軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35-05 発見

翌日は朝から実験実験また実験。

その結果、面白いことがわかった。

「小型化……いや、超小型化は転移魔法陣の方が有利なんだな」

一般的な 転移門(ワープゲート) は、あまり小さくすると、転移可能距離が短くなってしまうのだ。

具体的には、身長5ミリの『ミリ 職人(スミス) 』が利用するような大きさ……1センチ角では、せいぜい500メートルが限界であった。

一方、転移魔法陣は、直径1ミリになっても、転移距離に目立った減少はなかったのである。

「これはそれぞれの特性によるのかもな」

転移魔法陣はいうなればインパルス的な動作をするのに対し、 転移門(ワープゲート) はフラットな動作である。

それがまた、 自由魔力素(エーテル) の消費量の差に繋がっているのだろう。

「サキ、色々助かった」

実験結果をまとめながら仁が礼を言った。

「くふ、いいさ。ボクも楽しかったしね」

「あたしも勉強になったー」

ハンナもなぜかニコニコ顔である。そして質問も飛び出す。

「ねえおにーちゃん、魔導具って、熱を出さないの?」

「え……」

この質問は、魔導具が動作した際、効率の関係で利用しきれないエネルギーが熱になってしまうことはないのか、という意味であろう、と仁は判断した。

「そういう疑問が出てくるくらい、ハンナは勉強しているんだなあ。……普通の魔導具は『ほとんど』熱を出さないと言った方がいいかな」

魔導具が利用しているエネルギーは 魔力素(マナ) である。

利用しきれない 魔力素(マナ) は周辺の空間に放出されてしまうので、熱は発生しない。

多かれ少なかれ、魔導具はこうした利用し切れていない 魔力素(マナ) を周辺に放出する。

魔導士はそれをなんとなく感じ取れるし、 魔力探知機(マギレーダー) でも感知できるわけだ。

ただし、例外はある。メカニカルな動作部分がある場合だ。この場合は摩擦熱や変形に伴う発熱などの熱が発生することは避けられない。

これは、 魔導機(マギマシン) にも同じことが言える。ゆえに厳密に言えば、『わずかではあるが、熱が発生する』ということになる。

「ふうん、そうなんだ」

ハンナは納得したようである。

「お城の図書室には、あんまり魔法の本がないから知らなかった」

「ああ、そうか」

カイナ村には魔導士がいないので、魔法や魔法工学に関する本はほとんど置いていなかったのだ。

「でも、勉強しておくことは悪くないよな。わかった、今度増やしておこう」

「わーい、ありがとう!」

喜ぶハンナの顔を見て、仁も嬉しくなった。

その時、老君からの報告が入る。

『 御主人様(マイロード) 、『アドリアナ』から連絡がありました。ミスリル鉱床を発見したとのことです』

朗報だった。

「ジン、よかったね!」

「これで資材不足も解消だな」

だが、老君からの報告はそれのみに留まらなかった。

『早速採掘させておりますが、『モデヌ』は資源の宝庫です。軽銀、アダマンタイトも豊富です。ですので、出来る限りの採掘をしておくことをお勧めします』

「よし、わかった。『モグラ』全機……いや、この際だ、あと10機増産して送り込め」

『わかりました。ざっと計算してもその方が効率がいいでしょう』

これにより、蓬莱島の金属・鉱物系資材の備蓄は元に戻るどころか、100年分以上『増える』ことになるのである。

「これで心置きなく『護衛艦』の建造ができるな」

資材が減るどころか増えることになりそうなので、仁は予定していた100メートル級宇宙船の建造を開始することにした。

基本は『アドリアナ』と同じだが、居住区などの人間用設備は減らす方向だ。

搭載する宇宙船も、直径10メートルの『偵察用宇宙船』ではなく、もっと小さいものをと考えている。

「艤装はおいおい、だな」

直径100メートルともなると、艦殻の建造にも時間が掛かるのだ。

まして、多重構造であるから、尚更である。

とはいえ、蓬莱島であるから、『大変』といっても、そのレベルは一般に言われているものとは同じではないのだが。

* * *

再度、望遠装置・ 自由魔力素(エーテル) 転送の検討に戻る仁たち。

「だけど、なかなか難しいな」

「ほんとだね」

「ジンでもそう簡単にはできないのか……」

「うーん、本当に難しいんだ」

どちらも、現代地球の科学でも実現できないためか、仁も考え倦ねていた。

「ぼちぼちやっていこうかな」

そろそろハンナも送っていく時間なので、仁は切り上げることにした。

「おにーちゃん、あたしも考えておくね」

「ああ、頼むよ」

カイナ村の工房地下にある 転移門(ワープゲート) からハンナを送っていった際、別れ際にそう言われた仁は笑顔で頷いたのである。

カイナ村の青空を一瞥した仁は、再び蓬莱島へと戻ったのである。

* * *

「ジン兄、おかえりなさい」

エルザが仁を出迎えた。

「さっき、『アドリアナ』経由で、ミスリル銀の第一便が、届いたところ」

「おお」

現地でおおまかな精錬までしているので、鉱石ではなくインゴットが送られてきている。

その量、およそ200キログラム、文字どおり白銀色に輝くインゴット。

比重が約10.5なので、体積としたら30センチ角弱の立方体程度しかないが。

『 御主人様(マイロード) 、このあと暫くは、この大きさのインゴットが2時間に1つ送られてくるそうです』

「それはすごいな」

その調子であれば、半日も経たずに元の在庫量を上回ることになるだろう。

『報告によれば、再度の確認を行っても『モデヌ』の資源は、間違いなく非常に豊富だそうです』

「よし、できる限りの採掘を行う、それは継続だ」

『わかりました』

そこへ、ミロウィーナがやって来た。

「ジン君、そろそろ私、 月(ユニー) に帰るわ」

「あ、もうですか?」

「ええ。少しずつこちらの環境に慣らしてはいるけど、やっぱり重力が少しきついわね」

ミロウィーナは、高齢のため弱っていたので、 月(ユニー) の管理頭脳である『ジャック』が、やや低めに重力を調整し、身体への負担を軽減していたのである。

仁とエルザのおかげで健康になった今、少しずつ1Gに身体を慣らしつつあるのだ。

「そうですね、無理はいけませんものね」

「ええ、また近いうちにお邪魔するわ」

ミロウィーナは 転移門(ワープゲート) をくぐり、 月(ユニー) の家へと帰っていったのである。