作品タイトル不明
33-11 盗賊団
結果的に、ジュミとランド781、782が向かった方向に、ランスはいた。
「……今夜はもう無理か」
一言ぼそりと、聞こえよがしに呟くと、ランスは振り向いた。
「さて、貴方たちは私に何の用です?」
どうやら、途中から気取られていたようだ。
「人間ではないようですね。お仲間ですか?」
そこまで見破られていては、これ以上こそこそする必要もないと、『 不可視化(インビジブル) 』を切って姿を見せる3体。
「ほう、1体は 自動人形(オートマタ) 、2体はゴーレムですか。それも、かなり……いや、とても素晴らしい出来の」
「私はジュミ。端的に伺いましょう。貴方の目的とは何ですか?」
ランスは薄笑いを浮かべる。
「そうですね、それに答える前に、こちらからも1つ、質問というより確認をさせて下さい。……あなた方は盗賊団を追っているのではないのですか?」
思い掛けない質問ではあったが、隠すような内容ではない。
「そうです。そして、貴方が怪しいと思っているのです」
「やはり。……確かに、全くの無関係というわけではないですね」
ランスは、今度はにやりとした笑いを浮かべた。非常に人間くさい。
「それではそちらの質問に答えましょう。私の目的も盗賊団です。正確には、その中にいるはずのゴーレムです」
「何ですって!?」
意外な理由に驚くジュミ。そんな彼女を見たランスは感心する。
「ほう。『驚く』ですか。誰が作ったか知りませんが、見事なエミュレーションですね」
「そういう貴方は、どうしてゴーレムを追っているんですか?」
「簡単ですよ。本来の用途と異なる使い方をして欲しくないこと。それに、何といっても『盗まれた』ものを取り返したいですからね」
「盗まれた、ですか?」
「そうです。盗賊団で使われている 自動人形(オートマタ) ……いや、ゴーレムは、私の製作者が作られたものでしてね。取り返しに来たんですよ」
「取り返しに?」
だが、その後、ランスは口を噤む。
最後に一言、
「少し話しすぎたようです。……系統は違うが、出来のよいお仲間に会えてよかった」
と言うと、身を翻し、夜の闇に消えていった。
ジュミたちはあえてそれを追うことはしなかったのである。
* * *
「ふうん、興味深いな」
蓬莱島の司令室で、仁は老君から報告を聞いていた。
「先代の系統とは違う 自動人形(オートマタ) か。有り得ない話じゃあないな」
エレナという前例もある。
また、市井に優秀な技術者が埋もれていた可能性だってある。
仁はそんなことを考えてから、別の質問をした。
「エルザはどうしてるだろう?」
『はい、 御主人様(マイロード) 。エルザ様はご実家でのんびり過ごされているようです』
「そうか、よかった」
これから1月あまりは、『長周期惑星』で大忙しになると仁は考えていた。
できればそのまま実家にいてくれた方がいいのだが、そうもいかないだろう。
「エルザのことだから、きっとそろそろ戻って来たくなっているんじゃないかな」
* * *
「兄さま、特に事件は無いみたい?」
「うん。今のところ、泥棒が入ったというような訴えは来ていないな。このまま何ごともなければいいんだが」
「兄貴、俺の部下からさっき連絡が入ったが、ラインハルトの方の領地も今のところ何もないようだ」
「そうか」
エルザ、モーリッツ、フリッツ。兄妹が顔を合わせ、事件に備えた相談をしている光景は珍しく、古くからいる使用人たちも横目でちらちらと窺ったりしている。
「このまま何ごともなければ、それに越したことはないけれど、万が一を考えると……」
モーリッツが難しい顔をして言う。
「盗賊団を捕らえてしまうのが一番だな」
単純明快、とばかりにフリッツが言い切る。
「それはそのとおりだ。が、言うは易く、だな」
「まあ、な」
フリッツにもそこのところはわかっている。が、言わずにはいられなかったのだ。
「……今夜、何ごともなかったら、私、明日は帰ろうかと、思う」
エルザがおずおずと言った。
「うん、そうか。……そうだな」
「そろそろ独り寝が寂しくなったか? それとも亭主が浮気していないか心配になったか?」
「兄さまの、ばか」
フリッツにからかわれてエルザは顔を赤らめた。
* * *
そして、その夜。
「(エルザ様)」
眠っていたエルザに、エドガーが小声で声を掛ける。
「……んぅ、何?」
眠い目を擦り、エルザは目を覚ました。
「(お休みのところ、申し訳ございません。ですが、緊急事態です)」
「……緊急事態?」
その言葉に、エルザはベッドに身体を起こした。
「はい。この家に近付いてくる者がいます」
そんな言葉に、完全に目が覚めるエルザ。
「……もしかして、盗賊団?」
「おそらくは。ですが、ご安心下さい。 第5列(クインタ) のデネブ22とランド隊も一緒です。ですが、1体、謎のゴーレムもおりますので、念のため 障壁(バリア) を張って下さい」
「わかった、『 障壁(バリア) 』」
「それで結構です」
「エドガーは、これからどうするの?」
「ご指示をいただければ、迎撃のお手伝いを致します。また、ここにいろと仰るなら、護衛を務めさせていただきます」
エルザは少し考えてから、ここにいるように、と指示を出した。
「わかりました」
時刻は午後10時半を回ったところ。
「この家にはそれほどお金、置いてないはずだけど」
納められた税としての小麦・大麦が倉庫にあるのみで、まだお金に替えていないのである。
そこまで考えて、盗賊団の噂を思い出したエルザ。
「……穀物でも運び出して、しまう」
そのことに思い至ったエルザは立ち上がると、大急ぎでガウンを身に着けた。
そして部屋の外へ。
「エドガー、付いてきて。倉庫が、危ない」
「はい、エルザ様」
エルザとエドガーは廊下を走り、階段を駆け下りて、勝手口へと向かう。
倉庫のある中庭に出てみれば、そこでは混沌とした戦いの場となっていたのである。