軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

07-14 遺跡への潜入

それから馬車の中で昼食。執事のクロードは遠慮して外で食べている、何となく申し訳無いが、どう説得しても頑として聞き入れないのだから仕方ない。

昼食は用意してきたパンや果物。そして仁がここぞと出してきたのが魔法瓶だ。

「あ、熱い。なんで?」

魔法瓶から注がれた お茶(テエエ) が熱さを保っていたのに驚くエルザ。仁は笑って、

「それは『魔法瓶』ていうんだ」

と説明する。

「魔法、つかってるの?」

エルザが小首をかしげて尋ねる。

「いや、魔法使ったように冷めにくいから魔法瓶っていうだけで、特に魔法は使っていないよ。もっとも、浄化の 魔導式(マギフォーミュラ) は入れてあるけどそれは保温とは無関係だし」

「なら、なんで?」

「うん、僕も興味があるな」

エルザだけでなくラインハルトも興味を示したので、 お茶(テエエ) を飲みながら説明しようと、仁は座り直した。

「これも俺の先生から教わったことなんだけど、熱の伝わり方には3種類あるんだ」

と始める。ラインハルトもエルザもじっと聞き入っている。

「まず伝導。熱が物を伝わることだ」

「うむ、銀のスプーンで熱いスープを飲もうとすると、すぐに柄が熱くなるな」

ラインハルトはすぐに飲み込んだようだ。

「次は放射。火に手をかざすと暖かいよな?」

との問いかけに今度はエルザが返事をする。

「ん。離れていても暖かい。あれがほうしゃ、ということなの?」

仁はそう言ったエルザに肯きかけ、3つめを口にする。

「3つめは対流。空気や水が温まると軽くなって上へ昇る、冷たい空気は重いから下へ下がる。これを繰り返して空気が循環するのが対流だ」

「なるほど、寒い部屋で火を焚くと、天井は暖かいが床は冷たい、あれがそうか」

とラインハルトが言えば、エルザも経験を口にする。

「おふろ。沸かし損なうと、上だけ熱くて下は冷たい」

仁は手を叩いて、

「その通り。2人ともすごいなあ」

と褒め称えた。

「で、この魔法瓶は、瓶の壁が中空構造になっていて、中の空気が抜いてあるんだ。そうすると、対流と伝導によって逃げるはずの熱が逃げない。それに金属なので放射熱も反射して中に閉じ込める」

と仁が言えば、ラインハルトは顔を輝かせて、

「だからなかなか冷めないんだな! すごい、ジン、それは何と言う学問だい?」

と興奮気味。

「『科学』さ。世の中のあらゆる現象を説明しようとする学問だ」

そう仁が説明すると、エルザも珍しく顔をほころばせて、

「いまわかった。ジン君がすごいのは、ひとつにはそのかがくを知っているから。だからジン君の作る魔導具はみんな理にかなっている」

と言った。仁は肯いて、

「エルザ、その通りだよ。俺が先生から学んだ科学は、先生がその先生から、そしてその先生もそのまた先生から、というわけで何千年も続いてきた学問なんだ」

と、そう説明。

「うーむ、僕もジンの先生に教わってみたかった!」

とラインハルトが悔しそうに言った。先生について根掘り葉掘り聞かなかったのはラインハルトなりの仁への気遣いだったのかもしれない。

* * *

夜となった。

時刻を知らせる月は中天に懸かろうとしている。すなわち真夜中前。

「さて、行くか」

ラインハルトが小声で言った。

「うん」

仁も肯く。

「…………」

エルザはリクライニングさせたシートにもたれて眠っていた。それでラインハルトは執事のクロードに指示を出す。

「クロードはここでエルザを見守っていてくれ。僕とジンは遺跡へ行ってくる」

「はい、承りました」

護衛としては礼子が付いてくるので、クロードとしても心配はしていないのだ。まあ『 隠密機動部隊(SP) 』がこの馬車も陰から見守っているのではあるが。

昼間通った道とはいえ、夜は歩きにくい。用心のために灯りを点けずに歩いているから尚更である。ただ暗闇も関係ない礼子が先導してくれているので仁たちも気が楽だ。

そしていよいよ遺跡の入り口にやってきた。中からは灯しっぱなしなのだろう、魔導ランプの明かりが漏れている。

「礼子、人がいないかどうか見てきてくれ」

「はい」

仁の指示により、礼子は 消身(ステルス) で姿を消すと風のように遺跡の入り口に近づき、中を覗き込み、また音を立てずに戻ってきた。

仁にもラインハルトにも見えていたわけではないが。

「大丈夫です、誰もいません」

との報告に安心して2人は遺跡の中へ再び足を踏み入れた。

「さて、ジン、どこから始める? 多分君の方が詳しいだろうから君の指示に従うよ」

とラインハルト。小型とはいえ 転移門(ワープゲート) のある館に住んでいた仁であるからとの判断だ。

仁は少し考えてから答える。

「地下だな。重要な倉庫なら地下に作るだろう。そしておそらく隠蔽の魔法が掛けられているに違いない」

その答えにラインハルトも肯き、

「おそらくそうだろうな。しかし隠蔽の魔法、か。厄介だな」

と言った。だが仁は首を振ってそれを否定する。

「魔法で探知しようとするからいけないんだ」

「え?」

「壁の向こうに空洞がある時、叩くと音が違うだろう?」

「うむ」

「つまり、『 音響探査(ソナー) 』を使うのさ」

仁がそう説明するとラインハルトは感心し、仁の肩を叩く。

「なあるほど! それには気付かなかった! 早速やってみよう」

そこで仁とラインハルトは手分けして 音響探査(ソナー) の魔法を使い、壁と床を調べていく。

「ここには無いな……」

仁が次の壁に取りかかろうとした時、ラインハルトが大声を上げた。

「ジン! 来てみろ!」

「どうした、見つかったか?」

仁も急いでラインハルトの所へ駆けつける。

「ああ。この向こうだ」

それで仁も 音響探査(ソナー) で調べてみると、確かにその壁の向こうに大きな空洞があることがわかった。

「そうすると、次はどうやって向こうへ行くかだ」

土系の魔法で穴を掘ることも出来るが、跡が残ってしまうのは今後の事を考えると何かとまずい。

結局、外部から別の穴を掘ることにした。

一旦外に出る。見張っていた礼子を連れ、50メートルほど離れた所へ。

「よし、この辺から掘るか」

岩の出っ張りで外から見えにくい場所を選び、いよいよ工事開始だ。

「『 掘削(ディグ) 』」

仁が穴を掘り、

「『 硬化(ハードニング) 』」

ラインハルトが壁を強化して崩れにくくする。

出た岩屑は礼子が遠くへ捨てに行った。

そうして約1時間、ついに穴が貫通した。

「やったぞ!」

穴の向こうには広い空間が広がっている。

仁とラインハルトは慎重に足を踏み入れた。