軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二話:幸せな日常と反撃の準備

王族への手紙を書き終えた。

これは明日、送ろう。

いきなり、王家のものが来るわけではなく使節団が派遣され、そのあと王族のとある方がやってくるそうだ。そのタイミングは【黒】の魔王との交渉の後になる。

気になるのは王族はどこまで知っているかだ。

神としてあがめられているのが魔王と知っているなら話は早い。。

もし、そうであれば【黒】の魔王のことをかなり苦々しく思っているはず。

自分の国を好き勝手操られていい気がするものか。

必ず、不満はある。そこを突こう。

さて、それはそれとして。

「ただいまなの!」

「マスター、今もどった」

クイナとロロノが帰ってきた。

クイナはさっき買った服ではなくいつもの戦闘服。ロロノは顔を煤で汚していた。

煤をふき取ってやると、ロロノが恥ずかしそうな顔をした。

「二人ともおかえり。さっそくごはんにしようか」

「やー♪ いっぱい運動したあとはごはんが美味しいの」

「……限界まで頭を酷使した。糖分の摂取が必要」

二人とも、お腹が空いているようだ。

別に魔王も魔物も人間の感情が主食であり、アヴァロンにいる限りは食べ物を得る必要はないが、娯楽として三食楽しんでいる。

「では、今日もがんばってご飯を作りました。牛肉が安かったので、牛肉のワイン煮込みですよ」

「やー♪ アウラちゃんのワイン煮込みは最高なの」

「同意。あれはほかでは食べれない」

アウラは風の魔術を駆使し、普通の鍋で圧力鍋のように短時間でやわらかい煮込みを作る。

いわゆる魔術の無駄遣い。ただ、味のほうは最高だ。

俺もアウラの牛肉のワイン煮込みは好物なので、楽しみだ。

たまに思うのだが、アウラが厨房にたつとその後ろ姿が魅力的にうつる。ぐっとくるものがあるのだ。

クイナやロロノもたまに厨房にたつときがあるが、そのときは可愛らしいとしか思えないから不思議だ。

「では、いただきましょう」

アウラが大皿にこれでもかとたっぷりワイン煮込みを盛った。

付け合わせは、トマトとレタスのサラダに山盛りのマッシュポテト。

ちなみに、ジャガイモはアヴァロンの重要な作物の一つ。

この世界には存在しなかったものを、俺の【創造】で生み出し、増やしたもの。

ジャガイモは育てやすく収穫量が多い。エルフの祝福を受け、天候管理されたアヴァロンであればなおさらだ。

今では農家たちがこぞって育ててアヴァロン中で育てられているし、ジャガイモ料理もいたるところで提供されて人気がある。

アヴァロンの外でも売れているし、聞いた話では外でもジャガイモの生産が始まりだしたらしい。農民たちが種芋を売ったのだろう。

味はエルフの祝福を受けたアヴァロンのほうが圧倒的なので、アヴァロンのジャガイモの人気に陰りがでることはない。それに、アヴァロンの外がジャガイモのおかげで豊かになれば、人間が増える。餌が増えるのは歓迎だ。

そんなことを考えていると食事が始まる。

「やっぱり、アウラちゃんのワイン煮込みは最高なの。このソースをほくほくのマッシュポテトに絡ませるともっと最高なの」

「……お酒がすすむ」

クイナは山盛りのマッシュポテトをがんがんかきこみ、ロロノは強い蒸留酒をストレートでどんどん飲んでいてる。

ロロノはドワーフということもあり、酒が大好きだしザルなんて通り越してワクだ。ロロノが酔っているところを見たことがない。

昔は、アウラは子供は飲んじゃいけないと酒を止めていたが、そういう種族だと理解し、今では好きに飲ませている。

ちなみに、クイナのほうは酒は苦くてまずいと一切飲まない。味覚が子供なのだ。

「ロロノ、酒を飲みすぎると成長しないぞ。育ちざかりなんだから」

ロロノはアウラとクイナの胸を見てから自分の胸を見て……蒸留酒の瓶をカバンの中にしまい込んだ。

どうやら、ロロノはまだまだ成長したいらしい。

「わかったお酒はやめておく」

新たに取り出したワインをぐびぐび飲む。

「まて、ロロノ、それは酒じゃないのか」

「これはジュース。度数が五〇パーセントを切るのを酒とは言わない」

真顔でいい切る。

さすがはドワーフ。なんたる強さだ。

アウラのほうを見ると、クイナやロロノが食べているのをうっとりした顔をで見つめていた。

かわいい子が大好きなアウラにとって、かわいい子が自分の料理を美味しそうに食べるのは最高に楽しいらしい。

いろいろな女の子を愛でているアウラだが、一番のお気に入りはずっとクイナとロロノらしい。

冗談のように山盛りにされたワイン煮込みもマッシュポテトとも一瞬で消えた。

育ちざかりの子たちの胃袋は底なしだ。

食事が終わって少し談笑してから俺はお土産に買ってきたシュークリームを取り出す。

「デュークがアヴァロンで一番おいしいって言ってたシュークリームを買ってきたんだ。留守をしてくれたロロノは特別に二個だよ」

ロロノの皿に二つ。ほかのみんなの皿には一つもる。

「うわーい、甘いお菓子なの!」

「生クリームたっぷりのお菓子。大好物。父さんありがとう!!」

「ご主人様、これいつも売り切れで買えないナシュラルタのシュークリームじゃないですか、よく買えましたね」

「運が良かったのかな?」

実のところ、とっくに売り切れていたが俺の顔を知っていた店主が気を利かせすぎて、その場で焼いてくれた。

そういう特別扱いはやめてくれと言ったが、譲ってくれなかった。

……複雑な気持ちになったがこの子たちが喜んでくれるなら構わないだろう。

「うわああ、皮がサクサクなの」

「こんなにキレのある生クリームは初めて」

「サクサクの生地にふんわりしたクリーム。ん~、最高です」

みんな口元にクリームをつけながらシュークリームに夢中になる。

あれだけ食べたあとなのに、よく入る。

俺も口にした。すごいな、時間が経っているのに生地がしけっていない。口に入れた瞬間、さくっとした歯ごたえ、芳ばしい香りが広がる。

そして軽やかなホイップクリームが口の中に溢れる。

ほどよい甘さと上質な生クリームの味、よほど材料がよく、職人の腕がよくなければこうはならない。

最近、卵黄を混ぜ込んだカスタードクリームもはやりだしているが、個人的にはシュークリームは軽やかなホイップクリームのほうが合うと思っている。カスタードだと重すぎる。

「クイナ、口元にクリームがついてる」

「おとーさん、とって」

クイナが顔を突き出してくるので指で救う。

すると、その指をクイナがしゃぶってくる。

「甘いの♪」

本当にこの子は甘えん坊だ。

ロロノの視線を感じて、そちらを向くと同じようにクリームがついていたので、同じように指で救ってやると、真っ赤な顔でクイナの真似をして指をくわえる。

アウラは相変わらず、クイナとロロノをみてうっとり。

……こういう何気ない日常が一番癒される。

こんな日々が続けばいいと願ってしまう。

「さて、ご主人様。お腹が膨れたことだし。さっそく温泉に行きましょう!」

「やー♪ 今日もみんなでお風呂なの!

「ん。疲れを抜いて、夜のお仕事もがんばる」

日課となる。温泉での治療だ。

エルフの祝福を受けた温泉につかると、万病に効く。

とくに、エンシェント・エルフであるアウラが愛用している、俺専用の温泉は効果が高い。

当然、俺の魔力消失にも効果があった。

クイナたちは、自分用の桶を取り出し、着替えやタオル、特製の石鹸などを取り出していく。

それに加えて、アウラはなぜか着替えを多めに用意しストラスを抱えて、自分の桶の取ってをエンリルに咥えさせた。

エンリルはぱたぱと桶を咥えたままアウラの隣を飛んでいる。

「……アウラちょっと待て。何をしようとしている」

「みんなでお風呂に入るんです」

「それはわかる。ストラスも一緒か?」

何を当たり前のことを言っているのかと、不思議そうな顔でアウラは俺を見ている。

「一日でもはやく目を覚ましてもらうために、温泉治療をしないわけないじゃないですか」

「……みんなで先に行ってきてくれ。俺はあとで入るよ」

そういうなり、クイナがほほを膨らまして裾を引っ張り、ロロノが逆の裾をつかみんで無言の圧力をかけてくる。

「だめなの! みんなで一緒のお風呂なの」

「マスターがいないと寂しい」

「えっと、二人の気持ちはわかるが。ストラスに悪い。そうだ、アウラ。おまえは時間をずらして後でストラスを」

「ご主人様、ひどいです。私を仲間外れにするなんて。私がどれだけみんなとお風呂に入るのを楽しみにしているか知っているのに。……でも【命令】ならしがたいます。私はご主人様の魔物ですから。泣く泣く受け入れますよ」

そんなことを言われて、【命令】できるほど俺は冷酷な魔王ではない。

しょうがない。

なるべくストラスのほうを見ないように努力しよう。

「わかった、みんなでお風呂だ」

俺の魔物たちが笑顔になり、ハイタッチ。

この流れ、もしかしたら計算して作ったのか。

この子たちもずいぶんとたくましくなったものだ。

俺は苦笑し、風呂の準備をし始めた。

「やっぱり、温泉はいいな」

「極楽なの」

「ん。力が抜けていく」

「やっぱり、上気した肌のクイナちゃんとロロノちゃんは可愛いです」

流されるようにみんなでお風呂。

こうしてお風呂に入ると娘たちの成長が確認できる。

ロロノも少しずつだが成長している。

父親としての喜びをかみしめる瞬間だ。

「ご主人様、安心してください。ストラス様の体はちゃんと私が見ています。溺れも、のぼせもさせません」

ちなみにアウラは眠ったままのストラスを抱いて湯船に入っている。

なるべく見ないようにしているが、ちらりと視界に映ってしまったストラスは綺麗だった。

胸は大きくないが、すらっとした肢体にきめ細かな肌。

男を引き付ける魅力がある。

「おとーさん、今日も尻尾洗って」

「マスター、私が背中を流す」

クイナとロロノはいつものようにはしゃいでる。

空を見上げる。

露天風呂なので星が見える。

温泉に入りながら、見上げる星は一段と綺麗だ。

ちなみにエンリルも一緒だ。

エンリルも温泉に入っている。こころなしか表情が緩んでいる。俺と目が合うとぷいっと顔を逸らした。相変わらず可愛くない。

さて、俺もしっかりと体を温めないと。

【黒】の魔王との交渉までにベストな体調を取り戻すのも俺の仕事だ。

風呂のあと、ロロノの工房に併設された倉庫来ていた。

そこで【創造】を使い、魔力が許す限り、とあるものを生み出す。

新たな発明品の材料に必要なものだ。これは絶対に、【黒】の魔王との戦いの中で必要になる。ある意味、爆弾よりもよっぽど壊滅的なダメージを与えられる。

倉庫に【創造】した材料を補充し終わってから工房に移動した。

夜の分の仕事をしているロロノに向かって口を開く。

「ロロノ、すまないが頼みがある」

たくさん仕事を任せているロロノには悪いが、すみやかにとある発明品が必要だ。

【黒】の魔王の手札が読み切れない以上、こちらも少しでも多くの手札を揃えないといけないのだ。

戦いはもう始まっている。