軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十話:ロロノの失敗

ロロノがティロににじり寄る。

そして、三連装のリボルバー機構付きの巨大炸裂式杭打ち機……パイルバンカーが専用の布製の皮鎧によって、ティロの胴体に巻き付けられる形で取り付けられた。

ティロがすごく重そうにしている。

無理もない。杭を収納した状態でもティロの全長とほぼ同じ大きさの鋼鉄の塊だ。

「やー♪ ティロちゃん、かっこいいの!」

クイナが目をきらきらさせている。

クイナの心の琴線に触れてしまったらしい。

「ぐるぅ……」

だが、ティロのほうは微妙な反応だ。

右側だけに巨大な重量を装備したのだ。単純に重量の問題だけでなく、重心が狂って歩きにくそうだ。

「斥力場生成具足【タラリア】は前座。こっちが本命。炸裂式巨大杭打機……【モーテリウス】。破壊力に特化した武装。ゼロ距離からすべてを打ち砕く。単純な威力なら、クイナのショットガンを上回る。しかも、魔力消費はしない。三連装のリボルバーの一発一発には、クイナの毛をバッテリーにした炸裂魔術と超高性能爆薬が込められていて、圧倒的な爆発力で巨杭を押し出す」

見た目からして凄まじくごつく見るものを圧倒する威圧感がある。質量の大きさはそのまま威力の大きさに繋がるのだ。

「並みのターゲットでは威力を試すことすらできない。……だから、これを使う。前の戦いで破壊されてコアを抜き出したアヴァロン・リッターの残骸。鋳つぶすつもりのがあるから、それで実験」

ロロノが口笛を吹くと、お手伝い用のミスリル・ゴーレムがアヴァロンリッターの残骸を運んできた。

「ロロノ、まさかアヴァロン・リッターを貫けるのか」

「理論上は可能。そう作った」

アヴァロン・リッターはオリハルコン合金製。

Sランクの魔物ですら貫くのはひどく難しい。

「さあ、ティロ。使ってみて。使い方は簡単。一定量の魔力を込めれば、杭が射出できる」

「ティロちゃん、がんばって。はやく、どかーんってなるところが見たいの!」

クイナとロロノの期待に満ちた視線に押されてティロがアヴァロンリッターの前にたどり着く。

それにしても、歩きにくそうだ。

「くぅーん」

情けない声をあげつつ、ティロが筒をアヴァロンリッターに向ける。

「あっ、ティロちゃん。火薬を使うときは耳をペタンっと倒すの! じゃないと頭ぐわんぐわんってなって、しんどくなるの!」

クイナが耳のいい魔物特有のアドバイスをする。

言葉の通り、クイナはキツネ耳をぱたんと倒す。ティロもそれをまねした。可愛くてほほえましい。

「がう!」

そして、耳を倒したティロが仕切りなおしてアヴァロン・リッターを向いた。

炸裂式巨大杭打機……【モーテリウス】に魔力を注ぐ。

するとかちりと音が鳴り弾薬が装填され、次の瞬間。大地を揺るがす咆哮が響き渡る。

空気が震える。

鳥肌がたち、肌がぴりぴりとする。

【モーテリウス】から巨杭が打ち出され、アヴァロン・リッターの残骸を粉々に打ち砕いた。

あのアヴァロンリッターが一撃で粉々。

なんというすさまじい威力だ。思わず目を見開く。

「想定以上だ。ここまでとは思っていなかったぞ」

「ん。計算通り。【モーテリウス】の 魔術付与(エンチャント) は二つ。一つは【硬化】。あまりの威力に銃身が耐えられないから硬くした。もう一つは【粉砕】。普通なら杭がぶつかった瞬間、反作用が発生してはじかれるけど、【粉砕】はその反作用を攻撃力に転換する。反動がなくなるどころか、反動をも力に変える。もちろん、打ち出すときの火薬の反動も威力に変えた。これで貫けないものはない」

いつもより、ロロノが饒舌だ。

それも無理もない。ここまでぶっとんだ武器ができるとは思っていなかった。

攻撃力という一点では無敵だ。

「ロロノちゃん、すごいの! やっぱりクイナもほしいの! 杭どーんっていうの、クイナの趣味に合うの!! 遠くからちまちまじゃダメなの! 魔物は近づいてどかーんなの!」

相変わらず、クイナの趣味は偏っている。

クイナは近接戦闘大好きだ。

「考えとく」

ロロノはそっけない口調だが、喜びが隠しきれないようだ。

今回のパイルバンカーには相当の自信があったようだからな。

ティロも気に入ったはずだ。そう思って、ティロのほうを見る。

するとティロは、よろよろとした足取りで振り向き倒れた。

舌を出して、目がぐるんぐるんと回っている。……あれ、やばくないか。

しばらくすると、立ち上がった。

「きゃうん! きゃうん! きゃん、きゃん!」

そして暴れまわり、胴体に巻き付けられている皮鎧を地面にこすりつけて、強引に【モーテリウス】を取ろうとしている。

かなり、必死だ。【モーテリウス】から全力で逃げようとしている。

「ティロちゃん!」

クイナが駆け寄り、【モーテリウス】を取り外した。

「きゃんきゃん!」

【モーテリウス】取り外されたティロは、悲鳴をあげながらクイナの背中に隠れ、顔だけだしてロロノを見る。ひどい怯えようだ。

「どうしたの、ティロちゃん?」

「きゅうーん、がうがう、ぐるぅ」

ティロが悲痛な声をあげて、何かをクイナに訴えかけていた。

クイナはしきり相槌を打つ。

「うんうん、それは大変なの。ティロちゃん、可愛そうなの」

「がるるぅ……」

「わかったの。伝えてくる。もう怯えなくていいの。ティロちゃんの嫌がることはクイナがさせないの」

クイナがこちらに来る。そして、ティロは工房の陰に隠れて様子を伺っている。

「おとーさん、ロロノちゃん。ティロちゃんは【モーテリウス】を使いたくないって言ってるの。【タラリア】だけでいいって」

まあ、あの反応ならそうだろうな。

なにか、致命的な欠陥があるようだ。

ロロノが納得していないようでぶすっとした顔で口を開く。

「どうして? ゼロ距離から最高威力を出せる。火薬の反動と衝突の反動を威力に転換するから空中でも使える。完璧な武器のはず」

ロロノの言う通り要件は満たしている。

ゼロ距離でも圧倒的な威力を発揮できる。

反動を破壊力に変えるという 魔術付与(エンチャント) のおかげで、足場のない空中でも威力を発揮出る。

なにより、本人の魔力を一切消費しない。

瞬間移動で一気に距離を稼げるティロと一撃必殺の【モーテリウス】は相性抜群に思える。

「えっとティロちゃんはね……重すぎて動きにくいし、片側だけ重くなると重心が狂って辛い。爆発音がすごすぎて耳を伏せていても気絶しそうになって頭がぐわんぐわんする。火薬の匂いがたまらなく苦痛。一発撃っただけで銃身が熱くなって、焼きごてをお腹に巻き付けられているみたいで拷問。こんなの使ってたら、頭がおかしくなるって言ってるの」

ロロノが絶句し、崩れ落ちる。

……というか、ティロはそこまで思考できる頭脳の持ち主なのか。あのぐるるぅにこれだけの情報量が込められていることに驚きだ。

「……ぐうの音もでない。確かに大失敗。正直、今回のパイルバンカーはマスターに【創造】で出してもらったアニメに憧れで作った。ティロのためじゃなくて、作りたくて作った。鍛冶師失格」

気持ちはわかる。たしかにあれを見ると杭打機を作りたくなる。実際、ティロに使えなかっただけで性能的には十分なものをロロノは作った。

……それに、かなりかっこよくて震えた。

「ロロノちゃん、誰にでも失敗はあるの! 【タラリア】のほうはティロちゃんが気に入ってくれたから、それでOKなの!」

「ん。【タラリア】を全力で改良する。ティロには悪いことをした。おやつ抜きはなしにする。それから、あとでティロの好きな巨大骨付き肉を買ってくる」

ロロノのいいところは、こうしてすぐに自分の過ちを認められるところだ。

それに、【モーテリウス】も無駄じゃない。

ごほんっ、と咳払いして注目を集める。

「ロロノ、たしかにティロには使えなかったが、アヴァロン・リッターの武器としてはいいと思うぞ。いっそ右腕そのものを【モーテリウス】にして、ブースターで突っ込んで【モーテリウス】で仕留めるというのも面白そうだ」

「……かっこいい。マスターはさすが。さっそく、流用してみる。バーストドライブ対応型の一体を右腕を【モーテリウス】に換装してテストする。それなら、クイナだって一撃仕留められる」

「どうして、仮想敵がクイナなの!?」

クイナが尻尾の毛を逆立てて抗議する。

まあ、冗談でもあんな凶器の対象にされるのは嫌だろう。

バーストドライブを発動して、超速のブースターで【モーテリウス】を構えたアヴァロン・リッターに追いかけまわされるなんて悪夢そのものだ。

「なにはともあれ、ティロは【タラリア】という最高の武器を手に入れた。試作武器は大成功だよ。三人とも、買い物をして屋敷に戻ろう。ひどい目にあったティロと、がんばって武器を作ってくれたロロノにはご褒美だ。好きなものを買ってやるぞ」

「ぐるるぅ♪」

「巨大エビ」

いつの間にか、ティロが戻ってきていた。もう、【モーテリウス】を使わなくていいと安心したのと、ご褒美という言葉に反応したのだろう。

ロロノも、大好物を思い浮かべて、立ち直ってくれた。

一人だけ、ご褒美をもらえないクイナが膨れている。

この子には、美味しそうな屋台を見かけたら何か買ってやろう。

そうして、俺たちは買い物をしに街に向かった。

それにしても、今回は意外だったな。

思いつきで作った、既存技術の寄せ集めである【タラリア】最高の武器で、満を期して登場したロロノの自慢の逸品、【モーテリウス】が失敗作なんて。

だが、無駄ではない。

【モーテリウス】はアヴァロン・リッターの決戦兵器として活躍するだろうし、なによりロロノは今回の失敗で大切なことを学んでくれた。

これで、アヴァロンの戦力はまた充実した。

半年後には、いったいアヴァロンはどれだけ強くなっているだろうか。

それを想像すると、自然とにやついてしまった。