軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六話:完成、アヴァロンの騎士

ロロノの様子を見に行った次の日のこと、クイナとアウラを交えて朝食を食べているとロロノが目の下に隈を作って、勢いよく飛び込んできた。

「できた、やっとできた。最強のゴーレム!!」

かなり疲れており、髪はぼさぼさだし身だしなみもかなりいい加減だ。

だが、目だけはらんらんと輝いている。

おそらく、昨日一睡もせずに、オリハルコンという最高のボディに、二つのゴーレムコアを共鳴させて出力を二乗した最強のゴーレムを完成させたのだろう。。

その出来は聞くまでもない。ロロノの興奮した様子を見ればわかる。

「よくやったなロロノ」

ロロノのほうまで歩いていき、ぎゅっと抱きしめる。

するとロロノが抱きしめ返してくれた。

「ああ、ロロノちゃんずるい」

「まあまあ、クイナちゃん落ち着いてください。最強のゴーレムとロロノちゃんが言うぐらいですから、本当にすごいものを作ったみたいですよ。褒められて当然です」

キツネ耳美少女であるクイナと、エンシェント・エルフのアウラが、俺たちのほうを見て、それぞれに口を開く。

「ううう、わかったの。クイナもおとーさんに褒めてもらえるぐらいすごいことしないと」

クイナが何気なくつぶやいた言葉。

それがちょっと気になる。

クイナは、飛びぬけた戦力が一番の魅力であり、内政系のスキルは持っていない。変に空回らなければいいのだが……。

「それじゃ、さっそく見せてくれと言いたいが……先にご飯を食べてからにしよう。あのクッキーの後何も口にしていないだろう?」

俺たちは基本的に食い物は必要としないが、娯楽として食事を楽しむ。心のほうに安らぎが必要だ。

「ん。わかった。マスター、ご飯を食べたらすぐに披露する」

「アウラ、任せた」

「もう、とりかかってますよ」

隣の台所からアウラの声が聞こえた。いつのまにか移動していたらしい。

バターの匂いが漂ってくる。この街でとれた新鮮なバターと卵でスクランブルエッグを手早く作っている。

同時にカリカリにベーコンを焼いていく。

その二つをスケルトンたちが焼いたパンに切れ目を入れてはさみ、自家製の調味料で味付け。

アウラの料理は絶品だ。

ロロノの疲れも癒えるだろう。

そして、デザートはアウラが【誓約の魔物】になったことでパワーアップした始まりの木の黄金リンゴ。

これを食べると、寝起きの頭が一気に目覚め、体調が良くなり、身体能力が向上し、魔力の自己回復量が上昇し、寿命が伸びる気がする。

朝食には最適だ。

俺たちは毎朝、この黄金リンゴを食べるようにしている。おかげですこぶる体調がいい。

アウラが鼻歌を奏でながら、ロロノのまえに料理を置くと、ロロノはぐーっとお腹を鳴らしたあと、勢いよく食べ始めた。

デザートのリンゴも一瞬でなくなった。

「アウラ、今までよりもリンゴがすごくなってる」

「あっ、やっぱりわかります? ええ、私が【誓約の魔物】になった影響でパワーアップしました」

「このリンゴ、もっとはやく食べたかった。これがあれば一年ぐらい、一睡もせずに研究できる」

ごふっ。

俺は食後に楽しんでいたお茶を吹き出しかけた。

たしかにこのリンゴがあれば、疲れ知らずだ。

「ロロノ、それはやめておこう。体は大丈夫でも心が壊れるから」

「残念」

ロロノはそう言いながら、手についたリンゴの果汁をなめとった。

「さて、食事も終わったし、早速ロロノの作ったゴーレムの力を見せてもらおうか」

「うん、任せて」

そうして、俺たちはロロノの作り上げた新たなゴーレムを見るために外に出た。

俺だけではなく、クイナもアウラも興味津々といった様子だ。

俺たちは鉱山エリアの奥にある訓練場に移動した。

ここなら、人目につかないし、壊して困るものもない。好きに暴れられる。

ロロノが今回の主役であるオリハルコンゴーレムを起動させる。

「随分、スマートなゴーレムだな」

「細身でも十分すぎるほどパワーがでる。だから軽量化してスピードを優先した」

今までロロノが作っていたゴーレムたちは三メートルほどの巨体で、横にもでかくずんぐりとした印象を受けた。

だが、このゴーレムは違う。

全長は二メートル五〇センチといったところだ。横幅はさほどない。人間に近く、すらっとした印象を受ける。

オリハルコン特有の金と銀の中間の独特な色合いが美しい。

何より……。

「すごい魔力量だな」

「ん。ツインドライブのゴーレムコアは、コアの足し算じゃなくて二乗。それがオリハルコンと共鳴している。ただのオリハルコンじゃない。ゴーレムコアとの相性を最高にするために限界までチューニングしたオリハルコン。Aランクの高位並みの魔力量」

さすがにクイナたちには劣るが、明らかに強すぎる。

「量産の目途は立ちそうか?」

「できる気がする。でも、具体的な時期はこの子の実験結果が出てからでないと言えない。しばらくは【紅蓮窟】で実践させながら研究をするつもり」

なるほど、それがいいだろう。

まだ動いているところは見ていないが、すでにこのゴーレムから無限の可能性を感じていた。

「ロロノちゃん、この子はどんな子なの?」

クイナがロロノにゴーレムへの質問をした。

「汎用性を求めた。ツインドライブの出力を受け入れられるだけの強靭さを前提に、純粋に硬くて、速くて、強い。可動域もかなり人に近い。人の使える武器はなんでも使える。この子が全ての基本になる。研究が進めば、この子をベースにして遠距離特化型とか、格闘戦特化型とか、高速移動特化型とかを作るつもり」

【誓約の魔物】になってロロノが得たゴーレムのカスタマイズ能力。

様々な特化ゴーレムを作ってきたが、今回のゴーレムは基本に立ち返った万能型だ。初めてのツインドライブ採用型ならそれが一番いいだろう。

「さっそく動かしてみてくれないか。ロロノ」

「わかった。まずは基本的な動きから」

ロロノがゴーレムに命令する。

全力疾走からの急激な方向転換、さらに跳躍。

アウラが拍手をした。

なんて、スピードだ。ゴーレムが鈍重だという常識を軽く置き去りにする。

「出力が有り余っているし、動きを滑らかにするために関節部はかなり工夫してある。加えて、軽量なオリハルコン。あれぐらいの動きは可能」

どこか誇らしげに、ロロノは呟く。

「次は、基本武装の紹介」

ゴーレムが用意してあった、ミスリルゴーレムたちが愛用している、重機関銃キャリバーを構える。

そして、あの冗談のように長く重い重機関銃を走りながら撃つ。

「冗談だろ?」

威力は折り紙付き。だが、重さも反動も、洒落になっていない、固定して使用する重機関銃を、まるでアサルトライフルのように振り回す。

ミスリルゴーレムのパワーでも、うまく扱えずに上下の照準に手間取るそれを、自由自在に使いこなしていた。

はは、振り回すどころか今ジャンプして空中で照準をつけて射撃しやがった。

「新型のゴーレムなら、これぐらいはできる。力の強さは折り紙付き。そして……防御力。クイナ。ショットガンを撃ってみて」

「わかったの」

クイナが、愛用のショットガンを放つ。

轟音。

ロロノが作り上げた改造ショットガンだ。超大口径にし、使用火薬は魔力を込めることで威力が跳ね上がるミスリルパワダー。

弾丸発射後に、ロロノの【加速】の 魔術付与(エンチャント) により、さらに威力を高める化け物。その威力は重機関銃すら比ではない。

Aランクの魔物であっても容易に貫くその一撃。

通常のゴーレムなら紙屑のように切り裂かれるだろう。

果たして新型のゴーレムは……。

「ほぼ無傷だと?」

俺は驚きの声をあげる。

表面に傷はついているがそれだけだ。

「ロロノちゃん。なんて、硬さなの。この前のオリハルコン・ガーゴイルを思い出すの」

「あれより硬い。防御力をあげるために衝撃を受け流す丸みを帯びた装甲にしてあって、しかもその装甲の表面を魔力が循環させて強度を増してる。次は魔力防御の実験。クイナ、炎を打ち込んで」

「本気で?」

「本気で」

「わかったの!」

クイナが炎を全力で高める。

手の平に超高密度の炎の塊ができた。

それを矢にして放つ。

太陽のような灼熱の一撃の直撃。あれを喰らえば、アウラやロロノでも致命傷を避けられないだろう。ゴーレムの胸に炎の矢が直撃し、炎がオリハルコンゴーレムを飲み込む。

炎が晴れる。

ゴーレムは健在。

「魔力を四肢を動かすために循環しているけど、出力が過剰すぎて魔力漏れが発生してる。だから、その過剰魔力がそのまま魔法に対する防御になるようした。それを可能にしたのは、装飾を兼ねて魔術式を装甲に彫りこむ手法。散るはずだった魔力が自動的に消費されて、常に防御結界を張っている状態になる。加えて、オリハルコンという素材自体が圧倒的な魔力耐性をもってる。魔法に対してはほぼ無敵」

圧倒的な速度、攻撃力、防御、魔法防御。その全てを兼ね備えているのか。

「すごいじゃないか、ロロノ」

「自慢のゴーレム。でも、弱点はある。この子は速くて硬い。でもそれだけ。物理攻撃だけしかない。物理攻撃が効かない敵には無力。それに、この子の防御を砕ける敵もいる。例えばクイナのショットガンの散弾には耐えられたけど、スラッグ弾をピンポイントで同じ個所に連発されれば貫かれる。クイナなら、この子の重機関銃を潜り抜けてそれができる。そもそも、クイナが本気の姿になれば、いくら魔法に対してほぼ無敵って言っても、力技で燃やし尽くされる」

「当然なの!」

クイナが胸をはってどや顔で呟く。未来の姿になったクイナの炎はオリハルコンだろうが、いかなる防御結界だろうが、理不尽に灰燼に帰すだろう。

「そして、それはアウラのアンチマテリアルライフルも一緒。アウラなら長遠距離から、高速で動くこの子に、ピンポイントで連続射撃ぐらい余裕で決められる。そもそもアウラが相手なら、どうあがいても攻撃が届かない上空から一方的に狙い撃たれて手も足もでない」

「確かにそうですね。私がもし、このゴーレムと戦うなら超高度から重力を味方につけての超高速射撃戦闘を挑みます。地上からの攻撃は重力にひかれて、威力と射程が激減。私の攻撃はその逆、勝負にすらなりません」

「ワイトの瘴気にもほぼ無力。あれは絶対の死。魔術耐性が高くても、どうしようもない。【狂気化】したワイトは規格外すぎる。弾丸も届く前に、瘴気で腐るから有効打も与えようがない。……そして、もちろん私もこの子に勝てる」

なるほど、けして無敵ではないか。

逆に言えば、この子たちレベルでない限り倒せない。

「この子の真価は、強さじゃない。まずは量産できること。私たちレベルでないと勝てないこの子たちが将来的には数百体並ぶ。次に汎用性、あらゆる武器を使いこなせるから、武器の選択次第でどんな状況にも対応できる。加えて、適応力。水中、火山、氷山、平地、荒れ地、無酸素空間、いかなる場所でも戦える。最後に継戦能力、この子たちは疲れないし眠る必要もない。この子は兵士に求められる全てを備えた【完璧な兵士】」

聞けば聞くほど恐ろしい。俺は思わず生唾を飲む。

もし、ロロノの言葉に付け加えることがあるとすれば、使い捨てにできるということだ。損害を気にする必要がない。自殺行為じみた特攻も気軽に命じられる。クイナたちには絶対にさせられない、死を前提とした作戦を実行できる。

「ロロノ、量産化を至急進めてくれ。これは使える」

「そのつもり。改良による性能の向上も含めて対応する。基本武装にこの子たちの使用を前提とした武器も作ってみたい」

まったく次から次へと、なんて頼もしい子だろう。

ロロノが味方でよかった。他の魔王の配下にロロノが居たらと思うとぞっとする。

「ロロノちゃん、この子、名前をどうするの? 特殊なコアを使っているから、普通にオリハルコンゴーレムじゃかわいそうなの!」

「確かにな。これだけ強いんだ。なにか、名前を考えてやってくれないか」

俺の言葉にロロノは顎に手を当てて考えこむ。

「ツインドライブは、私にしか作れない。ひいては、アヴァロンだけのゴーレム……この子はアヴァロンの守護神。それにこれはもうゴーレムなんて枠に収まり切れない。ゴーレムを超えた存在。だからゴーレムとも呼ばない。ツインドライブ搭載型のゴーレムは、アヴァロンリッター。そう呼びたい」

俺は微笑む。アヴァロンリッター。

なかなかいいじゃないか。

「わかった、これからはアヴァロンリッターと呼ぼう。アヴァロンリッターを頼むぞ。ロロノ」

「わかった! 任せて」

これで、今日の実験は終わりだ。

家に戻ろう。

そうしていると、肩に青い鳥が止まった。

【風】の魔王ストラスにもらって重用させてもらっている、輸送員だ。

今はストラスだけではなく俺の親のマルコ、【刻】の魔王ダンタリアンなどの魔力を覚えてもらい活躍してもらっている。

この子が届けてきたということは、そのいずれかの魔王からの手紙だ。

「マルコか。明日なら時間がとれるのか。ありがたい」

こんなに早く対応してもらえるとは思っていなかった。

マルコには、人間との戦いになったときのアドバイスがほしい。会って話をしたいと手紙を送っていたのだ。この手紙はその返事だ。

早速お邪魔させてもらおう。

もちろん、手ぶらではない。俺ももう一人前の魔王、きっちりと対価になるお土産をもってマルコの元に訪れるとしよう。

俺は青い鳥に手紙を持たせて、マルコのところに送り出した。