軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

84.髪長の眠り姫

土竜水草の周りを掘って、土をどかした。

次第に全貌が見えてきた。

土の中にあるドラゴンの部分は、小型種と中型種の間くらいのサイズだ。

さほど大きくはないが、かといって小さいわけでもない。

そこそこのサイズである。

そして、掘り起こしつつ土をどかしていくとわかる。

土の中に埋まっていたのに――いやだからこそか。

ドラゴンの鱗は傷一つ無い綺麗なものだった。

その間、ずっと耳を澄ましていた。

『……』

もはやはっきりとした、目の前の土竜水草から聞こえてくる息づかい。

それは規則的に続いているものの、言葉といったものはまったく聞こえてこない。

途中で触れたり、声をかけたりしたが、返事はまったくない。

やがて――土竜水草の竜の部分を全部掘り出した。

「ふぅ……」

『うししししし、お疲れ様なのです』

「生きてる……よな、これって」

『めちゃくちゃ生い茂ってるです』

「むっ」

俺は眉をひそめ、そして苦笑いした。

まったくの虚を突かれた様な思いだ。

俺は、動かない竜を見て、生きてるかどうかと疑いだした。

しかしちびクリスが言うように、上の「水草」の部分は生い茂っていて、返事がなかろうともそれだけで「生きてる」のははっきりしている。

「不思議な生き物だ」

『世の中色々なのです。わたしもザ・不思議なのです』

「そもそもお前は生き物かどうかも怪しいだろ、物は食べない、繁殖しない、死にもしない」

『うししししし、確かに私は生き物かどうか怪しいです』

ちびくりすは俺の突っ込みにおおいにウケた。

しっぽがピターンピターンと地面を立て続けに叩いている。

俺は考えた。

ちょっとだけ意地になった。

ちびくりす――クリスに聞けば答えが返ってくるだろう。

だが、不思議な土竜水草を目の当たりにして、それを自力でどうにかしたくなった。

真っ先に、「直前」の出来事を思い出した。

パトリシアのことだ。

契約の魔法には本来血がいる。しかしパトリシアのかりそめの肉体には血がない。

だから別の方法として、擬態スキルで人間の姿にして、キスという形で契約した。

あれが……一番近いかな。

「樹液が出かねないしなぁ……」

俺はそう独りごちだ。

目の前の土竜水草から竜具製作の力を手に入れたい。

ドラゴンの姿をしているから、それは契約でどうにかなるかもしれない。

契約をするのならまずは血を混ぜる……のだが。

動物なのか植物なのかはっきりしないというかどっちでもあるかもしれないから、肌を切ったら鮮血じゃなくて樹液が出てくる可能性がある。

だから血による契約はやめた。

代わりに、パトリシアの時と同じ方法でいこうと思う。

俺は、土竜水草に擬態のスキルをかけた。

目の前の土竜水草がみるみる内に姿を変える。

一人の美女になった。

髪の毛が身長のざっと三倍はある、それがまるでシーツの様に広がっている美女。

超ロングヘアーの美女は、安らかに寝ていた。

「ふむ」

俺は少し考えて、近づいた。

罪悪感は無くもないが――今の所、俺にこれ以外の方法は思いつかない。

「クリス、頼む」

『はいですー』

ちびくりすに魔法陣を広げてもらって、髪長の眠り姫に近づき、そっと唇を重ねた。

『うししししし、その相手にその選択肢が出来る心友はさすがなのです』

ちびくりすの言葉の直後、髪長の眠り姫の体からまぶしい光が放たれる。

契約が成立する、もうなじみとなった光だ。

そして――光が俺の体の中に取り込まれる。

力が増えた。

契約由来のスキルが増えた。

それが、はっきりと感じられた。

俺はクリスが話した、「髪を売る」話を思い出して、自分の髪の毛を数本引き抜いた。

それを握り締め、目を閉じて念じた。

そして――髪の毛が分かれる。

竜人変身用に大量に取っておいたエネルギーを一部取り込んで、変化する。

現われたのは、鞍。

バラウール種に取り付ける、乗客の座り心地をよくするための鞍。

つまり――竜具。

『うししししし、無事成功なのです』

「……ああ」

俺ははっきりと頷いた。

これなら――金になるぞ。