軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三話:プロケルのアヴァロン運営

【絶望】の魔王ベリアルに再度の面会の候補日を送った。

その返事を待っている間はアヴァロンの街の運営に精を出す。

【戦争】も大事だが、アヴァロンを強く豊かにすることも重要だ。感情を喰らえば俺自身がより強くなれるし、DPが余ればできることも増える。

今日も書類仕事を片付けていた。

地味な仕事だが案外楽しい。数字でアヴァロンの成長を実感できるのだ。

「コナンナの奴、もう空の駅の主要都市への配置をすべて終わらせたのか」

アヴァロンに人を集めるために空の駅を作ると決め、運営をコナンナに任せた。

どれだけ魅力的な街だろうが、アヴァロンは人類が支配する領域の最果てにある。

隣にある大きな街に住んでいるのならともかく、アヴァロンにたどり着くだけで一苦労だ。命の危険もあるし運賃の負担も相当の物になる。

商品を仕入れにくる行商人ならともかく、一般市民が娯楽で訪れるのは非常に厳しい。

だからこそ、ヒポグリフとロロノが作った特製コンテナを使い、大多数の人間を一度に運べる空の便を用意した。

運賃はかなり良心的に設置してある。

この空の駅があるおかげで、一般市民もアヴァロンに気軽に来られるようになった。

いくつかの街を先行運転していたが、こんな短期間に目標にしていた都市すべてを開通させるとは恐れ入る。

「いったいどんな手をつかったんだか。コナンナはやっぱり使えるな……ただ、これだけとんとん拍子だと怪しくはあるが」

空の便というのは、流通面で反則的な強さを持つ。

アヴァロン以外の街に行くために使いたいという人間があとを絶たない。

だが、アヴァロン以外に向かわれては俺にとっての旨味がまったくない。

そのため、アヴァロンと各街の直通便だけを作っていた。

しかし、それは非常に効率が悪いのも事実だ。

乗客が少ない空の駅にも直通便を作ってしまっている。

コナンナは現状の改善案を提出していた。

「筋は通っているな」

需要が大きく採算がとれるルートは今まで通り直通便で運営する。

採算が合わないところはいくつかの街を経由するルートにし、各街で客を拾ったり下ろすようにしたいと書いてあった。

ヒポグリフの数にもコンテナの数にも限りがある。

採算が取れない街をひとまとめにして、浮いたヒポグリフを人気がある街の直通便に回すことで、人気のある街の便を増やせば、アヴァロンの来客数はさらに増えるだろう。

実際のところ、採算が合わない街はあまり栄えていないので不正利用されても痛くない。

許可をしてもいいか……いや、注意書きをしておこう。

「チケットに出発した街を記載して、アヴァロンとその街以外の下車を禁止するのであれば許可をする」

いくら需要が少ない街だからと言って不正利用する余地を作るのはまずい。そんなことをすれば需要が大きい街も気付いたらルートに含まれてしまっているなんてこともありえる。

ただでさえ、アヴァロン行き以外の便が欲しいと各街の名士から日々嘆願書は届いているのだ。

前例を作れば、うちの街はなぜダメなんだと面倒なことを言われる。

俺のところにすらこういう声が集まっているのだ。空の駅の運営者であるコナンナには手紙だけではなく、賄賂なども送られていることだろう。

……もし、コナンナが甘い蜜欲しさにアヴァロンを裏切れば躊躇いなく切るつもりだ。

有用で得難いパートナーであり、恩もある。

だが、舐められて笑っているほど俺は人が良くない。

「パトロン、ただいま!」

部屋の中に、ルーエが入ってくる。

青い髪をした十代後半の美少女。異界の歌姫ルルイエ・ディーヴァ。

「おかえり、今回の教会周りはどうだった」

「順調だね。毎週、信者の数が増えてるよ。パトロンが立てた立派な教会が手狭に感じるね。立ち見しても収まりきらないから、もう半分ぐらいの椅子を撤去して立見席を増やして収容数を無理やり増やしてるんだ」

「それは大変だな」

最大規模の教会のホールを埋め尽くしてもまだ足りない信者たちができているようだ。

聖杯(クリス) 教の信者は日々増加をたどっている。

ルーエの歌と、アウラの酒、その二つの力が大きい。

空の駅でアヴァロンに訪れるのはカジノ目当ての客や、世界各地の名産が揃う商店街目当ての客だけでなく、聖地アヴァロンの巡礼目当てのもの客も多い。

そしてそれらの観光客はアヴァロンの定住者へと変わる場合がある。

アヴァロンは爆発的に増えた観光客の相手をするため、慢性的な人手不足。働く先はいくらでもあるし、好景気なので給料も非常に高い。

その上、税金は安く生活インフラは最高となれば観光に来た客がそのまま定住者になりたいと思うのも無理はない。

中でも 聖杯(クリス) 教の信者たちは定住率が非常に高い。

神に祝福された街アヴァロンで暮らしたいという思いが強いのだ。

「ルーエのおかげだ。ルーエの歌なしに聖杯教は成立しない」

「ふふん、もっと僕をほめてもいいんだよ。ついでにデュークに渡したような、レア酒をプレゼントすればいいよ」

「調子に乗りすぎだ」

ルーエがドヤ顔で胸を張る。

こういう子憎たらしいところもきらいじゃない。

「ちぇっ、あと裏の仕事も報告するね。今月分の裏切りもの調査」

「さっそく見せてもらおう」

ルーエは聖杯教の布教の他にも異空間から内外を監視する諜報部隊の長でもある。

諜報部隊には敵対魔王の情報収集、アヴァロンの秘密の保守の他に、アヴァロンで大きな権力を持つ人間たちの監視という任務も任せていた。

人間たちは、魔王以上に表ではうまく秘密を守るが異空間からの監視には無警戒だ。

そもそも異空間から監視されているという概念すらない。

ルーエの用意した書類をめくっていく。

「ほう、ノルマン商会は交易用のヒポグリフ便を私用しているのか。グランリード王国とラルドラ共和国の交易。アヴァロンを経由しない貿易で随分儲けているな……ノルマン商会のノルマン・リットラーを含めた幹部すべては捕縛して地下牢行きだ。強制労働十年が妥当なところか。私財はすべて没収だ」

「うわぁ、えっげつな」

「ヒポグリフ便を交易用に貸し出す際に契約書に記しているしな。殺さないだけましだ。今度の地下牢はすごいぞ。あえて、最悪の環境を用意している。無料で見物できるんだが、見物しにきた連中は全員青ざめて帰っていく。絶対にここには入りたくないって震えながらな」

空の駅以外にも商人たちにはヒポグリフ便とコンテナを貸し出している。

そして、その際にアヴァロンを経由しない交易は禁止すると説明をしているし、契約書にも記載してあった。

そのルールを破った以上、厳しい処罰は必要だ。

これは見せしめでもある。ルールを破ればどうなるかを他のものにも思い知らせる。

明日にはノルマン商会のルール破りと、その処罰は街中に知れ渡るだろう。

……ちなみに執行猶予や裁判なんてものもない。

俺が 法律(ルール) だし、ちゃんと 法律(ルール) は配布している。守らないほうが悪い。

次々にページを捲っていく。

「……ルーエ、俺は裏の報告書を読むと毎回頭が痛くなるんだ」

「人間ってすごいよね。よく次々にあくどいことを思いつくなぁ」

「まあな、その知恵があるから繁栄してきたんだろう」

ルーエの報告書にはまだまだ不正が山積みだった。

聖杯教の人間スタッフが教会の威光を笠にして信者に対する詐欺や強姦。寄付金の着服……こんなふざけた事が公になれば聖杯教の権威が地に落ちる。強制労働は生ぬるいな死刑だ。

リルナー商会はアヴァロンに本店があるのをいいことに、どこからか仕入れたリンゴに似た果実をアヴァロンリンゴだと言って、他の街で売り払っている。……せっかく積み上げたアヴァロンリンゴのブランドに泥を塗られている。

こっちは強制労働で済ませよう。ただしリンゴを育てているアウラにポーションを作らせて飲ませよう。【ケアルガの書】をマスターしたとはしゃいでいたし、自分の作るリンゴを愛してるアウラのことだ。きっと素晴らしいポーションを作るだろう。

妖狐たちをはじめとした美少女の亜人を誘拐して、高く売り払おうと計画している連中もいた。そういえば、先日妖狐を襲い返り討ちにあった暴漢がいたな。組織立っての変更だったのか。……俺の魔物に手を出そうとはいい度胸だ。こいつらは別の街に男娼として振り払おうか。

これらは一例で、たった一か月の調査結果なのに山ほど不正や不義理が見つかる。

そのすべてをジャッジし処罰を決定する。

ルーエに、捕縛命令とそれぞれの処罰を書いた書類を渡す。

「この通りに対応してくれ。……他の魔王が人間と一緒に繁栄していこうっていう気を無くすのも納得だ」

「パトロンも街の運営を諦めちゃう?」

「いや、やめない。クズが腐るほどいることを思い知らされたが、クズ以外もたくさんいることも知っているからな」

俺がよく行くバーの店主は愚痴に付き合ってくれて話すと楽になる。

他にもいい人はたくさんいる。

クイナを可愛がって、よくお菓子をくれる人のいいおばさん。

ロロノの腕に惚れこんで、わざわざアヴァロンに引っ越してた熱意溢れる鍛冶師。

アウラの手伝いでリンゴの収穫を手伝う元気のいい孤児たち。

彼らのことは好きだ。

人間というのはよくも悪くも多種多様。

それどころか、今日の善人が明日の悪人。その逆もあり得る。

人間はたやすく移ろう。そういうものだと割り切っている。

「へえ、パトロンって優しいんだね」

「いや、優しくはない。道を踏み外した奴にはしっかりと罰を与える。今日、おまえに指示したようにな」

「りょーかい、しっかりと責任をもって諜報部隊が処罰するよ」

ルーエはどこか上機嫌そうな口調だ。

ルーエはもう帰らせてもいいが……。

「さて、俺はこれから新設された住宅区を見に行く。おまえも来るか」

なんとなくその言葉が出た。もう少し、ルーエと話をしたい。

そんな気分になったのだ。

「うーん、今日のお仕事はこれで終だしね……うん、僕も行くよ」

そうして、俺とルーエは屋敷を出た。

住宅区はもともと【鉱山】だったフロアを地下に移し、新たに作った【平地】に用意したものだ。

どうせ作るならと、エルダー・ドワーフ、ハイ・エルフたちが全力で素晴らしいものを作ってくれている。

今日はその視察だ。

新設の住宅区はアヴァロンの新たな希望だ。今から見るのが楽しみだ。

……そして、住宅区以外にもとびっきりのものを作っている。こっちは人間のためというより、むしろ魔物たちのための施設だ。

あれを見ればルーエはきっと驚くだろう。