軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

79.戦竜母艦

改めて、目の前に現われた巨大なドラゴンを見た。

サイズは本当にでかくて、今までに出会ったドラゴンの中でも飛び抜けてデカい。

うちのギルド「ドラゴン・ファースト」にいるドラゴンで一番大きいのがフェニックス種のクリスで、そのクリスは中型種に分類される。

そのクリスのざっと三倍はある位の大きさだ。

「はじめて見る種だ」

『ヨルムンガンド種っていうです』

「ヨルムンガンド種……初めて聞くな」

俺はちびくりすから聞いた名前を舌の上で転がしながら、ヨルムンガンド種の大型ドラゴンを見上げた。

そのドラゴンは、自分の姿を見て驚いている。

『どぉして……? 体がある……』

「む?」

眉がビクッとした。

目の前にいるドラゴンが纏っている空気が、今までのものとは違っていた。

「なあ、あんた、さっき俺と話してたドラゴンだろ?」

『うん……そぉだけど……』

ヨルムンガンド種はこっちを向いた。

瞳が揺れて、見るからに動揺している。

「にしてはさっきと比べてずいぶんとキャラが違うけど」

『あっ……』

俺に指摘されて、ヨルムンガンド種のドラゴンはハッとした。

『わ、我は……ああっ、えっとぉ……、そのぉ――』

ヨルムンガンド種のドラゴンは取り繕おうとしたが、なんだか上手く行ってないらしくて、本人はパニックになっていた。

「おちつけ、ゆっくり話していいから」

『あのぉ、あのあの――我は……我が……えっとぉなんだっけぇ?』

パニックになりすぎて、支離滅裂になっていた。

まともに話ができなさそうな感じだったから、直接聞くのを諦めて、ちびくりすのほうを向いた。

「どういうことなんだ?」

『うししししし、その子はここの守護者なのです』

「守護者」

『守護者らしく振る舞ってたのです』

「ああ……立場にあわせたキャラ作りって訳か」

『そうなのです』

『……あれぇ?』

「うん? どうした?」

『人間が、ドラゴンと話してる?』

「ああ――って、お前とも話してただろうが」

『わたしはここを守るからぁ、侵入者と話せるようにしてもらったのぉ』

「ああ……」

俺は頷いた。

そういえばそうだった。

ジャンヌ――つまり侵入者に化けた時の事を思い出す。

あんなの、言葉が通じるという前提での「ギミック」だ。

「なるほどな」

『どうしてなのぉ?』

「ドラゴンと話せるんだ。……生まれつきな」

『うそぉ、そんなのありえない……』

驚くヨルムンガンド種のドラゴン。

巨体とは裏腹に気の抜けた喋り方をするから、さっきまでの落差と相まってちょっとやりにくい。

やりにくい、が。

「さっきまでの喋り方よりも似合ってるぞ」

『ふぇ?』

「今の方が無理がなくて、聞いててホッとする。まあ本来の喋り方っぽいから無理がないのは当然なんだけど」

『……』

ヨルムンガンド種のドラゴンはびっくりしたような顔で俺を見つめた。

「そういえば、ヨルムンガンド種ってどういうドラゴンなんだ?」

『どういう?』

ヨルムンガンド種のドラゴンはきょとんと小首を傾げた。

……図体が大きすぎて、「小」首なのかはちょっと微妙な所だが。

いまいち質問の意図が伝わってないが、それは初対面だから。

初対面じゃない、かつ知識豊富なちびくりすが代わりに答えた。

『うししししし、ヨルムンガンド種は運搬が得意なのです』

「運搬……って、コレットみたいな?」

『というよりミドガルズオルム種の親戚なのです』

「ドラゴン・キャリアに一番使われてる、あの?」

『はいです。そこの娘、「こぶ」を開けるのです』

『え? はい、わかりましたぁ』

ちびくりすのいきなりの命令めいた言葉に戸惑いつつも、ヨルムンガンド種のドラゴンはそれに従った。

まずは、その場に伏せた。

すると背中にでっかい「こぶ」のような物があるのがはっきりと見えるようになった。

そのこぶが――開いた。

まるで口が開いたのと同じように、そこが「最初から開く」場所なのか、そんな感じで開いた。

開いた奥はものすごく開けた空間だ。

「なるほど!」

俺は納得した。

ミドガルズオルム種、そしてドラゴン・キャリアの事を知っている俺は納得した。

ドラゴン・キャリアというのは、小型のドラゴンを多く乗せて、戦場まで運ぶドラゴンのことだ。

一番ポピュラーなのは、エマのようなスメイ種を大量に乗せて、戦場で出撃させること。

実際に戦うスメイ種は直前まで休んだりテンションを上げたり出来る事、移動に体力を取られる必要が無いことによるメリットが大きい。

船になぞらえて、戦竜母艦――という言い方をすることもある。

ヨルムンガンド種は初めてだし、ドラゴン・キャリアも初めてだ。

でも、納得した。

「なるほど、これなら小型種を十から二十人は乗せられるな」

『うししししし、すごく便利なのです』

「そうだなあ」

『あのぉ……』

「うん? なんだ?」

おずおずと話しかけてくるヨルムンガンド種の子を改めて見上げた。

『この体……わたしに、くれませんかぁ?』

「ああ、もちろん。そのために作った――」

『条件があるのです』

「クリス?」

びっくりしてクリスを見た。

条件って、どういう事だ?

『は、はい! なんでもします』

「いや、何でもは別に――」

『心友のギルドに入って、心友のために働くです。それならその肉体をあげるです』

『わかりましたぁ!』

お、おう?

微妙に俺の意思とは関係の無いところで、ヨルムンガンド種のギルド参加が決まったようだぞ。