軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06-23 遊戯

いろいろと騒がしかった日も暮れ、夜となり、また朝が来た。

この日はエゲレア王国第3王子であるアーネスト・リルム・アンドリュー王子の誕生日である。

午前中、城外からはゴーレム 園遊会(パーティー) に参加しない貴族達もぞくぞくと入城し、警護の兵士と相まって騒がしい。

そんな様子を仁達つまり仁、礼子、エルザ、ビーナは遠くから眺めている。

クズマ伯爵とラインハルトは正式に誕生会に出るためここにはいない。

「あーあ、退屈ね」

ビーナがぼやき、

「……同感」

エルザも同意する。仁も退屈なのは同じだったので、

「何かゲームでもするか」

「 遊戯(ゲーム) ?」

仁はちょっと考える。手軽に作れて大勢で楽しめて、慣れや技術がいらないゲームはなんだろうかと。

そして思い当たったのが双六である。

「よし、ええと、このテーブルでいいか」

「何するつもり?」

今いるのはエルザの部屋。単純に一番広いからである。同時に家具調度もいろいろ揃っていた。

仁はその中から60センチ四方くらいの大きさをもったテエエテーブル(お茶用のテーブル)を選び、

「 表面処理(サフ・トリートメント) 」

表面を白く滑らかにした。そしてそこへインクでマスを書いていく。

「なーに? スタート? ゴール?」

ビーナがのぞき込んでくる。基本的なマスを書き終えた仁は説明を始める。

「これは俺の知ってるゲームで双六って言うんだ。基本はこの 賽子(ダイス) を振って」

手早く工学魔法でサイコロを作り、転がしてみせ、

「出た目の数だけマスを進んで、最初にゴールした者が勝ち、と言うゲームさ」

「……簡単そう」

エルザが正直な感想を漏らす。そこで仁は、

「ああ、簡単そうだろ? でもここからが面白いんだ。いくつかのマスには条件を入れる」

「条件?」

そこで仁は説明する。

「一回休み、とか、3マス戻る、とかだな」

「なるほど。運次第というわけ」

「まあそうさ。よし、まずはこんなものでやってみようか」

というわけで、10マスに1つくらい条件が書かれた双六が完成。駒も仁が手早く作り、色も変えてそれぞれの持ち駒として、ゲームスタートである。

「3つ進む、と」

「出たー! 6つ進んで、ぎゃー! 『一回休み』!?」

「4つ」

初めてのゲームを楽しみながらゲームは進み、もうすぐゴールとなった。

「4出ろ4出ろ……あーん、2か」

「5が出ますように……あ」

ゴール手前の『20戻る』に引っかかって戻ったりもするので気が抜けない。

「やったー!」

年甲斐もなく(?)熱くなった仁が1位だった。

「あー、負けちゃったか。よーし、2出ろ2出ろ……やった! 2番!」

「……負けた。もう一回」

それなりに時間も潰せるこの双六は好評だった。

後ろで眺めていた 王宮隠密侍女隊(ロイヤルシークレットメイド) のライラとリーザ、それにケイトもやりたそうな顔をしていたので、2回戦目は彼女達も入れて行うことにする。

最初は仕事中ですから、と固辞していたが、お客を退屈させないのも侍女の務め、と理にかなっているようなそうでないような仁の説得により彼女達も参加する運びとなったのである。

「きゃー! 10マス戻るだって!」

「あーん、1回休みー!」

「6よ、出てー!」

なかなか姦しい。でもおかげで彼女達と少し打ち解けられたようだ。

その日は夕方ラインハルトとクズマ伯爵が戻ってくるまで双六で過ごした。

遊んだ後のテーブルは仁が可能な限り元に戻しておく。ライラなどはそれを見て未練気な顔をしていたが。

* * *

「さて、いよいよ明日がゴーレム 園遊会(パーティー) なのだが」

クズマ伯爵から注意事項について話がなされた。

「服装は正装、当然だな。ジンは 魔法工作士(マギクラフトマン) 用の上着をもっているらしいな。ビーナにも用意してあるからそれを着てくれ」

「え、あ、あたしにですか?」

クズマ伯爵はにこっと笑うと、荷物の中から品のいい臙脂色をした上着を取り出し、

「これを着て出席すればいい」

と言ってビーナに手渡した。

「あ、ありがとうございます!」

受け取った上着をぎゅっと胸に抱きしめるビーナ。それを見つめる伯爵の顔は心なしか少し緩んでいた。

「入城にも順があってな、まずは閣僚、そして城勤めの貴族、招待客、近郊の貴族、遠方の貴族、となる」

ラインハルトとエルザは招待客に当たるそうだ。

「最後が 魔法工作士(マギクラフトマン) 、ジンとビーナはここだな。王と王子への挨拶は貴族だけだから見ているだけでいい」

それは楽でいい、と仁は思った。正直、派手なパーティーは苦手である。

「ガラナ伯爵からも遠いから、ビーナは多分見つかる事は無いだろう」

そう言ってビーナを安心させる。が、エルザは若干口を尖らせていた。

「それで、会場には武器類一切の持ち込みが出来ないし、魔導具にも制限がかかる。レーコ嬢は入室できないだろうな」

「納得できません」

今まで黙って聞いていた礼子が口を開く。

「お父さまをお守りするのが私の使命であり存在意義です」

だが、

「こら礼子、心配してくれるのはありがたいが、今回は駄目だ。クズマ伯爵やラインハルトに迷惑がかからないようにしなくちゃいけない」

そう仁がたしなめると、渋々ながらも礼子は肯き、

「……はい、お父さま」

「で、でだ、ゴーレムを連れてきた貴族は順に王と王子の前に出て名乗り、ゴーレムに簡単な動作をさせてお披露目をすることになったのだが」

伯爵はそこで仁を見て、

「ロッテには何をさせたらいいと思う?」

と尋ねた。ロッテはメイドゴーレムであって、あまり派手な、いわゆるパフォーマンスは出来ないだろうとの思いからだ。

だが仁は、

「何かさせたい事ってありますか?」

と逆に伯爵に尋ね返したのである。

まさかそう聞かれるとは思わなかった伯爵だが、気を取り直すと、

「う、うむ、そうだな、ダンスとか、剣舞とかかな」

それを聞いた仁は、

「出来ますよ」

と答えたのである。

「そうですね……」

王宮隠密侍女隊(ロイヤルシークレットメイド) を順に見回して行く仁。ライラ……は飛ばし、リアンナで仁の視線が止まる。

「やっぱりリアンナさんに協力を仰ぐとしましょうよ」

「え? わたくしですか? 何をすればよろしいのですか?」

さっぱりわかっていないリアンナに対して仁は、

「まあ、お仕事のことを考えていて下さい」

そう言うと、礼子に命じて小さい 魔結晶(マギクリスタル) を取り出させ、

「 知識転写(トランスインフォ) レベル2」

「きゃあ」

「これでいいでしょう」

「な、な、なんなんですか、今の!?」

さすがの 王宮隠密侍女隊(ロイヤルシークレットメイド) 第2班班長も慌てている。

仁は単にリアンナの運動パターンをコピーさせてもらっただけだ、と説明するが、それを聞いてもリアンナは『?』となっただけであった。

倉庫に保管されているゴーレムに触れる事はまだ出来ないので、お披露目前の調整時間に行う事とし、その日は各自部屋へと戻ったのである。