軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35-19 歓迎会と望遠鏡

丸1日掛けて蓬莱島の案内を終えた仁。

「……な、なんだか色々常識が破壊された気がするわ……」

「す、凄いです、ジンしゃま」

シオンは疲れた顔をし、マリッカはぐったりしながらも目を輝かせていた。

「とにかく、君たちには『仁ファミリー』に入って欲しい。どうかな?」

「もちろんよ!」

「こ、光栄でしゅ」

2人とも快諾してくれた。

「そうか。ありがとう。これからもよろしくな」

「こちらこそよ、ジン」

「よ、よろしく、お、おねがいします……」

マリッカは緊張しっぱなしだが、人間に当てはめると10歳前後という年齢上、致し方ないだろう。

* * *

《連絡が途絶えたか》

《はい。あの『 意志を持つ操り人形(ライブパペット) 』は所詮使い捨て。やり過ぎて破壊されたのでしょう》

《情報を漏らすことはなかろうな?》

《もちろんです。こちらの情報は何も持っておりません。また、構造も旧型ですので、仮に解析されても痛くも痒くもありません》

《ならばよし。他に手は打っているのか?》

《もちろんです。同じ手は使いません。もう1つはもっと慎重に情報を集めさせています》

《それで?》

《はい。『コンロンクン』とかいう技師が、あの世界では持て囃されておるようです》

《『コンロンクン』?》

《そうです。『熱気球』を作り、どこの国にも属さず、『コンロントウ』とかいう島を根城にしているとか》

《他には?》

《各国の王族に取り入り、その発言力は大きいようです》

《『熱気球』以外の技術はどうなのだ?》

《『飛行船』を持ち、無敵の 意志を持つ操り人形(ライブパペット) ……いえ、奴らは 自動人形(オートマタ) と呼んでいますが……を持っているとか》

《潰す必要があると思うか?》

《いえ、野心はないようですので》

《ならば、もう少し調べ、必要があれば接触してみよ》

《わかりました》

* * *

「し、『森羅』氏族のシオンです。よろしくお願いします」

「お、同じくマリッカです。よろしくお願いします!」

蓬莱島では、シオンとマリッカが『仁ファミリー』に加わったということで、急遽全員が集められ、歓迎会が開かれていた。

「歓迎するよ。これからよろしく。ジンの力になってやってくれ」

「あ、ありがとう!」

ラインハルトも忙しい中駆けつけ、挨拶とお祝いの言葉を掛け、また帰っていった。

その代わりと言っては何だが、ベルチェは残って、特にマリッカの世話を焼いている。

「ほら、マリッカちゃん、これ食べてごらんなさい」

「は、はい。……あ、美味しいです」

「うふふ、ゆっくりお食べなさいね」

末娘であるベルチェは、妹ができたみたいでこの出会いを楽しんでいた。

「ほーら、ユリちゃん、ばーばですよー」

「だあ」

「マーサさん、私にも抱っこさせて下さい……」

「ああ、本当に赤ちゃんっていいわねえ」

一方、2人の娘、ユリアーナは、マーサとミーネ、それにミロウィーナに可愛がられていた。

人見知りしないユリアーナは女性陣から大人気である。

「……しかし魔族の子といっても、あたしたちと全然変わらないんだね」

マルシアは少し離れてシオンを見つめ、正直な感想を呟いていた。

「ああ。『魔導大戦』は悪意ある『デキソコナイ』が両民族を煽って起こした戦争だったからな」

「不幸な出来事だったというわけだね」

ロドリゴも横でしみじみと呟いた。

「ええ。だから、両民族の橋渡しをいずれできれば、と思ってますよ。それを我々ができたら、と」

「うんうん、ジンらしいね。その時はあたしも精一杯協力するよ!」

マルシアが明るい声で宣言した。

「ありがとう」

「……しかし、『オノゴロ島』の連中は何をしてくるかわからないね」

ルイス・ウルツ・クズマ伯爵が忌々しげに言う。

「もうすぐ大型の『 覗き見望遠鏡(ピーパー) 』が完成するから、そうしたら『オノゴロ島』を調べてやるさ」

仁が言うと、ステアリーナが反応した。

「ちょっと聞いたけど、透視できるんですって?」

「透視というか、壁の向こうを見ることができるんだ。プライバシーもへったくれもないから、普段は封印しておこうと思うけど、今回は特別さ」

敵を知り、己を知れば百戦危うからず、と仁が言う。

「相手の情報が少なすぎる。逆に奴らは、こっちの情報を得ているだろうしな」

魔法工学師(マギクラフト・マイスター) ジン・ニドー、もしくは『崑崙君』に関しては知られてしまうのは致し方ない。

「その場合でも、拠点は『崑崙島』だと思われているはずだ。そこに付け入る隙がある」

「なるほど。確かにそうだね」

崑崙島にはいろいろなダミー施設があるので、うまく騙されてくれるだろう。

「で、その『 覗き見望遠鏡(ピーパー) 』はいつ頃完成するの?」

「もうすぐさ。大変なのは、蓬莱島の地下100メートルの岩盤に直径10メートルの本体をセットしているから作業性が悪いんだ」

仁は、できる限り精度を上げるため、本体を大きくし、なおかつ歪みを無くしたかったと説明する。

「基盤部分はハイパーアダマンタイト。本体はマギ・アダマンタイトと64軽銀、それにマギ・インバーの複合材だ」

仁は、温度変化による変形や歪みをできるだけ減らすため、温度変化の少ない地下にセットしている、とも説明した。

『 御主人様(マイロード) 、設置完了しました。テストに入ります』

そう言っているうちに設置が完了した。大食堂の壁に設けられた 魔導投影窓(マジックスクリーン) が点灯する。

「おお、あれは!?」

『ラインハルトさんの『 蔦の館(ランケンハオス) 』です。ラインハルトさんには 魔素通信機(マナカム) で連絡してあり、ご協力いただいております』

その言葉どおり、ラインハルトの声も響いてきた。

『ジン、ベルチェ、聞こえているかい? 新しい魔導具のテストに立ち会えないのは残念だが、協力できたからまあよしとしよう』

手を振るラインハルト。蓬莱島と『 蔦の館(ランケンハオス) 』は経度で約80度離れているので、直線距離にすると1600キロくらいになる。

「よし、ぶれもほとんどないな。成功だ!」

「あなた、よく見えていますわ。ジン様の技術は素晴らしいですわ!」

『そうか、それはよかった』

ラインハルトは声のみが聞こえているはずだが、愛妻ベルチェから報告を受けられて満足したようだ。

『それではこのまま『オノゴロ島』の調査を開始しようと思います』

「よし、いけ」

魔導投影窓(マジックスクリーン) は一旦真っ暗になり、次いで青い海を映しだした。

『『オノゴロ島』はここ蓬莱島の真裏にありますので、現在午前6時となります』

映像は上から見下ろすようになっており、

『『 覗き見望遠鏡(ピーパー) 』の向きは自由に変えられます』

と老君から説明が入る。

任意の場所に『仮想のカメラ』を構成できる利点として、カメラの向きは自由に変えられるのだ。

今は上から見下ろすように設定されている。

そして大海原の中にぽつんと島が見えてきた。

周囲を三日月型の岩礁で囲まれた孤島、『オノゴロ島』だ。

いよいよ、その秘密のベールを剥がすときが来た。