軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十九話:アンデッドの貴族

制限時間は残り四〇分ほどある。

まずは、エルダー・ドワーフに、今回の【戦争】に最適化したゴーレムたちのプログラミングを依頼した。

ゴーレムたちは決められたことしかできない。

だからこそ事前に完璧に行動ルーチンを決めておく必要がある。

今回の動作は極めて単純だ。そんなに時間はかからないだろう。

「マスター、行ってくる」

「任せた、エルダー・ドワーフ」

あっという間にプログラムを終えたエルダー・ドワーフはゴーレムたちと共にダンジョンのほうに消えていった。

ゴーレムたちの配置、銃と罠の設置と仕事は多いが、彼女なら完璧にこなしてくれる。

「天狐は手伝わなくて大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ。あっちはエルダー・ドワーフの得意分野だからね」

エルダー・ドワーフはある意味、俺以上に近代兵器を熟知しているし、ゴーレムたちは力仕事が得意だ。俺たちが言っても手伝えることは少ない。

その間に俺は俺の仕事をしなければならない。

【人】のイミテートメダルを購入する。

そして、手には【死】のイミテートと、【人】のイミテートがそろった。

【死】については【夜会】で手にいれたばかり、【炎】のイミテートを欲しがっていた魔王がいたので、イミテート同士の交換が成立した。

イミテートの交換で需要が高いのは、元がAランクであることはもちろん、汎用性が高いメダルであること。……そして持ち主が滅びた魔王であるとより喜ばれる。【炎】はその全てを満たしたため、引く手数多だった。

「天狐、今から【死】と【人】で魔物を作る」

「天狐の仲間がまた増えるの!」

「とは言っても、天狐たちよりずっと弱い魔物になるけどね」

【死】はアンデッドモンスターたちの属性、【人】は人型の魔物を作れ、なおかつ魔物に知性を与える。

高位のアンデッドが作れれば今まで以上にスケルトン部隊の運用がし易くなるんだろう

祈りを込めながら、俺はメダルを握りしめた。

「【合成】」

手の中で激しい光が生まれる。

【死】と【人】がまじりあう。

いつもなら、【創造】の力で無数の可能性の中から、望むものを手繰り寄せるが、今回は通常の【合成】。そんなことはできない。

ひどく不安だ。何ができるかわからない。

【創造】のありがたさが身に染みる。

光が収まり、人型の魔物が生まれた。大きさも一メートル後半の人に近いもの。

それは骸骨だった。しかし、スケルトンとは比べものにならないほど濃い闇の気配をまとい、上等なローブを身に着けている。

「俺は、【創造】の魔王プロケル。君の種族を教えてほしい」

言語が通じることに期待して、俺は骸骨の魔物に問いかける。

骸骨の魔物は、なかなか返事をしない。

やはり、そこまで知性の高い魔物ではないのか?

そんなことを考えていると、骸骨の魔物が口を開いた。

「我が君。 私(ワタクシ) は、ワイト。死の国の侯爵でございます。以後、お見知りおきを」

骸骨の魔物が貴族のように優雅な一礼をする。

これで確信する俺は当たりを引いたのだ。

「頼りにしている。ワイト。俺と話せているが、こいつらと話はできるか?」

今出しているスケさんだけではなく、収納している全てのスケルトンを呼び出す。

みんな、訓練を受けて銃を扱えるようになったスケルトンたちだ。俺の自慢のスケルトン部隊。

カタカタと骨を鳴らしながら、スケさんがワイトに近づいた。

「もちろんでございます。我が君よ。おおう、なんと可憐で麗しいお人だ」

ワイトがスケさんの前に跪き、手の甲にキスをした。

骸骨同士のキス。激しくシュールだ。

「そのスケさん女性だったのか……」

俺はそのことに大きな衝撃を受けていた。

「我が君、どこからどう見ても乙女ではありませんか」

ワイトとスケさんがカタカタと音を鳴らし合う。

そして、ワイトは考え込む仕草をする。

このワイトは、骨なので表情は見えないが、いちいち仕草が大げさなので、考えていることがわかりやすい。

スケさんがカタカタ音を鳴らさなくなると、ワイトが俺のほうを向いた。

「我が君、是非お見せしたいものがあります」

「見せてみろ」

「はっ」

ワイトのほうを見ると、スケさんが持たせているポーチにある弾倉と、肩にぶら下げているアサルトライフルの弾倉を交換した。

どんなに教えてもできなかったことが、実現された。感動すら覚える。

「ワイト、お前が教えたのか」

「はい、そうです。 私(ワタクシ) は下位アンデッドの記憶を読み取る力、操る力がございます。だからこそ、彼女の記憶を読み取り、どうしてもあなたの期待に応えられず、苦しんでいた動作をさせてやったのです」

ワイトがスケルトンの一体からアサルトライフルを受け取る。

そして、滑らかな操作で弾を充填し、空に向かって射撃を行った。

「さらに記憶を読み取ることで、他者の経験をわが物とすることが可能でございます」

その言葉は頼もしかった。

なにせ、今から銃を教えている時間はない。

ワイトに予備のアサルトライフルと替えの弾倉及び弾丸が入ったポーチを渡すと、恭しく受け取ってくれた。

「……そして、我が君よ。改めて忠誠を誓わせてもらいたい。創造主だからではなく、我が心が認めた真の主として」

ワイトが跪いた。

その姿には、気品と覚悟があった。

「スケルトンたちを通じてわかりました。最弱の魔物である彼らをあなたは愛おしんでくれた。大事にしてくれた。そして、彼ら全員、もっとあなたの力になりたいと願っている。素晴らしい人望です。そのような主の元に生まれたことを、神に感謝します」

「頭をあげてくれ。ワイト。お前の力頼りにしている」

「このワイト。砕け散るまで我が君のそばに」

こうして、主従の近いが終わった。

ワイトはさっそく全員に、弾倉交換を教えこんだ。

よくよく見ると、スケルトン全員の動きが滑らかに早くなっている。

さすがは、地獄の侯爵と自称するだけはある。人を導くのが得意なのだろう。

そんなワイトのステータスを確認する。

種族:ワイト Bランク

名前:未設定

レベル:56

筋力D 耐久D 敏捷C 魔力B 幸運E 特殊B+

スキル:死霊の統率者 中位アンデッド生成 死霊活性 不死

ステータスはかなり低いが、特殊能力が優れている。

死霊の統率者は、アンデッドの記憶を読み取り、さらに操るスキル。スケルトンたちをうまく導いてくれるだろう。

中位アンデッド生成は死体を材料に最高でCランクまでのアンデッドを作れるのでDPの節約ができる。

特筆するべきは、死霊活性だろう。自らの支配下にあるCランク以下のアンデッドを全て強化できる。

彼が居れば、スケルトン軍団は統率が取れ、俊敏になり飛躍的に強くなるだろう。

俺の欲しいと思った能力全てを備えている。

できれば、【創造】を使ったSランクで生み出してやりたかった。そうすれば、上位アンデッド作成をもってうまれただろうに。

その後、【風】と【獣】のほうはランクBの魔物、グリフォンとなった。頭が鷲で、体が馬の魔物。

知性は並み程度だが、巨躯であり人を乗せて飛べるのが大きい。

もしかしたら、今回の戦いに役立つかもしれない。

グリフォンを生み出したころ、エルダードワーフが全ての下準備を終わらせて戻ってきた。

「マスター、戻りました」

制限時間五分前。

残りのDPを全てイミテートメダルにするのも、芸がない。

そう言えば、エルダー・ドワーフが助手が欲しいと言っていたのを思い出した。

「エルダー・ドワーフ。お疲れさま」

「マスターの指示通り、ゴーレムを配置してきた。プログラミングも完璧」

「えらいな。ご褒美をあげよう。助手が欲しいと言っていたから、Bランクのドワーフ・スミスを購入しようと思う」

「マスター、ありがとう! これで研究が捗る! Bランクのドワーフ・スミスなら、かなりの作業を任せられる。私は頭脳労働に集中できる!」

俺は、エルダー・ドワーフの同系統かつ2ランクしたのBランクの魔物、ドワーフ・スミスを二体ほどDPで購入した。一体1200DPかかるので、こういう場でもないと手が届かない。

ドワーフ・スミスは褐色、黒髪の十代半ばぐらいの背が低めの少女たち。

天狐やエルダー・ドワーフのような超絶美少女とはいかないが可愛いほうだ。

さっそくエルダー・ドワーフが、ドワーフ・スミスにいろいろと教えている。

可愛らしい少女たちの集まりは大変眼福だ。

ドワーフ・スミスたちは圧倒的な上位種であるエルダー・ドワーフのことを崇拝の眼で見ていた。これならエルダー・ドワーフのいう事を良く聞き彼女を助けてくれるだろう。

後ろでマルコがうんうんと頷き、口を開いた。

「ワイトやグリフォンを作ったときは、あのプロケルが、ロリ以外を作った!? って驚いたけど、やっぱり君は君だよ。安心した」

親指をぎゅっと押し出すポーズをしてくるマルコ。

俺はもう何を言っても無駄だと判断して、ただ戦争のことを考えることにした。

慌ただしいが、なんとか制限時間に全ての準備が整った。

~【風】の魔王 ストラス視点~

「どう? 【竜】の魔王アスタロト様、私のダンジョンは!」

私は自信満々に親である、アスタロト様に自慢のダンジョンを見せる。

限界まで考えに考え抜いたダンジョン。

私の魔物は、飛行能力をもっているものが多い。足場が不安定で、飛行できる魔物が圧倒的に有利な渓谷のフィールド。

落とし穴が無数に用意された迷宮。

そして、足場が悪い溶岩地帯の三部屋を用意した。

機動力が優れる私の魔物たちのことを考え、どの部屋も最大限広くしてある。

きっと、【創造】の魔王プロケルは、一部屋だって突破できないだろう。

ポイントはぎりぎりまで使って、数十ポイントしか残っていない。

「ふむ、なかなかいいダンジョンだ。よくやったストラス」

アスタロト様は、優しいお爺さんというような見た目だが、私の親にふさわしい、最強クラスの魔王の一柱。

【獣】の魔王マルコシアス、【竜】の魔王アスタロト、【刻】の魔王ダンタリアンの三人の魔王は、現時点の最強候補だと言われている。

「当然だわ」

「ストラス。お前は優秀だ。恵まれた属性、Aランクかつ汎用性の高いメダル、最強クラスのユニークスキル。頭もよく、戦闘能力も高い。間違いなく歴代の魔王の中でも、もっとも才能をもった魔王の一人だろう」

どこか、アスタロト様は憐れむように私を見ている。

「なにを今更、私が天才であることはわかってるわ。そんな私にはむかった、身の程知らず。あっという間に蹂躙してやる!」

Cランクの魔物しか作れない無能。

スケルトンなんかを連れ歩く恥知らず。

それでいて、傲慢で鼻もちならない奴。

他の魔王の見ている前で、けちょんけちょんにして笑いものしてやる。

「君はまだ若い。敗北はいい経験になるだろう。敗北はなるべくはやく、小さな戦場で味わうほうがいい。今回の【戦争】は適度な痛みを得る数少ない機会だ。立ち直れる程度の挫折なんて都合のいいものはそうそうない。たくさん学ぶといい」

アスタロト様の言葉はまるで、私の負けを確信しているようで。

私はひどくかっとなって、アスタロト様に背を向ける。

「目にもの見せてやる」

そして、ユニークスキルの発動をする。

【風】のユニークスキルは、さまざまな派生魔術が存在する。

その中でも最強の能力、【偏在】。その力を私の全ての魔物に同時にかける。

これは、ただでさえ圧倒的な私の戦力を倍増させる。私にふさわしい最高の力だ。みんな勘違いしている。これは戦いなんかじゃない。私によるただの一方的な虐殺だ。

自然と笑みがこぼれる。これから未来の大魔王、【風】のストラスの力を全ての魔王に見せつけるのだから!