軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21.器の大きさ

昼を少し過ぎたころ、竜舎の中。

俺は四人のドラゴンと向き合っていた。

バラウール種のルイーズ。

ムシュフシュ種のコレット。

スメイ種のエマ。

そしてフェニックス種のクリス。

小型種が三人、中型種が一人で。

最初のころは余裕のあった竜舎もすっかり手狭に感じてしまうようになった。

こりゃそのうちまた広い所に引っ越さないといけないのかもなあ、なんて思いつつ。

「えっと、それで契約の話なんだけど」

と、話を振った。

今の所、契約はクリスとだけしている。

クリスとの契約で「お腹いっぱい」になったから、他の三人は日を改めて、って事にしてもらった。

そして今、改めて話を切り出した。

それを聞くと、クリスが真っ先に。

『くははははは。うむ、何でも聞くが良い。この我が何でも答えてやるぞ』

『こいつ、すっごい偉そう』

クリスに反応したのはコレットだった。

コレットは嫌そうな顔でクリスをにらんでいた。

俺もそうだが、コレット達三人も、最初は「神の子」ということで萎縮してたけど、クリスと接していく内に徐々に萎縮しなくなっていった。

ちなみに、ルイーズら三人は、四本足の動物にありがちな腹ばい状態での座り方をしているが、クリスだけはまるで人間の様に、横に寝っ転がりながら、片手を立ててそれを枕にしている。

挙げ句の果てにはお腹を掻いている。

萎縮するのがばかばかしい、と思われても仕方のない感じだ。

そんなクリスに、更に聞いた。

「どうやったらルイーズ達と契約できるんだ?」

『まずは「空き」次第になるな』

「空き、か。そういえば最初にそんなことを言ってたな。それは具体的にどういう事なんだ?」

『くははは、簡単なことだ。紙のメモ帳があったとしよう』

「うん?」

いきなり何を言い出すんだ? と小首を傾げる俺。

そのまま更に続けるクリス。

『メモ帳に書き込める内容はそれのページ数次第だな?』

「そりゃそうだ」

『つまりはそういうことだ』

「なるほど」

わかったような、分からないような話だった。

俺は少し考えて、更に聞いた。

「その空きって、人によって違ったりするのか?」

『当然だ。何から何まで同じな人間は存在しない。器も然りだ』

「そうか。その空きって増やすことはできるのか?」

『くははははは、案ずるな。無論後天的に増やすことはできる。人の子は我と違って、成長することができるいきものだ』

「お前は成長しないのか?」

一瞬、契約よりもむしろそっちの方が気になった。

『ぐわーはっはははは。無論だ! 我は唯一にして不死、そして完成された至高の存在。成長など我には無縁の言葉よ』

「なるほど、そういうものなのか」

『態度は少しは成長させなさいよ』

コレットがまたまたクリスにつっこんだ。

『ふむ? 態度とは?』

『その態度のことよ』

『態度を成長させた方がよいのはむしろお前の方ではないか?』

『何の事よ』

『くはははははは、隠すな隠すな。我は全てお見通しだ。お前は人間で言うところのツンデレ――』

『がぶっ!!』

コレットはいきなりクリスに噛みついた。

二人のサイズ差から、ライオンに子犬が噛みついたようなものだが。

『ぐわあああああ、痛い痛い痛い!!』

それは見た目以上に効いたようで、クリスは声を上げてしまった。

コレットを振りほどこうとするが、コレットが噛みついたまま離れない。

『なにをするのだお前は!』

『へんはほほひふははへひょ』

『ええい何をいってるのかわからんわ! というかいい加減我を噛むのやめい! 再生のためにお前ごと炎につっこむぞ』

「いやあ……」

仲、いいなあ。

コレットに噛みつかれてるけど、クリスは怒ったとか、怒りそうな気配とかまったくない。

コレットは何故か、わりと本気だが、クリスはじゃれ合ってくるものという対処をしている。

無遠慮にじゃれつくコレットに比べて、ルイーズとエマはそこまで打ち解けてない様子だ。

エマに至っては性格のせいかあわあわしている。

コレットが噛みつくのをやめたタイミングを見計らって、クリスに話しかけた。

「それで、その空きっていうのは調べる方法はあるのか?」

『いたたた……うむ。無論あるぞ。まずは心友の空きから調べようではないか』

「頼む。どうすればいい」

『まずはグラス一杯の水を用意するがよい』

「わかった」

俺は竜舎をでて、家の中にもどった。

キッチンからクリスの注文通りに、グラス一杯の水を汲んで、竜舎に戻ってきた。

「これでいいか?」

『十分だ。それを両手で包み込むように持つがいい』

「こうか」

『目を閉じてイメージせよ』

「目を閉じて……イメージ……」

俺は全くの言われた通りにした。

両手でグラスを持ちながら、目をそっと閉じた。

『心友は今、空き部屋に一人だけでいる』

「空き部屋に一人……何もない空き部屋なのか?」

『うむ、広さも自由だ』

「わかった」

頷き、更に想像をすすめる。

さっき竜舎の事を考えてたし、この竜舎よりもちょっと広めの空き部屋にしとくか。

『心友は想像の中で大きくなる』

「大きく?」

『くははは、水をすったスライムとでも思えばよい。部屋一杯に大きくなるのを想像してみろ』

「なるほど」

そういう大きくなるか。

俺は想像した。

自分が自分のまま、この竜舎よりも一回り広い部屋に、自分がぎりぎり入る程度に大きくなった光景を。

すると――。

「うわっ!」

びっくりして目を開けた。

持っていたコップから水が盛大にあふれ出した。

まるで湧き水の様に、ただのコップなのに水がどんどんあふれ出した。

「な、なんだこれは」

『くはははは、あんずるな。これが空きの判定法よ』

「そ、そうか」

クリスに言われて、俺はほっとして、徐々に落ち着いた。

落ち着いたのはいいが……水はまったく衰える気配とか無くて、延々とあふれ出している。

『ちょっと、それ大丈夫なんでしょうね』

コレットがまた、噛みつく様な感じでクリスに聞いた。

『大丈夫とはどういう意味だ?』

『出し過ぎて疲れるとかそういうことよ』

『くははははは、それこそ無用な心配だ。我が心友にそのような無茶をさせると思うか』

『ふん、どうだか』

クリスとコレットが、もはや馴染みつつある感じのやり取りをしているうちに、水は竜舎の中を水浸しにした。

足首まで水位があがるくらいになって、それでようやくとまった。

「えっと、これでどれくらいだ?」

『くふふふふふ、ぐわーはっははははは』

クリスは天井を仰いで大笑いした。

出会ってからで一番、楽しそうな笑い方だ。

「どうした」

『さすがだぞ我が心友よ。それは我が見てきた中で一番の器、一番の空きだ』

「そうなのか!?」

その結果にはさすがにびっくりした。

『うむ、これなら人の皇帝が後宮に集める女の数くらいはいけよう』

「たとえがちょっとあれだけど」

それは……実際嬉しいし、助かるな。

ドラゴンと契約できる数は、多ければ多い方がいい。

『おー、すごいご主人様』

『さすがシリルさん』

ルイーズとエマはまるで自分の事の様によろこんでくれたが、

コレットだけが、何故か複雑そうな顔をしていた。