軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五話:武器と農地と

武具を取り扱う店に向かう途中で、質屋で【創造】で作り出した宝石を換金した。

金貨は重いので魔力消費が激しい。その点、宝石は軽くて金になる。

今は、【創造】以外では確保できない火薬やレアメタルを毎日可能な限り【創造】しているのでMPはなるべく温存したい。

金の確保をしたあとは街の人に話を聞いてまわり、もっとも、人気がある武具屋を見つけた。

人気がある店というだけあって、かなり大きな店だ。

中に入ると、いかにも冒険者という人間が五十人ほど装備を物色している。

剣に槍に弓。服に鎧に靴。

そのあたりが主力商品のようだ。大量生産品の安物と、一つ一つ職人が作った高級品が並べてあるコーナーに別れていた。

「おとーさん、おとーさん、すっごい武器の数」

「マスター、数より質が大事。少し残念」

「私にはよくわかりませんね。弓は好きなんですが……あの子を知って以来、弓じゃ満足できない体になってしまったのです」

娘たちがそれぞれの反応を見せる。

俺とエルダー・ドワーフは一品ものの高級品が並べられているコーナーに移動する。

クイナとエンシェント・エルフはローブや靴が並べられているコーナーを見に行った。

エルダー・ドワーフは一番高い剣を手に取り注視する。

材質は鉄と少量のミスリルの合金。コストを下げるための工夫だろう。

「可哀想」

エルダー・ドワーフの顔が険しくなっていき、ぼそっとつぶやいた。

「こんなにされた材料が可哀想。こんなものを使わされる人が可哀想。こんなの剣じゃない。ただの鉄くず」

おそろく冷めた目だ。

周りがざわめく。

この場に似つかわしくない銀髪美少女のエルダー・ドワーフは注目を集めていた。そんな中でのこの発言。騒ぎになるのも仕方がない。

しばらくすると店の奥から大男が現れた。

真っ黒に焼け、鍛え抜かれた肉体を持つ大男だ。

「おまえか、俺の剣にケチをつけたのは!」

どすん、どすんっと大きな足音を立てながら、男は早足でこちらに歩いてきた。

「俺の剣を馬鹿にするぐらいだ。一流の冒険者だと思ったら、なんだ、小娘じゃないか! ガキでも俺の作品を馬鹿にするのは許さねえぞ!」

腹に響く怒鳴り声。

美少女であるエルダー・ドワーフにいいところを見せるために割り込もうとしていた男どもが躊躇する。

しかし、エルダー・ドワーフはまったくひるまない。

見た目は十代前半の銀髪美少女でもSランクの強力な魔物。

ただの人間なんて毛ほどの脅威も感じていないだろう。

「馬鹿にした? ただ事実を言っただけ。火入れが甘い。材料の配分も不適切、力任せに叩きすぎて逆にもろくなってる。重量配分が未熟。形状も切断にも叩き折ることにも適さない中途半端。この剣を売るほうが、よほど人を馬鹿にしている」

容赦ない、批評。

男がたじろぐ。

「知ったかぶりもいい加減に」

「これが本当の剣」

エルダー・ドワーフが腰にぶら下げている。細身の剣を大男に投げ渡した。

それは、彼女が弾切れのときを想定してもっている護身具だ。

「なんだ、この剣は……ミスリルで出来てやがる。材料がいい。ミスリルにいくつかの金属が混ざっている、だがコストダウンじゃなくて強度をあげるための合金、それ以上に、鍛冶師の腕が……吸い付くグリップ、滑らかな刀身、こんな剣、王都の伝説の鍛冶師ヤッパルナでもなければ」

「それは私が作った剣」

「こんな、ガキに作れるわけ……」

「私が作った」

短い、言葉。だが、有無を言わせない迫力があって男は押し黙る。

エルダー・ドワーフは剣を取り返し鞘に入れる。

そしてこちらを振り向いた。

「マスター、行こう。見るものは見た」

そして俺の手を引いた。

大男はそれ以上何も言わない。鍛冶師だけあって卓越した腕を持つものに対する尊敬の念があるのだろうか?

周りが注目しているなか俺たちは外に向かう。

そうだ、いいことを考えた。

これだけ注目が集まっているんだ。ここで、宣伝をしよう。

「みなさん、一週間後、この街と東のダンジョンの間に小さな街ができます。そこにこの子が作った武器を取り扱う店もあるので、是非来てください」

周りの人間たちのざわめきが大きくなる。冒険者たちは生き残るために、常に少しでも強い武器に飢えている。

この場での宣伝はインパクト十分。

口コミである程度は広がるだろう。

……もっとも、本当にここにダンジョンを作るかは今後の展開しだいだが。

用事は済んだ。

それから、俺たちはそそくさとこの場を後にした。

ちなみに、置き去りにしたクイナとエンシェント・エルフにあとで怒られた。

商業地区を抜けたあとは、農業地区を見に来た。

すさまじい広さの農地。

だが、農民たちは貧しさが見て取れた。

夢を見て、華やかな街にやってくる人間はひどく多い。だが、余っている土地なんてない。

街のほうも仕事の取り合いだ。農業しかやってこなかった人間が職を掴むには、運かコネか飛びぬけた才能がいる。

そのどれもない人間は、農業区で大地主をから土地を借りて作物を耕す。

当然のように生活は苦しい。

それでも、この街を出て自分の村に戻らないのは、街の文化を知ってしまったからだろう。今更何もない地方には帰れない。

エンシェント・エルフがあたり一面に広がる畑を見ていた。

彼女の能力で土地の状態を調べている。

「どうだ、ここの土地は。あんまりいい土地だと困るんだが」

「立地も地質もいいですが、残念ことに疲れ切ってますね。癒してあげたくなるぐらいに」

エンシェント・エルフの見立てでは、土地自体はそれなりにいい土地だが、無理に収穫量をあげるために酷使して連作障害や水害、さまざまな問題が発生しているようだ。

「この土地で作物を育てるとどうなる」

「山ほど肥料を使えば、それなりに収穫ができると思いますが、難しいでしょうね。そんな無理をすれば次の年はもっと厳しくなりますし。できれば二年ぐらいは休ませてあげたいです」

「お前が、ダンジョンで作れる農地で、ここで育ててある作物と同じものを育てれば?」

「当然、豊作間違いなしです」

これなら、少し突けば新しい街に連れてこれる。

念には念を入れておこう。

ここの作物はそろそろ収穫期のはず。

俺は、かなり割高な金額で畑で仕事をしていた農民から種を買う。

「エンシェント・エルフ、農地を作ったあとおまえの力でこの種を収穫直前まで成長を促進させてくれ」

「いいですが、何のために?」

「豊かな土地と言って移民を勧めるより、豊作具合を見せつけたほうがいいだろう?」

人間、自分の目で見たものが一番信じられる。

ちなみに俺は家と土地を貸し、その対価として収穫量の一〇パーセントを徴収するつもりだ。収穫できるまでは無償。不作であれば税が下がる。

あまりにも破格。本当はただでもいいが、それだと逆に疑われてしまう。

街に未練がある連中も、普段の生活は俺の街で行い。今まで搾取されていた分の金でたまに街に遊びに来ればいいと説明すれば容易く移住を決めるだろう。

一日で通える距離というのは大きい。

一通り見まわったあとは、四人で演劇を見たり、食べ歩いたりして遊びまわった。

なかなか楽しい。娘たちも、また来たいと騒いでいて上機嫌だ。

定期的にこういう機会を設けよう。

だが、今日最後の仕事が残っている。そろそろ、この街を出ようと考えたときだった。

「おとーさん、あの鳥」

「ストラスの魔物だな」

青い鳥が飛んできて俺の肩に乗った。

【風】の魔王ストラスが手紙を運ぶために使う魔物だ。この子は俺の魔力を覚えている。なので、外出していても手紙を届けることができる。

足に巻き付けれれた手紙を開く。

……面白い。やってくれる。

「おとーさん、どうしたの?」

「ちょっとね」

ストラスからの手紙には、新たな魔王のうちの一人が、ストラスに同盟を持ちかけたらしい。

目的は、【創造】の魔王プロケルの討伐。

単体で俺に勝てる魔王がいないと考え、真っ先に徒党を組んで俺を潰そうという考えだ。俺に【戦争】をふっかけられるのが怖いので、そうなる前に潰す。まあ、当然の考えだ。

ストラスは、断ったらしいが気を付けろと書いてあった。

ただ、最後のほうを見て俺はくすりと笑ってしまう。

『あなたを倒すのは私よ。私の力だけで倒さないと意味がないわ。私以外に負けたら絶対に許さないから……それと、もし、手に負えないと思ったら連絡しなさい。助けてあげないこともないわ。友達として、そう友達としてよ』

他の魔王たちが俺を徒党を組んで襲おうとしているのは、ありがたい情報だ。今度ストラスにお礼をしないと。

「街づくり、急がないとね」

あまり時間は残されていないだろう。

早急に準備を進める必要がある。

街の視察の結果、この街の近くにダンジョン作ることは非常に好ましいとわかった。【刻】の魔王への挨拶をし了承を行えば、ダンジョン作りが開始できる。

さあ、今から【刻】の魔王に挨拶に行こう。

最強の魔王の一人。彼と話すのが少し怖くて、そして楽しみでもある。