軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

逃げていても始まらない -3

『馬鹿な……何故ナイフが? そういうこともあるのか? ……前例がない』

「あの、すみません。何を言っているのか全くわからないんですけど? とりあえずあんたって……モンスターなんだよな?」

『如何にも。我は、この世界の特異点の一つ……ダークドラゴン』

「特異……点? なんだそりゃ」

聞き慣れない言葉を受けて、鏡は顔をしかめる。

『特異点とは、この世界の全てを知る者。そして、この世界の機能を保ち続ける者のこと』

それを聞いた瞬間、メノウは咄嗟に鏡へと視線を向けた。それは、鏡が探し求めていた存在である可能性が高かったからだ。

「あんたが……この世界の神様なのか?」

そして鏡は、単刀直入にそう聞く。

『否。我はこの世界の特異点の一つにしか過ぎない。我と神は異なる存在だ』

その言葉で、「なんだ」と溜め息を吐き、鏡は目に見えて落胆した様子を見せる。だが、その言葉は神が存在するという事実を確定させていた。

「それで、機能って何?」

『急に緊張感を無くしたな……神に何か恨みでもあるのか? というより、我が恐ろしいとは思わないのか?』

「いや別に恨みってわけじゃないんだけど……まあそんな感じ?」

元々、鏡はダークドラゴンと戦うつもりでいた。その恐ろしい風貌から身体も竦み、瞬時に今まで戦ってきたどんな相手よりも強い……そう感じた。だが、ダークドラゴンが理性を保って語りかけてきたのを見て、「あ、こいつとは戦えんわ」と、考えを改め直していた。

「それに俺は、理解し合える相手とは戦わない主義なんだ。そりゃちょっとびびったけどさ」

『我と戦うつもりだったのか……? 言っておくが、我は魔王よりも強いぞ?』

「ありえぬっ!」

それを聞いて、すぐさま反応したのはメノウだった。メノウはいきり立ってそう叫ぶと、頭の帽子を外し、角に巻きつけた魔力を吸収する布を取ってみせる。

『魔族……だと? 魔族がどうしてここに? いや、そういうこともありえるのか? ……まこと面白き者達よ』

「何をわけのわからぬことを言っている! 貴様が魔王様よりも強いだと? ありえぬ! 風貌こそ恐ろしき姿をしてはいるが、貴様からは魔力を一切感じない……それで魔王様より強いはずがあるわけがなかろう!」

『魔王……様だと? 慕っているのか? ……ますますおかしな者達だな。言っておくが……我が魔力を感じないのは当然のことだ。お主達はずっと昔から、我が放つ魔力に包まれて生きているのだ。その力を押しのけていると自覚できる魔力を持つ者のみにしか我の魔力は感知できぬ』

「ば、馬鹿な……!?」

その言葉を受けて、鏡は理解する。どうして魔王にはその存在を感知出来たのか。どうして自分達には感知出来なかったのか。それと同時に鏡は畏怖した。世界を包み込む程の魔力を所有しているという事実に。

「それで、俺の質問が止まったままだけど? この世界の機能ってなんだよ?」

『お主達のような真に強き者を定期的に生み出すことだ』

「定期……的?」

不可解な言葉に、鏡は表情を強張らせる。

『さぞ、突然ここに飛ばされ、おおいに理解に苦しんだであろう? ……すまなかった。このダンジョンは本来、武器やアイテムを使わず、お主達、『到達者』の本来の力を知るためにあるのだが……どういうわけか。お主達はアイテムを持ったままここに来てしまったらしい。とはいえ、二人共武器は持っていない様子……前例はないが、合格としよう』

何を言っているのかわからなかった。ただ、ダークドラゴンが、どうしてかはわからないが自分達が来るのを待ち望んでいたということだけかろうじて二人は理解出来た。

『何はともあれ実力は、このダンジョンの試練を終え、ここまで辿り着いたことで証明された。よくぞ魔王を倒し、この最後の地への道を切り開いた……お主達こそ、真に強き者である。誇るがよい』

次に吐かれたその言葉を聞いて、二人は耳を疑った。そして瞬時に鏡は、もしも、それが事実であるならば、このダンジョンがどうしてこのような不可解な場所にあるのかに気付き始める。

「なあ……ここってさ、1万ゴールドを集めて、とあるアイテムを買ってもこれたのか?」

そして、その考えが正しいかどうかを確かめるために、鏡はダークドラゴンにそう問う。

『ほう……それに気付いていたか。如何にも。あれも強さを証明するもう一つの手段。力ではなく知恵、そしてカリスマ性がなければ辿り着くことの出来ないもう一つの力の証明。なんだ? まさか……お主達はそれで辿り着いたのか?』

「いや、そうじゃないけど」

その言葉を受けて、鏡の中で不可解なまま散らばっていたピースが少しずつ繋がり始める。

重要な点は二つ。

【真に強き者を定期的に生み出す存在】

【魔王を倒すか、1万ゴールドを集めることで訪れられるダンジョン】

そして、魔王を倒させようと行動を促し、戦争まで起こそうとしていた者を鏡は知っていた。

エステラー・ウルゴット。

今も尚、魔王を捕えてどこかに姿を隠しているその存在と、間違いなく、何か関係がある。鏡は直感的にそう感じた