軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十四話:漆黒鳥の力

堕天使ラフェロウの2ランク下の魔物の力を確かめるために、クイナ、ラフェ、ティロを引き連れて【鉱山】に来ていた。

ロロノは連れて来ていない。

ラフェの二ランク下の魔物は武器を装備できるタイプではないからだ。

俺は目を閉じ、力を高める。

「【我は綴る】」

手の中に、古めかしく分厚い魔導書が現れる。魔王のシンボルである魔王の書。

ほんの数日、使っていなかっただけなのに妙に懐かしく感じる。

ひとりでにページがめくれていき、開かれたのは堕天使ラフェロウの二ランク下の魔物のページ。

漆黒鳥ネヴァン。

堕天使というのは天使よりも高位の存在であり、ランクBでは堕天使というカテゴリーに属する魔物はいない。

だからこそ、ラフェの同系統でありながら鳥型の魔物として生まれるのだろう。

さあ、新たな仲間を生み出そう。

1200DPを消費し、漆黒鳥ネヴァンを購入する。

購入時に表示されたDP残額が六十万近く表示された。

これだけのDPを運用せずに塩漬けにしているのはもったいない。使い道を早急に決める必要があるだろう。

目の前に光の粒子が集まり、魔物を形作っていく。

「これが、漆黒鳥ネヴァンか」

どこか女性的な艶めかしい曲線をもった黒い鷲。

翼を広げ、美しい翼を見せつけてくる。

「クルッ」

親愛を込めた鳴き声だ。闇属性の魔物というだけあって警戒をしていたが、扱いやすそうだ。

「漆黒鳥ネヴァン、さっそくおまえの力を見せてみろ」

漆黒の鷲が天に舞う。鷲だけあって俺の魔物の中ではもっとも小さい。

だが、小さな体に確かな力を感じる。

魔王権限でネヴァンのステータスを確認する。

種族:漆黒鳥ネヴァン Bランク

名前:未設定

レベル:55

筋力E+ 耐久E+ 敏捷A 魔力A 幸運D 特殊B

スキル:上位闇魔術 上位光魔術 凶鳥の声 天使の眷属

悪くない。というが正直な感想だ。

・闇の寵愛 上位の闇属性の魔術を使用可能。闇属性魔術使用時に魔力上昇補正(小)。闇耐性(上)。

・光の寵愛 上位の光属性の魔術を使用可能。光属性魔術使用時に魔力上昇補正(小)。光耐性(上)。

・凶鳥の咆哮 魔術耐性を一ランクダウンさせ、一定確率でスタンさせる咆哮。光属性と闇属性のいずれかを発動時で任意に選択可。敵の耐性が低いほどスタンの成功率上昇 ※効果は重複しない

・天使の眷属 同一フロア(ダンジョン外では半径10km)内に自軍の高位天使が存在する場合、魔力・耐久が一ランク上昇

ラフェのように、光と闇の低い耐性でダメージ判定するような反則技は使えないが光と闇を使い分けられるという時点で便利だ。

そもそも光と闇は耐性を持つ魔物が少ないし、相反する属性故に両方の耐性を持っている存在など堕天使ぐらいだ。

凶鳥の咆哮も悪くはない。空中戦で音攻撃という回避が難しいスタン攻撃は使いどころが多いし、魔術に特化したネヴァンにとって、敵の魔術耐性を下げるのはありがたい。

だが、天使の眷属は使い辛く感じる。

高位天使はラフェしか存在しない。ラフェは防衛よりも攻めるほうが向いているのだが、逆に数が用意できるネヴァンは防衛向けだ。

ラフェの支援に数体つけるのはいいが、防衛部隊に配置した個体にとってこのスキルは死にスキルになりかねない。

「いや、そんな些細な欠点は気にならないな」

漆黒鳥ネヴァンは天空を舞う。

最高速度はグラフロスほどではないが十分速い。

小柄故に、小回りや機動性という面ではグラフロス以上だ。

敏捷Aは伊達ではないようだ。

ネヴァンは己の力を見せつけるために、空中で複雑な軌道をえがく。

さらに、そのまま魔術を使った。

黒い闇の力の塊が大地に落ち膨張し、数十メートルを飲み込む。

闇属性の力ゆえに破壊ではない。大地が貪り食われてクレーターが生まれる。

続いて、光の柱が遥か彼方先にある岩を打ち抜いた。

くりぬかれた断面は異様なほど滑らか。

速度と威力に優れた光魔術の力を目の当たりにする。

今はラフェの存在により【天使の眷属】が発動して強化されているが、それを差し引いても強い。

……冷静に考えればわかることだ。

飛行可能で敏捷Aな時点で圧倒的なアドバンテージ。

そして、希少な闇と光の上位魔術を魔力Aという高ステータスで放つのだ。弱いわけがない。

圧倒的な速度と高さから高威力の魔術を放ちつつ、。距離を詰められれば、【凶鳥の咆哮】で動きを止める。

十分、主力になりえるポテンシャルだ。

もっとも欠点がないわけではない。

小柄で筋力がE+しかない。爆弾を積むことはおろか、アヴァロンの武器で使用可能なものがない。

耐久力もE+で紙だ。Bランク以上の魔物から攻撃を受ければ一撃で落ちる。

さらに言えば、攻撃手段がほぼ魔術しかない。

クイナのように魔術そのものが効かない敵には手も足もでない。

鷲であるため、嘴や爪で戦えなくはないが体格が小さい上に筋力E+ではどうしようもない。

同系統というだけあって、弱点もラフェに似ている。

単体運用はせずに、グラフロス、テンペスト・ワイバーンとの連携が前提となるだろう。

「もういい、ネヴァン。おまえの力は見せてもらった。アヴァロンで、その力を活かしてもらおう。新たな主力の一角にする。クイナ、ラフェ、ティロ、おまえたちもそれでいいな」

「やー! 頼もしい子なの!」

「うんうん。さすがは私と同系統の魔物だけはある。だよ」

「がう!」

ネヴァンが下りてくる。

そして、俺の肩にとまり、頬ずりをしてきた。

人懐っこい子だ。

「新たな主力として迎えるにあたり、【渦】を作ろう。とりあえずは二つだな」

先ほど、防衛に向いていると思ったがこの小ささは武器にもなる。

グラフロスは巨体が邪魔をして、敵のダンジョンによっては通れなくなるが、ネヴァンならどのダンジョンでも戦える。

天井が低ければ機動性は生かせないが、こうやって肩に止まってもらい、上位魔術を放つ砲台とするだけでも活躍できる。

「聖上、ふとっぱらだよ」

「まあな。……欲を言えば上位天使がもう一体。それも守りに長けた奴がいればいいんだがな。ネヴァンの【天使の眷属】を活かせる。次に魔物が生み出せるのなら、狙ってみるか」

攻めの布陣はもう十分整ってきた。

今は守りを固めるべきだろう。

余ったDPも、ダンジョンの増築に使うつもりだ。高価な罠部屋を嫌がらせのように作るだけでも防御力は相当あがる。

「おとーさん、次に生み出す魔物は目星を付けてるの?」

「まだ、漠然としたイメージしかない。ラフェを生み出したときに使った【聖】のイミテートと【創造】を使えば、高位天使は生み出せると思う。あとは、魔物を作る際に頭に浮かんだ無数の可能性から選ぶつもりだ」

「ローゼリッテみたいなのがいると便利なの!」

「ローゼリッテ……そうか、たしかにあの力は有用だ」

クイナの話で思い出した。

かつて、ストラスから借り受けた聖天使ラーゼグリフのローゼリッテ。

おそらく、全魔物で唯一だと思われる条件なしでの全軍強化に、自軍すべての魔物とのフロアすら超えての交信。

ステータスはさほど高くはないが、軍団支援としては最高峰の魔物だ。

彼女がほしい。

彼女本人が無理でも、ストラスと交渉して【風】のメダルとストラスが彼女を生み出す際に使ったメダルのイミテートを手に入れ、【創造】と組み合わせればSランクの同じような力をもった魔物が生み出せるかもしれない。

「クイナ、いいアイディアだ。【渦】をあと一つ追加だ。ストラス陣営なら、俺以上にネヴァンが必要だしうまく使える。【風】+ローゼリッテを生み出したときに使ったメダルのイミテートを要求し、俺は【創造】と一つの【渦】から生み出させ続けるネヴァンを差し出す。これならストラスも首を振るだろう」

ストラスの基本戦術では、守りにはローゼリッテ、攻めにはローゼリッテの【偏在】を使う。

つまり、ストラスがネヴァンを運用する場合には攻めでも守りでも、高位天使が存在し、ネヴァンの【天使の眷属】が発動する。

今、テンペスト・ワイバーンと交換で彼女に供給しているグラフロスは強力だが、アヴァロンと違ってストラスのダンジョンでは爆弾が作れないし、【死】を強化する魔物もいないため、その力を活かし切れていない。ネヴァンのほうがより適している。

ストラスにとって、ネヴァンは喉から手がでるほど欲しい魔物だ。

「聖上、【創造】にネヴァンもつけるなんて、それって出しすぎじゃない? だよ」

「そうでもないさ、なにせストラスは自分の切り札を俺にも握らせるんだからな」

【創造】+大量のBランクの魔物。

一見、大盤振る舞いに見えるが、ストラスは自らの切り札である魔物の秘密を売り渡すことになる。これぐらいは支払うべきだ。ストラスが首を振らなければさらに上乗せする。

それだけの代価を支払ってでも、ローゼリッテの能力はほしい。

それに、ストラスは同盟者だ。

ストラスには、エンリルだけでなくもう一つ切り札を持っていてもらいたい。

俺が新人魔王を卒業するまでに生み出せる【創造】のメダルはあと四つ。

一つは【風】の魔王ストラスに。

一つは【粘】の魔王ロノウェに。

一つは新たに生み出す天使型の魔物に。

そして、最後の一つは【絶望】の魔王ベリアルに。

もっとも、最後のは彼が味方であると見定めてからだが。

「クイナも対等な取引だと思うの。成功すれば、アヴァロンがまた強くなるの!」

「そうだな。ぜひとも、この交渉を成功させたいものだ。俺とストラス、両方の戦力が跳ね上がる」

噂をしたらなんとやらだ。

俺たちのほうへ手紙を足に括り付けた鳥が飛んでくる。

こんなふうに手紙を送ってくるのはストラスぐらいだ。

いや、待て。いつもの青い鳥じゃない。もっと大きく白い。

あれは、ストラスではなく【絶望】の魔王ベリアルの魔物だ。

俺はその手紙を受け取り、中を読む。

「……マルコが敵に動きがあると聞いて警戒していた。どうやって俺と【戦争】の口実を作るかと伺っていたが、こういう手で来るわけか」

ベリアルの手紙には、俺の派閥に入ったことで反プロケル同盟から襲撃を受けている。

魔物の群れが押し寄せてきており必死に防衛中であり、助けてほしいと書いてあった。

敵は面白い手を使う。

新人魔王は一年間、新人魔王以外から攻撃を受けないように守られている。

だが、ベリアルは同盟者ではあるが新人魔王ではない。

ベリアルを攻められれば、俺は彼を助けるしかなく、彼を助ければ俺から攻めたことになり、新人魔王を守るルールに抵触せず、敵は俺を攻撃できるようになる。

いい手だ。

俺に見捨てるという選択肢は存在しない。

仲間を見捨てるような非道ではないし、簡単に仲間を見捨てる魔王だと広まれば、もう誰も俺の派閥に入らないだろう。

「クイナ、さっそくだがベリアルのもとへ行く。まずは下見だ……【戦争】は受けないようにするし、俺たちも隙を見せない。デュークに十五分以内にグラフロスを十体、爆撃用フル装備で準備させるように指示しろ」

そっちが、変則的な手を使うならこちらも変則的な手を使ってみせよう。

ベリアルを救いつつ、敵に攻める口実を与えない。

まあ、リスクもある手だ。

最悪の場合、グラフロス十体を失う。

「らじゃーなの! 行ってくるの!」

「……ベリアル。おまえが本当に俺の味方かわかりそうだ」

今回使う手は、ベリアルが味方であることが前提にある。

俺は彼を信じたい。

だからリスクを負う。

さあ、行こうか。仲間を救うために。