軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

気付くのが遅すぎた-5

「あの二人、やっぱり歩いて行くんですね。ケンタ・ウロスか馬に乗って行けば良かったのに」

「目的がお金稼ぎだからかしら? モンスターを倒しながら行くみたいだから、馬とかケンタ・ウロスに乗りながらだと非効率って考えたんでしょうね。一々止まらないといけないでしょうし」

大きすぎる荷物を背負いながら、森の中へと歩いて行く二人の背中を見送るティナとタカコはそうつぶやく。

二人が乗り物を使わなかったのは、道中にいるモンスターを片っ端から倒すという理由ともう一つ。単純に、二人のレベルであれば乗り物を使うよりも早く移動出来るからだった。

モンスターの多い危険地帯を通りながら行く話は事前にしていたため、そうなると乗り物が突然襲われたりして逆に手間が掛かる可能性もある。

「随分と……不満そうですな」

アリスが同行した場合も、それは同じだった。単純に守るべき存在が増えるだけ、逆に足手まといになってしまう。だから納得した。役に立つどころか、足を引っ張るのは避けたかったから。

でも、それならせめて別の何かで役に立ちたかった。鏡がいない間に自分に出来ることを成し遂げて役にたとうと思った。でも、「健康でいてくれ」と、まるで自分に出来ることはないからおとなしくしてろなんて言葉を吐かれたら、どうしようもない。

無論、鏡がそんなつもりで言っていないのはわかってはいるが、それでも、他の皆のように戦力として数えられていない自分が不甲斐なく思った。

「ボク……皆のように鏡さんの役にたてないのかな?」

「そんなことはありませんぞ? 先程、鏡様もおっしゃられていましたがアリス様の存在そのものが、皆様のお力になっているのです。アリス様は太陽のように輝いておりますからな」

デビッドはそう言うと、「ホッホッホ」と、あやすように笑い声をあげる。だが、アリスの表情はそれでも不満そうで、デビッドは「ふむ」とつぶやくと、真剣な表情でアリスに向き合う。

「私はもちろん、他の皆様も鏡様がやろうとしていたことをサポートしているにすぎません。そして、サポートをすることだけが役にたつ方法ではありません」

「……どういうこと?」

「時には、鏡様にも気付けなかった方法を提案したり、鏡様も知らないところで成果をあげたり……そうやって、鏡様だけでは辿ることの出来ない道へと導くのも、一つの方法でございますよ」

まるで、その手段は自分が知る限りでたくさんあると言わんばかりにデビッドが微笑を浮かべると、不満そうな表情だったアリスは思案顔へと変化する。

「例えばそうですな……アリス様のような方に商品を買って欲しいと言われたら、ついつい私なら買ってしまいそうですなぁ」

「ボクが売り子をするの?」

「ええ。折角生まれながらにして素晴らしい武器を持っているのです、その武器を最大限に生かす方法を考えれば良いのですよ」

「武器って言われても……ボクわからないよ」

「はっはっは! タカコ殿が聞いたらプッツンしてしまいそうな言葉ですなぁ! わからないのであれば、実際にやってみるといいのです。成果をあげれば、おのずと見えてくるでしょう。僭越ながら、そのサポートをさせていただけませんか?」

名前を呼ばれたような気がしてタカコが一瞬こちらを見るが、デビッドは一切視線を合わさずにそう言ってアリスへと頭を下げる。

対するアリスも、言われていまいちピンとは来なかったが、何か役にたてることがあるのであればと、すがるように「お願いするよ、デビッドさん」と、素直に頭を下げ返した。それを見て、デビッドはにっこりと優しい笑みを浮かべる。

「それに例え、その武器を持っていなかったとしても、役にたてる方法はあります。今回のメノウ様のように、いつか横に並べるように努力することも、一つの方法です。今のレックス様やクルル様のようにです。決して……今出来ることが大切という訳ではないのですよ?」

「……役にたてられる自分になる?」

自分で確認するようにそうつぶやいて、アリスはハッとした表情を見せる。

今までずっと鏡に守られっぱなしだった。今まで何かあれば「危険だから」と、戦いの場から遠ざけられていた。それは、自分に力がなかったからだ。

自分に力がないからこそ、自分の力の範囲で出来ることだけをいつも探して行動していた。

力がなくて役にたたないのなら、力をつければいいのだ。今出来る範囲のことをやりながら、その出来ることを少しずつ増やしていけばいい。

鏡という大きな頼りがいのある存在と傍にいることで、見失っていた根本的な大切な何かを思い出した。

それと同時に、これはいい機会なのかもしれないと思い直した。鏡に頼りっぱなしだった自分が、鏡がいなくても立派にやれて、成長もすると、鏡に見直してもらうチャンスだと。

「ありがとう。デビッドさん」

それに気付いて、不満そうな表情を浮かべていたアリスの表情に、いつもの太陽のような明るい笑顔が戻り、それを見て、デビッドは満足そうに笑顔を浮かべる。

そして、アリスはこうしてはいられないと言わんばかりの勢いで突然駆け出すと、いまだに寂し気な表情で門を見つめるクルルの元へと一直線に向かう。

「クルルさん、クルルさん!」

「え? は、はい? どうしました?」

慌ただしい様子で突然服の裾を引っ張ってきたアリスを見て、クルルは困惑した表情を見せる。アリスも、いざクルルを目の前にして少し言い難そうに口を籠らせるが、暫くして意を決したような表情を見せると――、

「ボクに……魔法を教えて欲しいんだ!」

真剣な表情で、真っ直ぐにクルルと視線を合わせながらそう言った。

「…………っ! ………ゆめ?」

王都の一角にある宿屋の一室。ベッドの傍らに置いてある椅子にたて掛けられた杖と帽子、テーブルに置かれた水の入った瓶以外に何も置かれていない殺風景な部屋に、突如勢いよくシーツが宙を舞う。

「はぁ……はぁ……」と、呼吸を乱しながら汗ですっかり濡れてしまったベッドの上に手を置くと、パルナは大きく溜め息を吐きながら身体を起こし、テーブルの上に置いてあった瓶を勢いよく口元へと運ぶ。

「…………嫌なもの、見せてくれるじゃない」