。次の階に着いた時、先行するダリアの姿が消えた。

「ぎっ」

短い、くぐもった悲鳴が聞こえた。

左手に伸びる廊下の真ん中に消えたと思ったダリアがいて、その足元に2人の黒覆面が倒れていたのである。

「ころ、した、の?」

「いえ、気絶させただけです。チーフは人殺しがお嫌いなので」

更に階段を登ると、そこは広いロビーで、黒覆面が4人倒れていた。そして男性型のゴーレムが2体立っている。

「あれ、も?」

男性型ゴーレムを見たエルザが尋ねる。

「はい。エルムとアッシュです」

その2体も近づいて来て、

「エルザさん、ですね。お送り致します」

こうしてエルザはカンナとダリア、エルムとアッシュの4体に守られて 統一党(ユニファイラー) の支部である砦を脱出したのである。

* * *

「エルザ! 無事だったか!」

砦から数100メートル歩いた所でエルザは仁と再会した。

「ジン、くん……」

エルザは駆け出し、仁の胸に顔を埋め、大声で泣き出した。

「ジン、くん、こわ、かった……」

「エルザ……」

仁はしばらくエルザの背中を撫でていたが、エルザがようやく泣き止んだのでその肩を優しく掴んでその身体を離す。そしてポケットからハンカチを出すと、そっと顔を拭ってやるのだった。

「あり、が、とう」

いつもより更にたどたどしいエルザの声を訝しんだ仁は、その首に食い込んでいるチョーカーを見つけた。

「何だこれ?」

「魔、法、を、封、じ、る、首、輪」

それを聞いた仁の顔に怒りが浮かぶ。エルザは魔力過多症である。そのエルザの魔法を封じたらどうなるか。余剰魔力がエルザの身体を蝕むであろう。

「こんな物付けやがって」

怒りにまかせて仁はそのチョーカーを毟り取った。

「え?」

自分がいくら取ろうとしても取れなかったチョーカーがあっさりと外れてしまったことに面食らったエルザだが、まあ仁だから、と1人納得した。

そしてその仁は取り外したチョーカーを 追跡(トレース) や 精査(インスペクション) の魔法で調べていたが、

「魔法を封じるだけじゃない……! 治癒魔法の逆で、じわじわと身体に不調を起こさせるような 魔導式(マギフォーミュラ) が書かれてやがる」

と怒りをにじませた声で言うとチョーカーを握りつぶし、更に礼子に指示を出す。

「礼子、あの砦をぶちこわすぞ」