軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33-23 南極調査艦隊 その1

日時は少し戻る。

《『南極調査艦隊』、『蓬莱島新婚旅行艦隊』と交代完了》

《『蓬莱島新婚旅行艦隊』、帰島します》

《『南極調査艦隊』、南緯40度、西経80度付近に進出》

自由魔力素(エーテル) 濃度が薄い地域に差し掛かったため、『 魔力貯蔵器(マナボンベ) 』を装備されていない艦艇は大事をとって引き返すことにしたのである。

仁が派遣した『南極調査艦隊』は順調に南下を続けていた。

9月25日には、後に『ラーモン群島』と名付けられる島々を右舷に眺めつつ、南極点を目指していく。

同時に、少数ではあるが、『ラプター隊』を派遣し、陸地の様子も観察させていた。

『ふむ、これは面白い映像ですね』

受け取っている老君は、その映像を解析していき、1つの結論を得た。

と同時に、仁を呼ぶことにする。

『 御主人様(マイロード) 、お手数をお掛けしますが司令室までお越し下さい』

「どうした、老君?」

『お忙しいところお呼びだてして申し訳ございません』

「いや、それはいい。工具類の整備をしていただけだからな。……それより、何があった?」

『はい。まずは、『南極調査艦隊』所属のラプター隊から送られてきた映像をごらん下さい』

先入観を与えないため、余計な情報を出さずに、まず問題の映像を映し出す老君。

「これは……」

『いかがですか?』

映し出されていたのは様々な動物たち。それも、仁が今まで見たこともないような、多種多様な動物たちである。

ゾウに似た動物。キリンに似た動物。サイに似た動物。カバ、サル、リス、に似た……。

クマやイノシシなど、見たことのある動物もいた。が、それらは仁の記憶にある姿とどこか違って見える。

さらに植物相も、先日訪れたプレアデス諸島にも増して豊富なようだ。

「これが、南の島の生物相だというのか……」

『はい。どうお考えになりますか?』

「うーん……」

仁は生物学には疎い。が、ガラパゴス諸島の名前は知っている。小笠原の話も聞いたことがある。

「隔絶されていたから独自の生物相が発展したのか?」

『その可能性もあります。ですが、私の仮説としては、ここは『箱船』なのではないかと』

「『箱船』?」

『はい』

老君が言っている『箱船』とは、聖書に出てくるノアの方舟のことだろう、と仁は考えた。

そしてその意味に思い当たる。

「生物の種を保護していると?」

『はい、 御主人様(マイロード) 。そう考えました』

「なるほどな……」

老君は、時として突飛な発想をすることがある。

これは、思考回路の問題ではなく、思考速度が途轍もなく速く、同時に扱える情報が膨大なためである。

よって、仁の数倍、数十倍の『可能性』を瞬時に検討できるのだ。

仁にできない発想をしているのとはちょっと違う。

時間さえ掛ければ仁にもできる……はずなのだ。

「アルスを『ヘールフォーミング』する際に、できるだけ現住生物を保存しようと思ったのかもな」

少なくとも高濃度の 自由魔力素(エーテル) による魔物化はしなかった生物が棲息しているのだろうと思われた。

「それでも倍になった重力を克服できたものがどれだけいたかは疑問だけどな」

『はい。ですが、それなりに生物相は豊富でしたから、その点はまあまあうまくいったのではないでしょうか』

「それならいいな」

重力が倍になった影響で、身体の大きさが小さくなった可能性はありそうだ、と仁は思ったが口には出さなかった。何も確証はなく、ただの勘だからだ。

それとは別の、気になったことを尋ねる仁。

「大陸の方は調べていないのか?」

『はい。そこまで手が回りません』

「そうか。確かに、今のメンバーだけでは足りないな。増やすか……」

少し仁は考え、増員を決意した。この先、機動性の高い航空戦力が必要にならないとも限らないからだ。

「スカイ隊を1000体まで増やそう。乗機もそれに応じて」

『ありがとうございます』

ランド隊は1から1000、マリン隊は1から500。マーメイド隊も1から1000まで揃っているのに、スカイ隊は100止まりだった。

それを今回、一気に増やすことにしたのである。

これも1000体いる 職人(スミス) により、半日でスカイ1000までが勢揃いし、もう1日で乗機としてのラプターも500番までが製造されたのであった。

閑話休題。

『もう一つ、重要な報告があります』

「何だ?」

『南回帰線上に、島が見つかりました』

「島? 何か特殊なのか?」

『はい。しかも西経180度なのです』

「西経180度で南回帰線上……って、まさか!」

『はい。『蓬莱島』の真裏に当たります』

「そう……だよな」

仁が定めた地図では、西経0度は蓬莱島である。しかも蓬莱島は北回帰線上にある。

つまり、問題の島は、アルスの正反対側にあるということになる。

『これが偶然なのか、それとも何か法則に 則(のっと) っているのか、判断は付きません』

「だろうな」

仁は考え込んだ。

なんとなく勘ではあるが、その島に何か重要な秘密が隠されている気がしないでもない。

たっぷり10分間考えた仁は結論を出した。

「よし、その島の調査も同時並行で行おう」

『わかりました。増強予定のスカイ隊を派遣、でよろしいでしょうか。その場合、2日後か3日後になると思いますが』

「そうだな。そこまで緊急な案件じゃないから、いいだろう」

『島の名前はどう致しましょう』

これからのことを考えると、名前がないと不便である。

「そうだな……ええと、『オノゴロ島』というのはどうだろう?」

『オノゴロ島、ですか。確か、世界の始まりの島でしたね』

オノゴロ島は、『古事記』に出てくる島で、大地と海がまだ定まらず、混沌としていた時代、『 天の浮き橋(あまのうきはし) 』の上から神様が『 天の沼矛(あまのぬぼこ) 』でかき回し、持ち上げたところ、先から滴り落ちた潮が積もって島となった、という伝説の島である。

仁が施設にいた頃、院長先生が話してくれた神話に出て来たので仁は覚えていたのである。

なんとなく神秘的な島に付ける名前として思いついたのだった。

「もしかしたら、蓬莱島と対になる島なのかもしれない」

『面白い説ですね。可能性は十分あると思います。ポジション的にアルスの真裏にあるのですから』

「 自由魔力素(エーテル) の特異点を解明する手掛かりになるかもしれないしな」

『そうですね。そうなりますと、近々グースさんをお呼びした方がいいかもしれません』

「だな。ヴィヴィアンも呼んでやらないとあとで拗ねるぞ」

『わかりました。お任せ下さい』

こうして、南半球の調査は進んでいく。

後の『ラーモン群島』、そして『オノゴロ島』。

惑星アルスは、まだまだその謎を全てさらけ出すつもりはないようだ。

「時間が欲しいな……」

長周期惑星も接近しつつある今、仁は時間が欲しい、と思うようになっていたのである。

「今までのツケが回ってきたとも言えるんだけどな」

それをするだけの時間があったのに後回しにしてきた結果がこれである、と仁は反省した。

「夏休みの宿題はさっさと終わらせる主義だったのになあ……」

ぼやいても 詮(せん) 無きこと。

仁は今のベストを尽くすしかない、と決意を新たにするのであった。