作品タイトル不明
121:見捨てられた聖人
「さて、そろそろ私は総本山に帰りましょう。やるべきことができましたから」
「教皇様!? お待ちを、我々はどうすれば……」
ネアンは必死に教皇に訴える。
聖人の第二位とはいえ、自分は任務を失敗した。
カオを始末するどころか、レーヴルの第二王子に捕らえられてしまったのだ。
そのせいで教皇に足を運ばせる事態となった。総本山に戻ってもただでは済まない。
だが、他人に興味のない教皇の答えは素っ気なかった。
「知りません」
「えっ……!?」
ネアンだけではなく、カオやミュスクルも動揺を露わにして彼を眺めた。
「そういえば、失態を犯した人間は制裁を受けるんでしたっけ? 私は枢機卿ほどモーター教の規律に興味はありませんから、勝手にすればいいのでは? それじゃ」
言うなり、教皇は振り返りもせずに魔法でどこかへ転移してしまった。
本気でネアンたちのことなどどうでもいいらしい。
教皇の様子を見るに、ここへ来たのも別の目的があったからなのだろう。
彼はネアンたちより、王子や魔法使いの女の話に興味を持っていた。
(くっそ……っ!)
何年も教皇に憧れ続けてきた。教皇のために聖人としての仕事に精を出してきた。
ただ認められたかった。
だが……。
教皇はネアンなど眼中にないのだ。
ネアンは途方に暮れた。
このまま帰れば処罰されるのがわかりきっているので、総本山へは戻れない。
(はぐれ魔法使いとして生きるのか……? 俺が……?)
それは、今まで魔法使いたちを排斥してきたネアンにとって屈辱的なことだった。
処分される側として逃げ惑う恐怖を、ネアンは初めて自覚する。
だがどうすればいいというのか。
ネアンは聖人としてモーター教の中で暮らす生き方しか知らない。
聖人と聖騎士たちを絶望が襲った。