軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3分聖女とスマホとアニメ

今日も今日とて生徒会室でお仕事です!

新学期ということで、色々なセレモニーの準備や各部活動からの申請書など、いろんな書類が届きます。今日の私の仕事はそんな書類たちの整理……だったんだけど、やっぱり三分で終わってしまった。しょんぼり。

「暇です……」

「誰もおまえのスピードに着いて行けるやつが居なくてすまなんだ」

生徒会長のリュナン様にも気を遣わせてしまう。

こんなんじゃ、まだまだ生徒会員として半人前だなぁ。

仕事がいくらできても、顎で使えるくらいの手駒になってこその平職員だと、よく旧理事長様がおっしゃっていた。

「そんなに暇なら、動画でも見てたら?」

「どうが?」

そう話しかけてきてくれるのは、財務担当のバルサさん。

バルサさんもパソコンでカタカタ書類の打ち込みをしながらも提案してくださる。

「ほら、スマホでさ。音出してていいよ。ノイシャさんがどんな動画みているのか気になるし」

「いや、それはダメだろ。せめてイヤホンをしろ。備品で余っていたのがあると思うが……」

そう言いながら、リュナン様がゴソゴソと探してくださる。

そんな背中に向かって、私はきょとんと聞いてみた。

「スマホって、陽キャってこの世の貴族が持ち歩いているキラキラ通信機のことですか?」

『は……?』

お二人の疑問符が同時に返ってくる。

あれ……私なんかおかしなこと言っちゃったのかな?

すると、バルサさんが言う。

「陽キャって貴族だったんだ。その発想はすごいね」

「ど阿呆。そんなこと言っている場合じゃないだろ……もしかしておまえ、スマホ持っていないのか?」

「私は……陽キャじゃありませんので」

そんな陽キャというこの世界の最上位生物が私だなんて、とてもとても。

するとバルサさんが立ち上がった。そして私に手のひらより少し大きな長方形の通信機を渡してくる――これは、陽キャの神器『スマホ』だ!

「はい、今アニメがたくさん観れるアプリ開いたから好きなの観ていていいよ」

「動画じゃなかったのか?」

「なんか教育上まだ早いような気がして」

なるほど?

動画というのはそんなハイレベルの鑑賞物なんですね?

「ちなみにノイシャさん、今までどんなアニメ観たことあるの?」

「アニメってなんですか?」

「動いて喋る絵本みたいな?」

絵本が、動いて、喋るだと……?

それはなんて奇跡なんだろう。どれを観てみようかな……。

どれがいいかわからない。そもそもスマホの操作方法がわからない。

困惑していると、バルサさんが「じゃあとりあえずこれなんかどうかな?」とポチッと画面を押す。すると、画面が動き出した。カラフルな女の子たちが……戦っているのかな?

小さな画面を、リュナン様も覗き込んでくる。

「バルサ……おまえ、こういう趣味があったんだな……」

「僕が好きってわけじゃないからね! 妹が小さい頃よく観てたよなってだけで!」

どうやらリュナン様はアニメとやらに詳しくないらしい。「今はどういうのが流行ってるんだ?」と尋ねたリュナン様に、バルサさんは得意げに語り始める。

「今期は『火星の魔王』の第二シーズンが始まるから要チェックだね。あのハエ叩きのあと、ヒロイン二人の仲がどう拗れるのかが楽しみで楽しみで」

「その感想だけ聞いているとロクな番組じゃなさそうなんだが……」

「普通にバンガムシリーズの最新作だよ!」

リュナン様とバルサ様がアニメの話で盛り上がっている。

私もいつかアニメを極めたら、あんな風にみんなでお喋りできるようになるのかな?

よーしっ、頑張ってアニメを極めるぞー!

私が小さな画面に釘付けになる。

烏がカァカァ鳴いている。

窓から夕陽が差し込む中、バルサさんの声がした。

「ノイシャさ~ん。僕そろそろ帰りたいんだけど~」

「うぅ、ピュアピカリン。ピュアアクア……」

「どうやらドハマりしたらしいな」

リュナン様がまた嘆息している。

だけどごめんなさい。今、世界の危機なんです。ドクドクドクターがドクドクワクチンの開発に成功してしまい、このままじゃピュアピュアみんな全滅しちゃいそうなんです……!

「今度、ノイシャさんのスマホを買いに行こうか」

「費用は……セバス先生に言えば出てくるか?」

私はピュアピュアのみんながやっほいできるまで、この場所から動くことができなかった。