軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

104.水とトタン

話はひとまずまとまって、俺達はカトリーヌ嬢と別行動を取った。

彼女は「すぐにでも集めますわ!」と言って、意気込んでわかれた。

そんなに親身になって動いてくれる事に感謝をしつつ、俺とジャンヌはパトリシアに乗り込んで、本拠ボワルセルに戻ってきた。

「ただいま」

俺とジャンヌが一緒にパトリシアから飛び降りると、ドラゴンたちが集まってきた。

『おとうさん!』

まずはレアがものすごく遠くから、(元)荘園特有のあぜ道を疾走してきて、その勢いのままタックル気味に飛びかかってきた。

レアはいつもこうだから、慣れている俺は腰を落として、レアをしっかり迎え入れて抱き留めた。

レアは舌を出して、ペロペロと俺の顔を舐めてきた。

子供のドラゴンの、ちょっとだけ本能が出ている愛情の発露、純粋な愛情を感じて嬉しくなるものだ。

『くははははは、戻ったか心友よ』

『……』

レアに少し遅れて、クリスとコレットも現われた。

パーソロンのあっちこっちに散らばっていたのが集まってきた。

その間にパトリシアの中からエマ達が降りてきて、入れ替わりにパーソロンに散っていった。

クリスはいつも通りだけど、コレットだけは『……』てな感じで沈黙したまま喋らなかった。

「コレット? どうかしたのか」

『な、なにが!?』

驚き、若干動揺した感じで聞き返してくるコレット。

「いや元気がなさそうだったから」

『別にっ、そんなことはないわよ!』

「そうなのか? だったらいいけど」

そう言いながら、コレットをしばし見つめた。

最近ドラゴンの顔色も分かるようになってきたけど、コレットの顔色自体は悪くない。

なら大丈夫かな、と思って深く触れないようにした。

『して、どうだった心友』

「ああ、トタンを持ってこれたよ。パトリシア」

『はい』

背後にいるパトリシアはしっとりとした声で応じて、 腹を開けた(、、、、、) 。

普通のドラゴンでは出来ない様な芸当だった。

腹をパカッと開いて、その開いたところから積み上がったトタンの姿が見えた。

「こんな感じだ」

『くははははは、さすが心友。まさしく大漁というわけだな』

「で、これをどうするんだ? 何をしたらドラゴンが卵を産めるようになる」

クリスに聞いた。

途中で鉱融合というでっかい出来事があったから俺自身忘れかけているんだが、もともとはドラゴンがたまごを産めるようにするためにトタンを集めに行ったんだ。

ギルドのドラゴンを増やす必要が出来た。

ただのドラゴンよりも、ギルドのドラゴンが産んだ卵――子供だったら親しみやすいし絆も深まる、ってことで始めたことだ。

そのためのトタンを持ち帰ってきたから、大本の話を進めようとしたわけだ。

『うむ、それを綺麗な水と融合させればいい。やり方は――』

「え?」

『どうした心友』

「水とも融合できるのか?」

『水とも?』

クリスが不思議がって、小首を傾げてきた。

「ああ……トタンがツタンとナガで融合して出来た物なのは知らないのか?」

逆に、俺も首をかしげて聞き返した。

トタンという鉱物の話を持ちだしたのがクリスだ。

そのクリスが融合の事をしらないのか? って不思議になった。

『心友の口ぶりだと、行った先には現物がなかったと言うことか』

「なかった」

『うむ、そのあたりの話は複雑すぎて我も好きではないのでな。極限まで雑に言えば……』

「言えば?」

『十三たす十七で三十、ということだ』

「???」

俺は更に首をかしげた。

クリスと知り合ってから、たまに意味不明な言動もあったが、今のが一番意味不明だ。

十三たす十七で三十なのは計算としてなにもおかしくはない。

問題は十三と十七という数字がどこから出てきたのか……。

話の流れから、ツタンとナガがそれぞれ十三か十七かで、トタンが三十……なのか?

俺が考え込むと、クリスが聞いてきた。

『心友のその顔、トタン以外でも何かあったのか?』

「ああ」

俺は頷き、クリスに廃坑で起こったことをはなした。

鉱融合で放出するエネルギーを取り込めて、そのエネルギーは一部の組み合わせだとかなり莫大な物になる。

それをクリスに話した。

すると。

「黄金とダークストーンの時はすごかったです」

と、相変わらずクリスの言葉は分かってないはずなのに、ずっと黙っていたジャンヌが見事な会話合流をしてきた。

『うむ、一部のコア融合は膨大なエネルギーを放出する。それをみつけるとはさすが心友』

「コア融合?」

『物質には肉眼ではみえないコアなる物が存在する。そのコアを真っ正面から一定以上の速度でぶつけると融合して新しいコアになる。その時に膨大なエネルギーを放出する組み合わせがある。逆にエネルギーを食う組み合わせもあるがな』

「……十三と十七、それに三十っていうのはコアの番号なのか?」

『くははははは、さすが心友。ご名答だ』

「なるほど……」

クリスから聞かされた内容は、俺のエネルギー事情を更に解決に導いてくれるようなものだった。

「……おっと」

それはそれで大事な事だったが、俺は目の前にあるトタンをみて、本来の目的を思い出した。

何度も脇道にそれかけた本来の目的、ドラゴンのたまご産卵のためのトタン。

それをみてから、クリスに聞く。

「トタンと水を融合させればいいのか?」

『うん? うむ、そうだ』

「そうか……しかし水か、どうやってぶつけよう」

水みたいな液体を高速で投げる方法……なにかあるかな。

『くははははは、難しく考える必要は無いぞ心友よ。水など凍らせてしまえばぶつけやすかろう』

「あっ……」

クリスに言われて、ハッとした。

そうか、凍らせてしまえば――って。

「凍らせるのはいいけど、どうやって凍らせるんだ?」

『うむ、では我が力を貸してやろう』

「え?」

どうやって――って聞く間もなく、クリスは空高く飛び上がった。

瞬く間に、クリスは小さな粒大にしか見えないくらい高く飛び上がった。

「何をするつもりなのでしょうか……?」

ジャンヌが聞いてきた。

「さあ。でも自信満々に任せろって言ったんだ」

「そうですね!」

大きく頷くジャンヌ。

飛び上がったクリスは、一際大きな雲の少し下にとまった。

そこで、地上からでも見えるほど、体に炎を纏わせた。

「炎を?」

俺は不思議がった。

炎なんて、氷とは対極に位置する物なのに。

なんで炎を?

そう思って待つことしばし――。

「きゃっ!」

ジャンヌが悲鳴を上げた。

空から降ってきた何かにぶつかりそうになったのだ。

「ジャンヌ!」

俺は慌ててジャンヌの前にでて、彼女をかばった。

「大丈夫か?」

「は、はい!」

「これは……雹?」

俺はジャンヌがぶつかりそうになった、空から降ってきた物を拾い上げてまじまじと見つめた。

白く冷たい塊は雹だった。

次の瞬間、空から猛烈な勢いで雹が降ってきた。

「みんな! 屋根のあるところにはいるんだ!」

俺の号令で、ジャンヌもコレットもその他のドラゴンたちも、一斉に竜舎に飛び込んだ。

雹は数分間、降り続けた。

地面にパラパラと雹の塊がおちていた。

そして、クリスが悠々と着地してくる。

『くははははは、これだけあれば足りるだろう』

「なにをしたんだクリス?」

『熱気で風を吹かして、何度も何度も雨粒を雲の中にもどしたのよ』

「雲の中に?」

『うむ、上空にある雲の中は冷たい。雨が降らず何度も上向きの風で戻されていれば、徐々に凍って大きくなって、やがて風を突き破るほどの大きい雹になるものだ』

「そうだったのか」

『さあ、これでやってみるがいい心友よ』

「わかった」

俺は大きく頷き、竜舎から表にでた。

そして手頃なサイズの雹を拾って、トタンの粒も手にした。

「……変身」

竜人に変身して、雹とトタンを全力で投げて、ぶつけ合わせる。

雹――水とトタンが真っ向からぶつかって、鉱融合した。

鉱融合したそれは、ほとんどエネルギーを漏らさなかった。

俺はそれを拾い上げる。

黒い金属のような、それでいて柔らかいものになった。

「これでいいのか?」

『うむ、さあ誰かに食させるとよい』

「じゃあ――」

俺は振り向いた。

コレットとパトリシアがまず目に入った。

どっちに飲んでもらおうか、と思ったその時。

『それをのむだけでいいの?』

と、コレットが前に進み出た。

「そうらしい……よな?」

クリスに同意を求める。

『うむ』

『わかった』

『くははははは、決心がついたか』

『べ、別にそんなんじゃないわよ!』

クリスのなぜかのからかいに、コレットは強く反発した。

「どういうことだ? なにか――」

『か、勘違いしないでよね!』

「お、おう?」

『別にあんたのたまごを産みたいとかそういうんじゃないんだからね!』

「いや別に……」

そんなことは聞いてないけど……まあ。

コレットがかなり決意してるし……これ以上止める事も無い、かな?