軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

答えなんて自分次第だから-2

その瞬間、鏡はまず空を飛んでいる厄介な敵から片付けようと地面を蹴って跳び上がる。襲い掛かるモンスターが地に立っている相手だけになれば、必然的に攻撃の手数も減って、全員が生き残れる可能性が高くなると考えたからだ。

「出し惜しみ無しでやらせてもらうぜ!」

跳び上がった勢いでそのまま上空を飛んでいたモンスターにけたぐりを入れると、そのままモンスターの背面へと着地し、次の上空に滞在するモンスター目掛けて鏡は跳び上がる。その時にモンスターを蹴ることで発生する衝撃で、まるでマスケット銃の弾丸を放ったかのような勢いで吹き飛び、地に立っていたモンスターに勢いよくぶつかると、そのモンスターもろとも姿をお金へと変化させた。そして、鏡はその繰り返しを次々に繰り返す。

「っと……!?」

だが、さすがにずっとは続けられず、途中で鏡の移動先の軌道を読んだ他の地に立っていたモンスターが大岩を投げつけて鏡にぶつけた。さすがに跳ね返すことも受けきることも出来なかった鏡はその大岩もろとも吹き飛ばされ、荒野にそびえ立つ岩壁に身を打ちつけられる。

「鏡さん! 大丈夫ですか」

その様子を見て、地表で戦っていたクルル達はモンスターを払いのけつつ、鏡が衝突した岩壁へと移動する。大岩は岩壁へと埋め込むように衝突していた。想像する限り絶望的な光景に、クルルは思わず岩壁に向かってそう叫ぶ。

すると、心配は杞憂に終わり、岩壁に埋まっていた大岩が突如粉砕され、中からボロボロになった鏡が姿を現す。

「いや、全然大丈夫じゃない。もうすぐ死にそう」

そして顔から噴水のように血を垂れ流しながら、鏡は岩壁の中からよっこらせと出現する。見た目は相当にやばそうだったが、心には余裕をもっている様子だった。

「もうすぐ死にそうじゃないですよ! 何余裕ぶっているんですか! あなたが死んだら私達まで死んじゃうんですからもっと注意して戦ってください!」

そんな状態にも関わらず、謎のグッドサインを送ってくる鏡を見て、ティナが半ギレ状態になりながらすぐさま駆け寄り、回復魔法で傷を癒し始める。

「命を大事にはどうしたんですか!? 作戦はどうしたんですか!? むしろ今ので生きていることに驚きですよ!」

「命を大事にした結果がこれだよ。人生何があるかわからんね、こりゃ参った」

「そんな大怪我で余裕ぶらないでください!」

「それだけあんたを信用しているってこった」

本当にそう思っているからか、大怪我にも関わらず余裕のある笑みを浮かべる鏡を見て、ティナはよくわからないけど悔しくも照れ臭い感覚に陥り、押し黙って鏡の傷を癒し続けた。

「……ティナです。僧侶は前衛にいなくなられるとどうしようも無くなっちゃうんです。あまり不安にさせないでください」

目線を合わさずに回復魔法を続けながらティナは照れ臭そうにそう言った。その台詞に鏡は目を丸くさせて、少しだけ「俺も人のこと言えないな」と、以前にクルルに言った言葉を思い出して笑みを浮かべて反省する。

「パーティーでの戦闘はタカコちゃん以外とほとんどしてこなくてさ、悪い、気をつけるよ」

「むぅ……頼みますよぉ」

ティナの回復魔法で傷を癒した鏡は、再び「いよっしゃぁぁ!」と気合を入れ直すと、前衛に立って鏡の怪我が治るまでモンスターの攻撃から耐え続けてくれたレックスの元へと駆け寄り、レックスを叩き潰そうとしていたサイクロプスの胴体を殴り飛ばした。

「よし、パーティプレイだ! 連携を取って戦おう!」

その時、その場にいた誰もが連携とって戦ってなかったのはお前だけだよと思案する。だが悠長なことも言っておられず、一同はすぐさま四方から迫りくるモンスター達に向き合った。

「お姫様とそこのグラマーな魔法使い! どっちか広域殲滅魔法は使えないのか!?」

「パルナよ! その呼び方はやめてくれない? 私もクーちゃんもどっちも使えるわ!」

「よしパルナ! それとお姫様! 呪文の詠唱頼む!」

「何をするつもりなのよ!?」

「まず場所とか関係なく攻撃を仕掛けてくる上空にいるモンスターを片付ける!」

そう聞いて、パルナはどうして鏡が先程上空へと跳んでモンスターを攻撃していたかの理由に気付いた。普通上空に滞在しているモンスターは遠距離攻撃を得意とする魔法使いか弓を装備した者が相手するのが普通なのに、素手で挑むところを見て、本当に今までほとんど一人で戦ってきたんだなと実感する。

「詠唱終わったわよ! いつでも発動出来る!」

「こっちもです! どうするんですか? ここから上空に向けて放ってもせいぜい二、三体にしか当たりませんよ? 全部そのまま上へと流れちゃいます」

詠唱を終えて鏡に対してパルナとクルルがそう叫ぶと、鏡はすぐさま二人の元へと移動し、二人の胴体をそれぞれ向きが逆になるようにガッチリと掴んだ。

「ちょ、ちょっとあんたこんな時に何……ど、どこ触ってんのよ!」

「これはセクハラです!」

耳元でそう叫び散らす二人を無視して、鏡は「気合入れろよ」と呟くと、先程と同じように地面を蹴って真上へと跳びたった。あまりにも突然の行動に、クルルとパルナは声も出せずに目を瞑って跳んだ瞬間に発生した衝撃に耐える。

「よっしゃ、ここから魔法を放て! 下から放つより、同じ高さから放った方が多くのモンスターに当たるだろ!」

そして、鏡のその掛け声を聞いて、この行動の意図を理解した二人はそれぞれの方向に向けて広域殲滅魔法を発動する。パルナの手元からは水平方向に燃え盛る炎の波が、クルルの手元からは迸る電撃の波が一気に放たれる。

二人のレベルが低く、全てを殲滅とまではいかなかったが、確実に上空を飛んでいたモンスターに大きなダメージを与え、魔法の発動原の近くを飛んでいたモンスターはその姿をお金へと変化させた。そして魔法を放ち終えた後、鏡に抱えられながら二人は地表へと着地し、その衝撃でパルナが「ぐふっ!」と苦しむような声をあげる。

「あんた……成果はあったからいいけど、次やる時はちゃんと言って……からにして」

パルナはそう言うと、小さなダメージとはいえ耐久力の低い魔法使いでは堪えたのかティナの元へと向かい、回復魔法を要請した。同じくクルルも小さなダメージを受けていたが自分の回復魔法で治療し、すぐさま表情を強張らせて鏡に詰め寄る。

「鏡さん! あなたは王女をなんだと思っているんですか!」

「うぇ……仲間ってこんな感じに連携を取るもんだと思ってた。良い攻撃だと思ったんだけど」

むしろ、生き残るためならクルルが怒っているのが不思議に思えた鏡はそう言うと、クルルは「……仲間」と嬉しそうに呟き、すぐさま真剣な表情に戻ってモンスター達に向き合い、「仕方ないので許します」と、武器を構えた。