軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十八話:アヴァロンの新たな守りの要

アヴァロンに戻ってきた。

戻ってくると即座に【階層入替】を行い、街の部分を地上に持ってきる。

アヴァロンは人間たちを外に出さないために、デュークのスキル、【強化蘇生】で蘇った魔物たちに襲わせることで、警報を流し門をを閉鎖していた。

だが、そろそろ演技は終わりでいい。

ゴールドゴーレムとシルバーゴーレムたちによって、魔物たちを駆逐させる。

俺はアヴァロンの魔物たちを大事に思っているが、【強化蘇生】で蘇らせた他人の魔物であれば使い捨てにすることにためらいはない。

街のほうから歓声が聞こえてきた。

せっかく、こんな大それた演技までして住民を閉じ込めたのだ。

ならば、アヴァロンの強さと安全さを知ってもらおうと、ロロノが作った空間映像転写装置で戦いの様子を放映していた。

こういう魔物の群れの襲撃というのはどの街でも起こる。

襲撃があったことはアヴァロンの集客の悪影響にはならず、速やかに対応できるところを見せれば安全性をアピールできる。

街中に周囲の魔物は消えたので封鎖を解除するというアナウンスが流れ、外壁の門が開く。

「プロケル様、ずいぶんとおおがかりな芝居を打ちましたね」

「アヴァロンは街だから、普通のダンジョン以上に気を使う」

そこはアヴァロンの弱点だ。

「今回はお芝居の襲撃でしたが、これだけ立派な外壁と、外を守る無数のゴーレムがいれば、たいていの軍勢は始末できますね」

「まあな。だが、外に出ていたゴーレムは主力じゃない。本当の主力は別にいる」

俺は外壁の上部に張り付いている砲台たちを指さす。

実は、あれら全てがゴーレムだ。

ロロノと違い、ドワーフ・スミスたちはCランク相当のゴールドゴーレムを作るのがせいぜいだ。

Cランクでは総合力が低いと言わざるを得ない。

だから、機能を特化した。

固定砲台としてCランクゴーレムを生み出す。重機関銃を扱うゴーレムよりも、固定砲台そのもののゴーレムのほうが、より大型かつ効果力の火器を使えるし、命中精度、装弾数も多くできる。

そして砲撃だけに機能を特化した故に、人工頭脳も砲撃だけを考えることができ、射撃の質が著しく向上する。

何より、ドワーフ・スミスたちによって作れるのがいい。

今ではびっしり、アヴァロンの外壁には固定砲台が設置されている。

あれはいいものだ。いざ、戦闘が始まれば銃撃の雨を降らすことができる。対空砲火で空から侵入しようとする敵にも対応できる。

弾丸も貫通力を重視したものから、榴弾、散弾まで用途に応じて使い分けも可能。

アヴァロンを守る守護者の一つ。

「こんなものがあるなんて、すごい。プロケル様、お願いがあります。千の魔物を退けたという、守りのフロアを見せていただきたい。ぜひ、参考にしたいのです」

「わかった。祝勝会の前に、そっちを見せよう」

こいつが裏切り者だった場合でも、どうせ反プロケル同盟から話を聞くだろう。隠すことに意味はない。

俺も報告を聞きたいし、そちらに向かおう。

俺は魔王権限で、防衛用に追加したフロアに跳び、ベリアルたちはティロによって転移されてくる。

そこでは、ロロノの指揮のもとドワーフ・スミスたちが忙しそうに修復作業にあたっていた。

「ロロノ、この部屋は成功だったな」

「ん。シンプルな力技。だからこそ強い」

洞窟型のフロアだった。

それは、ミスリル・ゴーレムと重機関銃を思させるような部屋。

横幅と立幅は設定できる最小だが、奥行きは設定できる限界である二キロ。

大型の魔物が通れず、端から端までびっちりと金属によって埋められていて先へは進めない。

「……あははは、確かにこれは簡単には通れないですね」

俺はオリハルコン欲しさに【鉱山】を増設し、ありあまるゴーレムの労働力で鉱物を集め続けた。

オリハルコンやミスリルは装備として大量に使用するが、どうしても鉄、金、銀などの材料が山のように余る。

一部は街の運営費にしたり、インフラを作るときに使うのだが、そんなので使い切れはしない。

それらは空きフロアに積み重ねていたのだが、いくらなんでももったいなく感じた。

だから防衛用の部屋に使った。

シンプルに最小限の高さと横幅で限界まで長く作ったトンネルを金属で埋め尽くすだけ。

二キロ以上も続く鉱物で埋め尽くされた道を掘削するのは非常に手間がかかる、人海戦術をしようにもこの横幅だ。小型の魔物でもなんとか二人並べる程度、とんでもない時間がかかる。

「敵にロロノクラスの錬金術士が居れば、話は別だが、普通の魔物じゃ、まず突破できない」

「ん。マスターの言う通り、錬金に特化した魔物でないと、ここはひたすら時間がかかる」

事実、三十分以上かけて千体いた敵の軍勢は三、四割しか進めていない。

これらは実のところただの金属ではない。

厚さ三メートルの鉄板を幾重にも重ね、くっつけている。

そして、その鉄板にはドワーフ・スミスたちが【状態固定】の【 魔術付与(エンチャント) 】をかけることで強度を上げるとともに、鉱物操作系の魔術で容易く溶かされないようにしてあった。

ドワーフ・スミスはBランクの魔物だ。たとえ、Aランクの魔物でも、彼女たちの【状態固定】を破るには力をそれなりに消耗する。

その厚さ三メートルのものが約七百枚。

そしてあえて、同じ材質の鉄板は続けておかない。錬金魔術は、鉱物ごとに操作方法が重なる。こうすると、たとえ高ランクの錬金魔術を使えるまものも、一枚一枚順番に対応しないといけないため、魔力が尽きる、そしてそうそうAランクの錬金魔術を使えるものなんて存在しない。

……結局のところ力づくで効率の悪い破り方をしないといけない。

この部屋は、敵にダメージは与えられないが時間稼ぎをさせつつ、敵を消耗させるという点では最高だ。

しかも、三枚だけ、嫌がらせでロロノが作ったオリハルコンで、 二重魔力付与(ダブル・エンチャント) をした最高硬度の金属板がある。クイナですら苦労するそれを打ち破るのは並大抵の苦労ではない。

「マスター、この壁は材料が溜まったらもう一部屋ぐらい作っておきたい」

「そうだな。それもいいかもしれない。ゴーレムの労働力もDPも余りつつあるし、オリハルコンも不足がちだしな。【鉱山】をもう一つ作っておこう。ただ、同じ部屋を作るのは面白くない。改良案もあるぞ。下り坂にしておいて、残り三分の一まで敵が進んだところで後ろから濃硫酸を流しこむってのはどうだ」

「いいアイディア、改良案も考えておく。濃硫酸じゃ温い。もっといいのがある」

この部屋は今後、守りの要になるだろう。

ちなみに、この階層の三フロアは、それぞれまったく違う防衛特化の部屋だ。

贅沢を言えば、残りの二つの実験もしたかったが、この部屋の有用性を確認できただけでもよしとしよう。

「すばらしいアイディアですね。僕も真似させていただきます」

「それはいいが、【鉱山】で休まず掘り続ける労働力がないと辛いぞ?」

ゴーレムという不眠不休で働ける労働力が余るほどあり、金属板への加工ができるランクBのドワーフ・スミスがたくさんいたからこそできたこと。

アヴァロンでないと無理だろう。

「この規模は無理ですが、小規模なものならなんとかできますよ。では、プロケル様、祝勝会にうつりましょう。そうだ、プロケル様の【誓約の魔物】も呼んでください」

「そうだな。あの子たちも美味しいものを食べられると喜ぶはずだ」

ベリアルはいろいろと気が利く。

本当の友人になれればいいと思う。そのためにも徹底的に映像を調べないといけないだろう。

その日の宴会は盛り上がった。

ベリアルは話上手で、うまく場を盛り上げるし、面白い話をたくさん知っている。

その中には、先輩魔王らしく、勉強になるようなこともいくつかあった。

魔物の運用法などは特に興味深く聞けた。

基本的に、俺以外に懐かないクイナやロロノも、彼の話を聞き入っていた。

話し上手なだけでなく、聞き上手であり、彼と話していると楽しい。

ルルイエ・ディーヴァのルーエがやってきて歌を披露すると、彼の【誓約の魔物】である堕天使ルシフェルのユーベルも一緒に歌い、ベリアルがヴァイオリンを奏でる。

とても楽しい時間だった。

翌日、【獣】の魔王マルコシアス、【刻】の魔王ダンタリアンと共に先の戦争の映像を見ている。

彼らの力を借りて魔王の特定作業をしていた。

「えっと、プロケル。確定は【蛇】の魔王、それから【樹】の魔王だね」

「こっちも何人かわかった。……まずは【血】の魔王だ、それから、あいつは【氷】だな。それに【虫】もいる」

さすがは【獣】と【刻】、最強の三柱のうち二人だけあって、魔物を見ただけで持ち主が見抜ける。

最後まで見終わったが、確定はその五人だけ。

【蛇】【樹】【血】【氷】【虫】。これらが俺の敵か。

やっと、反プロケル同盟の大半がわかった。

今まで、守勢に回っていたが、これからは違う。叩き潰してやる。

「ありがとう、二人とも」

「まあ、妻としてはこれぐらいの強力はするよ」

「……ふん、フェルの頼みだ。それと約束のカジノの年間プレミアム会員の件を忘れるな」

マルコは二つ返事で受けてくれて、ダンはカジノの年間プラミアム会員を要求してきた。

プレミアム会員になると、いつでもカジノに順番待ちや予約なしに入れるし、飛竜レースの特等席を使い放題だ。

ゴーレムスロットもVIP専用のものがある。

これを要求してきたのは、ダンの照れ隠しだろう。彼はこんなものがなくても手伝ってくれたはずだ。

「ご主人様、フェルをもっと撫でやがれです!」

俺の膝に乗っている、白い髪をした狼耳の少女がごろごろと喉を鳴らす。

ダンの魔物のフェルだ。

相変わらず俺に懐いてくれている。今日は月に一度のアヴァロンワインを受け渡す日。

いつもはフェルだけで来るが今日はダンも来て、困っていることはないが、困っているなら条件次第で手伝ってやると言ってきた。

……最近わかってきたが、【刻】の魔王ダンタリアンは一度友達だと思った相手にはどこまでも甘く、そのことを隠そうとするツンデレだ。

「助かった。敵の正体さえわかれば確実に一人ずつ潰せる。全力で叩き潰す。守りの心配をしないでいいなら、もっと大胆に攻めれる」

今、相手は仕掛けられる状況ではないし、守りのために用意した部屋の性能も確認できた。

もはや、デュークやルーエを温存する意味もない。

全力で潰しにに行ける。

一切の容赦をするつもりはない。一人じゃ勝てないから徒党を組んだ連中だ。一人ずつ潰すなら何の問題もない。

「プロケルもずいぶんと立派になったね。親としては鼻が高いよ」

「だから、そういう子供扱いはやめろと言ってるだろ」

男女の関係になっても、マルコはいつもこれだ。

そして、もう一つの映像を流す。

こっちは、ベリアルのダンジョンでの映像。

マルコとダンはそれを見終わる。

「マルコ、ダン、どうだ?」

「うん、おかしなところはないよ。ベリアルは怪しい行動をとってはいない」

「同感だ。ここで行動を起こさないならほぼシロと言っていい」

俺はほっと胸を撫でおろす。

やっと、ベリアルのことを信じられる。

今まで、さんざん疑い続けてきた。だけど、この状況で何もしないなら彼は味方だ。

盗聴器を確認が最後の調査。

それが済めば、疑ってきたことを謝り【創造】のメダルを渡し真の仲間になる。

その日が楽しみだ。

「安心したよ。マルコ、ダン、実は世界最高峰の菓子職人、クルト・アルノルト、彼の娘がアヴァロンにレストランを開くんだ。知っての通り、クルト・アルノルトは菓子が専門だが、料理のほうも素晴らしい、その彼が娘は自分以上の天才だと太鼓判を押している。その娘がプレオープンで自慢のフルコースを振舞う。その招待券がこれだ。……すでに、向こう一年の予約が入っていて、食べれるのは今日を逃すと一年以上先、どうする?」

「もちろん、行くよ。ふふ、楽しみだね」

「クルト・アルノルト以上の才能と聞いて、断るわけにはいかないな」

「フェルも行くです。でも、クイナを仲間外れにしたら可哀そうだから呼んでやるといいですよ。別に、クイナのことをお姉ちゃんと思ってるからいってるわけじゃねーです」

俺は微笑む。フェルのこういうところはダンに似たのだろう。

今日は、料理を楽しもう。

……そして、明日から一人ひとり潰す。

時間を与えれば、また次の手を打たれる、潰すなら早いほうがいい。